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14話

挿絵は今回描きかけです。

ミチヨ君の同人誌の師匠、中山田加代子作です。

どういう風に仕上がるでしょうか。



挿絵(By みてみん)


「我々はっ、勝たねばならない!」

 

 引き続き3年でも部長となる、アケミ・ダイヤモンドさんの所信表明から今期の活動が始まった。


 2年に無事進級し、なつきとも同じクラス。

 早速放課後、部活に勤しむ事にする。

 するとショッパナからのダイヤ節だ。


「いいかな、大切な事は2度言います。

 我々はっ、勝たねばなりません! 何としても!」


 何と戦ってるのか、または戦いたいのだろうか、この人は。


「皆さん、補足します」


 一言目から補足が入るようです。

 副部長のカヨ先輩です。


「先日、博多スターレイでコミケがありました」


 な、何ですと?


「え? コミケあったんですか?」


 うそ、知らないぞ。


「いつですか?」


 なつきも知らなかったみたいだ。


「こないだの日曜日に、ダイヤ部長と行ってきました」


「「えーっ! ずるーい!」」


「何で誘ってくれなかったんですかー?」「ひどーい」

「僕達がいると邪魔なんですかー?」「冷たーい」

「2人デキてるんですかー?」「やらしーい」


「あんた達じゃあるまいし!」


「え~、僕達、そんなんじゃあ……ねえ、なつき」


「う、うん、ミチヨ」


 ここで2人モジモジするのがワンセットだ。

 この1年で、先輩2人に仕込まれてしまった。

 最初の頃は仕方なしに、付き合いでやってる様なもんだった。

 が、最近はなつきとの息もバッチリで、やってて不思議と心地いい。

 

「ぬぬぬ、相変わらずの破壊力……」


 ダイヤ先輩がたらーっと鼻血を垂らすのもお約束。


「むむむ、悪かったわよ。

 でもね、本当にたまたまだったのよ」


「そうよ、カヨちゃんと映画行ったついでに、スケジュール確認しようとしたの」 


「ひょっとして、天馬?」

「あー、2人だけで天馬観に行ったんだ!」


「あー! 悪かったわよ」

「たまには女同士、歯に衣着せぬ、えげつない話がしたくてな」

「ダイヤちゃん!」


「「………」」


「兎に角、コミケ会場でこんな物を売ってたのよ」


 バサッと、机の上に放り投げたのは、一見カラー表紙の同人誌であった。

 ぱらっとめくると全てコスプレ写真。

 ミニコスプレ写真集とでも言うべきか。

 カラーページは前に4、後ろに4ページ。

 中の16ページは白黒の写真だった。

 表紙裏表紙ももちろんカラーで、厚い紙を使っていた。

 コピー誌なので印刷の質は悪い。

 だが発想は面白い。


「凄いね。どうやって作ったんだろう」


 この1年でコスプレに目覚めてしまった美少年は興味津々だ。

 なぜならこの本の被写体は全て、僕らと同じ位の10代コスプレ男女なのだ。


「どう見ても手作りのコピー誌だね。

 これはねA3のカラーを両面1枚、白黒両面を2枚。

 それらを4つ折して重ねて、カッターでくっついてる1辺を切る。

 最後に表紙で挟んでホチキスでパチン」


 僕は文化祭に、コピーの個人誌を作ったので分かるのだ。 


「「「おおおーーーっ」」」


「1冊あたり200円しない」


「くそー、300円も利益乗せやがってえ……」


 悔しがるダイヤ先輩。

 が続く先輩の言葉に、僕となつきは本に食い入る。


「おのれ、イナコウめ!」


 ああ!

 うさぎのフードを着た子、ともかちゃんだ!


「なんか見た顔があると思ったら、宿敵稲月演劇部よ。

 きゃつ等スペース取って同人誌売ってたの!」


 よく見ると「フェイントだ天馬」の女神様の衣装は燐光寺休だ。

 完全に女神様に見えて、気づかなかった。


「体育祭のクラブ対抗リレー前の行進で、伝統的に奴等は仮装するんだ」


 ダイヤ先輩が握りこぶしをワナワナさせる。


「使い回しの写真かよ! コスプレ舐めやがって!」


 ダイヤ先輩は生粋のコスプレイヤーだ。


「おのれえええ……悔しいいい、キーーーーッ!」


 やきもちじゃん。


 チラとなつきを見る。

 穴が空くほど写真集を見詰めている。 

 持つ手が僅かに震えている。


「今年の体育祭で我等美術部は、クラブ対抗リレーにて、奴等の上を行くコスプレをするっ!」


 真似っこかよ。


「やりましょう! 先輩!」


 めずらしく、なつきの気合いが乗っている。


「おおっ、わが弟子よ。ついて来てくれるか」


「はい! わが師ダイヤよ!」


 ひしと抱き合う師弟。

 ハイハイ名シーン真似したいのね。



「お前達、美術部なんだから、まずは油絵描けよ!」


 本物の我等の師匠、神野(こうの)先生が奥の準備室から顔を出す。 



「「「はーーーーーーい」」」


 みんな自分の描きかけの50号のキャンバスに向かう。 




 僕は密かに、なつきの表情を見る。


(やっぱり気になるよね、あの2人の事……) 


 なつきの気持ちを知っている僕は、先輩2人の軽いノリには今ひとつ乗れずにいたんだ……

福岡の田舎では、同人誌即売会は全てコミケと呼んでいました。

正式名はもちろん違いますよ。

他の地域ではどうだったのかな。

開催の情報は会場のスケジュールを見るか、本屋の貼り紙を見るかですね。

あと、口伝て。これがメインかも。

ネットも携帯もない時代、アナログだったけど、結構何とかなってましたねえ。


読んでいただきまして、ありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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