ジョアンとロザリア その二
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「さて。私たちは名乗ったのだから、次は君たちが自己紹介をする番じゃないかな?」
ジョアンがポンと手を叩いて、俺たちに名乗るように促してくる。
非公式な場ではあっても、王族に先に名乗らせてそのままはマズいのだろう。
「俺は鬼怒川覇王丸だ」
「わ、私はライカと申します」
俺に続いて、ライカが円卓に額が付くくらい深く頭を下げた。
「覇王丸……大森林の勇者に、ライカちゃんは獣人だね?」
「は、はい」
「もし、私たちに気を遣って獣の耳を隠しているのなら、その必要はない。むしろ興味があるから、見せてくれないかな?」
そう言って、ジョアンはライカの頭にある使用人のヘアバンドを指さした。
午前中の鍛錬の時は獣の耳を出していたライカだが、今はまた隠している。
理由は単純。王城の中に、獣人に対して否定的な感情を持っている者がどれくらいいるのか見当がつかないからだ。
「あんたたちは獣人のことを嫌っていないのか?」
「私は嫌っていないよ。獣人が差別されている理由や経緯については詳しく知っているけど、その上でくだらないことだと思っている」
「私も特には……。そもそも獣人の方とは、お会いする機会がないので」
二人とも、殆ど即答に近いタイミングで返答した。嘘をついている感じではない。
「いいんじゃないか?」
「はい」
俺がヘアバンドを取るように促すと、ライカはおずおずと獣の耳を晒した。
途端に、二人は表情を綻ばせた。
「いいね! かわいらしいじゃないか!」
「はい。とても愛らしいです」
触らせてくれないか、と。ジョアンが席を立ちかけたので、俺はそれを手で制した。
「待った。耳を触る前に、話を聞かせてくれ」
「なんだい。少しくらい構わないじゃないか。まあ、いいけどさ」
ジョアンは少しだけ不服そうに口を尖らせて、居住まいを正した。
「君たちが知りたいのは、魔法のことだろう?」
「そうだ。でも、その前にさっき言っていた獣人が差別されている理由や経緯について詳しく知りたい」
俺が話を切り出すと、ジョアンは不思議そうに首を傾げた。
「なぜ、詳しく知りたいんだい?」
「今度、神聖教会の自治領に行くんだよ」
そこで、獣人差別の原因となっている神聖教会の公式見解を撤回してもらう――――そのために直談判に行くのだと伝えると、二人は目を丸くして驚いた。
*
「なるほどね。ようやく、分かったよ。昨日から陛下をはじめ上の方の人たちが、どことなく忙しそうにしていた理由が」
俺から事の経緯を聞かされたジョアンは、納得したように何度も頷いた。
「覇王丸、君は本当に面白いね。公式見解を撤回させるなんて、喧嘩を売りに行くようなものだよ? 毒と薬は表裏一体だけど、陛下は君のことを劇薬だと判断したのかな?」
「俺に訊かれても困る」
「いずれにしても、君は陛下からかなり高く評価されたみたいだね」
見るからに何かをやらかしそうでワクワクするもの、と。
ジョアンは喉の奥でクックッと笑いながら、ゲンジロウ爺さんと同じことを言った。
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