第28話 力と自由
今回はアリアの一人称です。
私はアリア・ウヌ・カルハイ。
年は17歳だ。
私の世界とこちらの世界では人の年の取り方は同じペースらしい。
1日の長さも1年の日数もほぼ同じようだ。
私が生まれる130年ほど前から、魔王が現れ、人々は魔竜に姿を変えられていた。
誰もその状況を打開できず、世界は危機に瀕していた。
私は小さな村で生まれ育った。
父親は私が生まれる前に病で亡くなったという。
私が物心ついた頃には私の運命は決まっていた。
「あなたは選ばれたのよ」
母がこういったのを今でも私は覚えている。
「母上様、私はなにに選ばれたのですか?」
「あなたは、巫女様の信託によって将来魔王を倒し、この世界に平和をもたらすと預言されたのよ」
「どうして私なのですか?」
「あなたの光る髪よ。それが魔王を倒す人の証なんですって」
私の髪はその頃から気持ちが高ぶると光ることがあったのだ。
ほどなくして私は蛇星鏡を使えるようになった。
この力があったがためにみんなからは誉められたが、私は他の子供のように遊ぶことはできなかった。
恋をすることもなかった。
魔王を倒す戦士としての道を歩かねばならなかった。
そのような人生を呪ったものだ。
力などいらない。
平凡な人生が送りたい。
なんどもそう願った。
叶わぬ願いだった。
過酷な戦士としての修行を乗り越えて、水鏡の剣が与えられた。
巫女様が水鏡の剣をお渡しになるときに、私に言った。
「お前が生きて帰ることはおそらくないだろう」
ここまでくる間の全ての時間もこれからも全て魔王を倒すため、世界を救うために捧げるのが私の生きる道なのだとここでようやく腹が決まった。
私は魔王がいるという根城に潜入した。
何匹もの魔竜と戦い、一番奥の魔王の間の扉の前に到着した。
その扉が開かなかったが、扉の向こうに魔王の気配を感じ取ったのか水鏡の剣は抜けた。
そして、一歩踏み込むと私は竜一の部屋にいた。
「私の話はこんなところだ。
つまらない人生だろう」
竜一は何も語らない。
「どうした?
なんで無言なのだ?
そこまでつまらなかったのか?」
すると竜一は私を睨み付けると怒鳴りだした。
「なんだよ今の話!
ふざけんな! ふざんけな! ふざんじゃねえぞ、おい!」
途中からテーブルを拳で叩いたので、私が飲んでいた空のコップがこぼれた。
「なにを怒っているんだ?!
お前がそこまで怒るような話はなかったはず」
「力のあるくせに! なにが人生を呪っただ、なにが使命だ! そんなもんで縛られるなんて俺が許さない!」
竜一の赤い瞳が炎のようだった。
「お前が怒ることではないだろ?!」
「いや、俺が怒ることだ!
力がないばかりにずっとくそのような扱いを受けてきた。
それに甘んじるしかなった。
俺には力がなかったから諦めるしかなかった。
だが、力のあるものは諦めなくてもいいじゃないか!
どうして逃げなかったんだ?」
竜一があまりの剣幕でまくりたてるので驚いていたが、私も黙って聞き逃すことはできなかった。
「それが私の人生だった!
逃げることなんてできなかった!
みんなが苦しんでいるのに、自分に力があってそれを役立てないという道なんか私には選べなかった!」
「それが力のあるものの傲慢なんだよ!
それで満足してるならまだしも、お前からは後悔しか感じられない!
俺は力こそが俺を自由にすると信じてきた。
そして、それが真理だと信じて疑わない!」
竜一の言い分に負けじと私も反論する。
「力こそが正義だとでも言うつもりか!
力があればそこに義務が生じる。
力は私をずっと縛ってきたんだ!
お前になにが分かるんだ!」
すると、竜一は舌打ちをする。
「力があった人間の気持ちなんて分からないね!
俺は決めた!
俺はお前を魔王討伐なんて義務から解放してやる!
俺の力でお前に自由をやる!
そして、認めさせてやる。
力があれば、諦めなくてもいいということを
魔王がどこかにいるのなら、俺が叩き潰す!」
そこには、いつもの復讐心丸出しの竜一がいた。
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