反撃の狼煙
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「覇王丸!?」
茂みの奥から現れた俺を見て、おっさんは目を丸くした。
「お前、無事だったのか。今までどこにいたんだ?」
「寝てた」
「はぁ!?」
「仕方ないだろ。目が覚めたら、家の中に誰もいなかったんだから」
一瞬、おっさんがゴミクズを見るような視線を向けてきたので、俺はすぐさま反論した。
「これでも、すぐに異常に気がついて、あちこち探し回ったんだ。ライカが起こしてくれればよかったのに、起こさなかったのが悪い」
「お嬢が……」
ライカの名前を口にした途端、おっさんは目に見えてがっくりとうな垂れた。
「すまねぇ……。俺がお嬢の一番近くにいたのに……」
「おっさんは悪くないだろ」
あれは、短気を起こしたライカが全面的に悪い。
しかも、昨夜、頭に血が上りやすいことを、指摘したばかりだというのに……。
(後で頭を引っ叩こう。もしくは、反省するまで尻尾を触ってやろう)
『セクハラの正当化』
(うるさい黙れ)
俺は眼下に目をやり、倒れているハウンドをつま先で小突いた。
完全に気を失っているらしく、ぴくりとも動かない。
(そういえば、こいつ、男だよな?)
念のために股間を足で踏みつけると、そこにはちゃんと「男の急所」の感触があった。
獣人の体の構造については、以前、山田が「骨格は人間と同じ」だと言っていたが、そのとおりのようだ。
ボルゾイも、サルーキを相手に腕の関節を極めようとしていたので、そういう戦い方は種族を問わずに有効なのだろう。
「それはそうと――――おっさん、こいつを運びたいんだけど、紐を持ってないか?」
「ん? ああ、縛るのか。ちょっと待ってろ」
おっさんは慌てて近くの住人から紐を借りてくると、ハウンドの両手と両足を厳重に拘束した。
ボルゾイをはじめとする負傷者たちは、既に集落まで運ばれていったようだ。
まだこの場に残っている者は、数えるほどしかいなかった。
「うわぁ……。こりゃ酷いな。顔面が腫れて、変形してるじゃねぇか」
「黒くて目立たないから平気だろう」
「どういう理屈だよ……」
おっさんはため息をつくと、ハウンドを背中に担いで、よっこらせと立ち上がった。
「おっさん、結構、力持ちだよな」
「お前ほどじゃないけどな。それで、どうする? どこに運ぶんだ?」
「俺が最初にぶち込まれた地下牢に運んでくれ。そこで、拷問する」
オブラートに包むことを完全に拒否した俺の発言を受けて、おっさんは聞かなきゃよかったと言わんばかりに顔をしかめた。
「拷問して、知っている情報を全部吐かせる。裏切り者は徹底的に利用しないとな」
「……お前、何を企んでいるんだ?」
「何を? そんなの、決まってるだろ?」
世話になった集落が、魔王軍に蹂躙された。
ボルゾイは大怪我をして、ライカは連れ去られ、住人は希望を打ち砕かれた。
この状況下で――――俺がすることは、一つしかない。
「やられたら、やり返すんだよ。泣き寝入りなんか、誰がしてやるものか」
必ず報復する。
俺たちに手を出したことを、死ぬほど後悔させてやる――――
一切の躊躇なく断言すると、おっさんは何とも言えない表情で、俺を見た。
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