03 読めない意図
コンコンコンッ
次の日、私はノックの音で目を覚ました。誰だろうかと思っていると
「おーい、起きてるか?一応様子を見に来たぞ」
と言う声が聞こえる。
ぼんやりとした頭のまま、私は扉へ向かい
「どうしてまた私の部屋に来たの?もう用は無いんじゃないの」
と、扉の向こうに居るリュウレンに言う。
「昨日の感じからして、まだ調子よくなってないだろうと思って来たんだが」
確かに、私が起きたときにもうあいつは部屋に居なかったので、最後に彼が記憶しているのは私がぐったりとしている姿だろう。
しかし、他の人ならいざ知らず、私に対してわざわざ次の日も部屋にまで様子を見に来るとは、彼の今までの行動からすると、あいつの方こそ熱があるんじゃないかと、逆に心配になってしまう。
ともあれ、昨日あいつが私を助けたのは事実だし、鋭くなった感覚について聞きたいこともあったので、扉を開けることにした。
部屋に入ると、リュウレンは私に許可を得るでもなく勝手に冷蔵庫へ向かう。
「その様子だとさっきまで寝ていたか?だいたい想像通りだけどな」
「この状態が想像通りってことは、昨日私が倒れた理由もわかってるってこと?」
私は、もうこいつにわざわざ噛みつく気力が無かったので、テーブルで彼が、少し遅い朝食を準備するのを座って見ていた。
「魔力の扱い方に失敗して、回路の流れが狂って似たような状態になるのは時々居るが、昨日のお前は初めて力を感じた子どもが、回路に魔力を送るのを失敗したような感じだったぞ。まさか、入学式から2.3ヶ月も経って、全く成長してないとはな」
いつもと変わらないこいつの態度に、私は部屋にあげたことを後悔し始めていた。もう昨日の事にお礼を言う気も無くなりそうだ。それでも、確認しておきたいことはあるので、リュウレンに疑問をぶつける。
「冷蔵庫の中に、今日の分までご飯が作り置きされていたのは私の体調が1日で戻らないのがわかっていたってこと?それともあんたが私にしたことの影響で寝込むのがわかっていたの?そもそもあれは私にいったい何をしたの」
「そんなに1度に聞かなくてもちゃんと答えるから、とりあえず飯食えよ。興奮してまた倒れてもこれ以上は面倒みないぞ」
「…いただきます」
まるで子どもを宥めるかのような態度にムカつくが、今倒れたら自分で対処できると思わないので、大人しくご飯を食べ始める。
「さっきの質問だが、昨日は、お前の魔力回路がほとんど使ったこと無いみたいに詰まっていたから、俺の魔力を流し込んで無理やり流れを正常化させた」
「無理やりって。それは大丈夫なの?」
「一応応急処置として使われる方法ではある。自分で魔力を動かせない子どもとかにやるような、本当に対処療法みたいなもんだけどな。寝込むのはわかっていたというよりも、お前の普段の様子からして、俺の魔力が抜けるまで1日2日は寝込むだろうなって思っただけだ」
「私の魔力の扱いが未熟だって言われてるみたいでムカつくけど、ちゃんとした方法なのね」
彼の説明で、私の今の状態が、未知のものではないことに少し安心はしたものの、まだ幾つか疑問が残ってるので彼に尋ねてみる。
「あんたのしたことはわかったけど、そもそもなんで私を助けようと思ったの?」
「昨日あのまま放置してもよかったんだけどな。対応できる人を呼びに行ってる間に、面倒な事が起きるよりは恩を売っといた方が良いと思っただけだ」
そうなのだ、実際昨日、私はリュウレンだけでなく、通り掛かった人に何をされても抵抗する力は無かっただろう。
改めて昨日の自分の状態が危なかったということに気付き、感情はともかく、昨日の事はちゃんとお礼を言うべきか、なんて考えていると
「さて、その様子なら昼は大丈夫そうだから俺は自分の部屋に戻るぞ。あんまり長居して変な噂がたつのも嫌だからな」
「あっ」
「どうした?」
と言って、リュウレンが帰ろうとする。
ここで私が呼び止めて、不安になっていると思われるのも嫌だったので、もう少し聞きたいことがあったけれど、そのまま彼が部屋から立ち去るのを見送ることにした。
「結局、分からないこともいっぱいあるけど、あいつは私を助けてくれたってことでいいのよね…?」
これまでの関係から、リュウレンの行動に納得いかない部分はあるけれど、彼が帰ってしまいこれ以上は、自分で考えても疑問を解消する事は出来ないだろうと思い、とりあえず私は、1人で残りのご飯を食べることにした。




