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第25話 銀の蛇

 先ほどまで殴られて傷ついていたことが嘘のように痛みがなくなり、体が軽い。


「あんた、まだ立ち上がれんの?」


 さっき俺に一撃かましてくれた天野がほざく。


 気がつくと隣にアリアが立っていた。

 アリアも体の傷が癒えているようだ。

 俺の右手とアリアの左手の間にあの銀の蛇が巻き付いていた。

 彼女も銀の蛇を不思議そうに見ている。


 これはひょっとして。

 俺の判断は極めて直感的だった。


「アリア、俺の言うことを信じてほしい」

「どういうことだ?」

「あの女のところまで跳んでほしい」


 あの女というのは天野のことだ。

 天野は俺の前方約5メートル離れたところに立っていた。

 そこは明らかに2メートルをこえた距離。


「しかし……」

「俺を信じてくれ」

「……心得た」


 アリアがためらいを押し切って跳躍する。

 彼女は俺から2メートル以上離れたところまで移動した。

 だが、それでも彼女が俺の結界に触れたときのようにならない。

 銀の蛇は伸びて、彼女は天野の前に着地する。


 やはり、そうか。

 この水鏡の剣の刀身だった銀の蛇は俺の結界半径を無視して動いていた。

 この蛇が俺とアリアを繋いでいることで、彼女は自由に動けるようになっているらしい。 

 俺は直感的にそのことに気づいた。 


「アリア、任せた!」

「心得た!」


 さっきよりも力強い返答。


 アリアは天野がまわし蹴りを繰り出すのを軽く手で払いのけると、一歩ふみこんで天野のみぞおちに拳をねじこむ。

 天野は声もあげられずその場に崩れ落ちる。


 B組の連中が結界を展開、発動させようとしても、アリアの動きに全く追い付けない。


 目にも止まらないほどの跳躍と突進で、B組連中のほとんどを伸してしまった。

 圧倒的な身体能力。

 蛇星鏡を使うまでもないという動きだ。


 そんなアリアの華麗な舞を見ているうちに、俺の意識が遠のいていった。


 

 こうして、俺たちはB組に勝利した。

 意識を取り戻すと銀の蛇はいつものように剣の刀身に戻っていて、アリアは相変わらず2メートルしか動けなくなっていた。

 かなりのピンチに陥ったが、結果的には予定通りだ。


 事実上、俺とアリアと鬼灯の3人はB組のトップ3になった。

 特にアリアの恐れられようは尋常ではなかった。

 これで目的の半分は達せられた。


 そして、もう半分だが。

 数日後の放課後、俺は鬼灯から屋上に呼ばれた。

 

 「鳥羽くん、少しお話があるのですが」 

 「ああ」


 向こうをむいた鬼灯に答える俺。


 「褒めて差し上げますわ! 

 あなたは見事あの状況からわたくしを助けだしてくれました。

  それは認めざるを得ませんわ」

 「ああ、そりゃどうも」


 鬼灯はやや、やけくそ気味に言う。

 プライドの高い彼女にここまで言わせるだけの効果が、あの勝利にはあったようだ。

 

 「中学生のとき、あなた、(わたくし)に愛の告白をしてきましたわよね」


 忌まわしい過去だ。

 なかったことにしたい。


 「あ、ああ」

 

 「い、今ならそのお話、か、考えてあげてもよろしくってよ」


 そう言いながら、頬を赤らめて振り返る鬼灯の視界には。

 俺の姿と……アリアの姿があった。


 「な、なんとかなりませんの、この状態?!」


 なんとかしたいのはこっちだ。

 

 だが、これで鬼灯は俺の手に落ちた。

 これから、せいぜい働いてもらう。

 

 その後、少し話したあとのことだ。

 

 「鬼灯、訊きたいことがある」

 「なんですの? 教えて差し上げてもよろしくってよ」

 

 心なしか嬉しそうだ。

 滑稽で笑えてくる。

 

 「弟のことだ」

 「会長のこと、ですの」


 弟のことを訊ねたからか、心なしかテンションが下がる鬼灯。

 

 「ああ、弟の結界についてなにか知らないか? あいつの能力について」

 

 すると、鬼灯が顔をしかめだす。


 「どうした? 鬼灯、顔色が悪いぞ」

 「大丈夫、大丈夫です……わ……」


 バタッと唐突に鬼灯は倒れた。


 

 

 

 


 

どうぞそのままお読みください

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