第70話 家戸あと葉2
記憶を取り戻したことがバレているのか?
「ふ、復讐ってなんだよ?」
とりあえずごまかすしかない。
必死に記憶が戻ってないふりをする。
「竜司様への……復讐です……」
具体的につっこんできやがった。
これは相当疑われているのかもしれない。
「竜司? 竜司って誰だ?」
竜司のことを忘れさせられていたのだから、ここは竜司のことなんて知らないふりだ。
そこで家戸あと葉はため息をつくと、また窓の外を見て、ぼそりと言った。
「記憶……戻ってたんですね、やっぱり……」
え、なんでだ? どういうわけか完全にバレてやがる。こうなったら押し通すしかない。
「記憶? 戻ってる? なんの話だ?」
「そういうの……もう……いいです。
私は、あなたに竜司様のお名前を聞けば……記憶が戻るようにしておいたのです。
竜司様のお名前を聞いたときに……知らないと言い張るのは、記憶が戻っているのに……しらを切っている証拠なんです……」
そこまで言われたら、これ以上しらを切っても何にもならない。
そこで横で寝たふりをしていたアリアが立ち上がる。
「なんで俺に記憶が戻っていることが分かったんだ?」
「昨日までと態度が……違いましたから……」
「そうか。じゃあ、なんでこんなことをしたのか教えてくれ」
「そうだ、話してもらおう。家戸あと葉、お前の能力は記憶の改竄なのだろ?」
俺とアリアの問いに彼女は伏せ目がちで口を開く。
「はい、さき葉姉さんが未来を予知して未来の危機を回避できるように、私は人の過去、記憶に干渉できます。
どうしてこんなことをしたのかといえば、さき葉姉さんが……竜一さんを……とても警戒しているから……」
「あんたのお姉さんが? なんで俺を警戒しているんだ?」
「さき葉姉さんは……竜司様が竜一さんに負ける未来を……予知したのです。それも比較的近い将来だそうです」
「なんだって?!」
俺はさすがに驚く。
俺が竜司に勝てる?!
しかもそれが遠からず起こるというのか。
「だから……なんとしてもあなたが復讐を果たそうとするのを……止めるよう姉さんから言われました」
なるほど。
だが、1つの疑問が頭をもたげる。
「どうして俺にその予知を話した?」
「私自身は本音として……あなたに竜司様を倒してほしいから……」




