表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたと生きた世界  作者: 仙夏
黄昏

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/27

25

【主な登場人物一覧】

蘭寮   寮長:神楽凜(8) 副寮長:蒼井茜(7)

向日葵寮 寮長:阿久津陽向(8) 副寮長:日向悠人(7)

葵寮   寮長:優木澪(8) 副寮長:緑川颯(7)

菫寮   寮長:橘立夏(8) 副寮長:一条優(7)

蓮寮   寮長:水瀬莉(8) 副寮長:水瀬藍(8)

楓寮   寮長:星宮柊(8) 副寮長:黒川伊織(7)

蓬寮   寮長:桜庭海(8) 副寮長:一ノ瀬南海(7)


学園の生徒の学年は、1年生から8年生までで、上記の( )の中の数字がそれぞれの学年です。

寮長に付いていくと他の最上級生も集まっていて、その中心で蓬寮の一ノ瀬南海が座り込んで涙を流していた。

立夏 「っ…海…」

木に寄り掛かって座り込んでいた蓬寮寮長の桜庭先輩は腹の部分に大きく怪我を負っていて学園までの距離を考えても助けられない状況だった。

寮長が桜庭先輩の元に駆け寄ると桜庭先輩は弱々しくも寮長の方を見た。

海 「…立夏…南海…お願い…」

立夏 「…任せろ。」

南海 「寮長…寮長…!」

海 「…大丈夫…だから…」

桜庭先輩の身体はだんだんと光に変わり消えてしまい、寮長は南海を抱きしめて背中を摩った。

南海は啜り泣きしていて、他の最上級生も目を反らして泣いていた。

阿久津先輩は泣きながらも寮長の背中に手を当てた。

陽向 「…海を含めてここまで犠牲は四人。早く見つけよう。」

立夏 「…っ…エリュシアは見つけた。早く戻ろう。」

皆で走り出すと帰り道は獣の数が格段に多くなり、計画は崩れて皆バラバラに走り出した。

寮長は辛うじて僕と南海の手を引いて走り出し、南海が過呼吸を起こしているのを見て近くの岩陰に身を隠した。

僕が岩陰の奥で南海を落ち着かせようとしていると寮長は外を見張っていた。

優 「…寮長。ここで夜を明かしますか?」

立夏 「…」

寮長には僕の声は聞こえていないようで、何も言わずに外を見ていて頬には涙が流れていた。

優 「…」

一年間桜庭先輩の傍で過ごした南海がここまでの状況なのに、十年以上も桜庭先輩と一緒に過ごした寮長が平然と居られるわけがない…

しばらくして何とか南海が落ち着いて僕は南海を座らせて寮長の元に行った。

優 「…寮長?」

寮長の視線の先には僕らの仲間が消えるときの光がいくつも見えていた。

優 「…」

立夏 「…一ノ瀬は?」

優 「…やっと落ち着きました。呼吸もできています。」

立夏 「良かった…」

優 「…ここで夜を明かしますか?」

立夏 「…皆、エリュシアを学園に運ぶために戦ってる。早くしないと…二人はここで夜を明かして安全になってから戻りなさい…」

僕は震えていた寮長の背中を後ろから抱きしめた。

優 「…駄目です。あなたを一人にはしない。一人で行こうとしないでください。」

立夏 「…しかし…」

その間にも僕らの目には光が一つ、また一つと絶えず見えていた。

優 「…行きましょう。時間がありません。」

南海を連れて寮長と学園を目指して走り出すと僕らもすぐに獣に囲まれた。

僕は毒を仕込んだ扇を構え、南海も剣を構えた。

獣に向かって攻撃を始め、何体もの獣を倒した。

森には非常時に仲間に助けを求める花火が何回か上がったけど僕らにも助けに行ける余裕はないほど、獣の数は多く、そして強かった。

南海 「っ、橘先輩!」

南海の声が聞こえ、そちらを見ると南海は寮長を抱きしめながら獣に剣を突き刺した。

寮長も南海も再度戦闘を開始し僕も毒で弱り始めた獣を刀で斬り始めた。

僕らが相手していた獣が落ち着き、寮長たちを見ると寮長の腕の怪我を南海が手当てしていた。

僕は刀を持って周りを見つつ手当が終わるのを待った。

南海 「…橘先輩まで私を庇って怪我をさせてしまいすみません…」

立夏 「これくらい…一ノ瀬がいなかったら私も消えていた。」

南海 「…橘先輩まで消えるのは見たくありません…」

立夏 「…二人のことは私が守る。海の頼みでもあるし。」

南海 「…」

立夏 「一ノ瀬。学園に戻ったらいっぱい泣こうな。」

南海 「っ…はい…」

手当が終わると寮長は立ち上がり再度出発した。

走り出して少しすると空にはまた助けを求める花火が上がり、寮長は速度を上げた。

優 「あの花火…」

南海 「…優木先輩…」

花火が上がった場所に近づくと獣の唸り声が響き渡り、獣もどんどんと集まってきていた。

僕らが到着したときには、獣の吹いた火によって森の一部は燃え始め、その灯りで少し状況が把握できた。

僕らの目には、楓寮寮長の星宮先輩と副寮長の黒川伊織が木の下で寄り添うように座り込んでいて、二人ともだんだんと光となって消えてしまう姿が見えた。

少し進むと葵寮寮長の優木先輩と副寮長の緑川颯、蘭寮寮長の神楽先輩と副寮長の蒼井茜が獣と戦っていた。

僕らも戦っていると、森の中には銃声や獣の唸り声、金属音が響き渡った。

どれくらいの時間が経ったか、足も限界に近づいて来て倒れ込むと、頭上で急に強風が吹き荒れ、寮長が刀を振って獣を倒した。

寮長はそのまま倒れ込み、僕は慌てて寮長を抱き留めた。

寮長の足を見ると大怪我を負っていて僕は寮長を抱き抱えて木の側に移動し、自分の服を割いて足の手当をした。

寮長が燃えている木の方へ手を向けて呪文を唱えると火が広がり視界が少し広がった。

寮長の手当を終えると、桜庭先輩が委員長を務めていた生物委員会の飼育している生物たちも到着し、獣を攻撃し始めた。

優木先輩の花火や獣の唸り声、そして広がる火によって、寮長や副寮長、最上級生が集まり始め、夜明けを前に獣との最終決戦となった。

ここまでの数の獣に毒を使うと仲間に危険が及ぶ可能性もあるし、多種多様な獣の中には毒が逆効果を及ぼすものもいるはず…僕は足をつりそうになりながらも刀を構え、獣を斬り倒して戦った。

獣に比べて僕らの仲間は圧倒的に数が足りず、撤退することもできそうになく全員が無我夢中になって目の前の敵と戦っていた。

もう誰一人として仲間を失いたくない…全員の心にあったその想いだけが腕を怪我しても足を痛めても自分たちの体を動かしていた。

だんだんと獣も減り始め、夜が明けて空も明るくなり始めると少なくなってきた獣は残っていた最上級生によって倒されていった。

寮長を探すと、寮長は近くの木に体重を預けて座っていて肩で息をしていた。

寮長の方に歩いて寮長の目の前で倒れ込みながらも寮長の方に近づくと寮長は僕に気づいて笑顔をつくった。

一晩中戦い続け、僕が腕も足も限界なように寮長もきっと限界で動けなくなっている。

寮長の隣に座ろうと移動しようとすると、寮長は急に僕に覆い被さるように僕を抱きしめた。

立夏 「っ…」

優 「…寮長…?」

だんだんと重くなる寮長を支えて振り向くと、寮長の背中には大きな傷があり、獣の大きな爪が深く刺さっていた。

蓬寮の一ノ瀬南海が剣で獣を突き刺して倒すと、獣は消えていき寮長は目を閉じながら笑顔になった。

南海は泣きそうになりながらこちらを見ていて僕は寮長を見た。

寮長の息はだんだんと浅くなってきていて、僕は焦って傷口を塞ごうとした。

優 「っ!南海!早く…早く…手当を…」

南海は泣きながら首を横に振って僕らの側に来た。

僕もきっと頭では分かっていた…寮長を助けることはできないということを…

自分の目から涙がこぼれ、僕は寮長を強く抱きしめた。

立夏 「…一条…優…」

優 「っ…はい…」

立夏 「…皆…を…頼むよ…」

優 「寮長…嫌です…寮長!」

立夏 「…生きろ…生きるんだ…」

優 「っ…寮長…」

寮長はだんだんと光になって消えてしまい、僕の手にはエリュシアのネックレスだけが残った。

南海 「…」

僕が泣いていると南海も泣きながら背中を摩ってくれた。

少しして、止まらない涙を拭いながら周りを見ると、蘭寮寮長の神楽先輩が木に寄り掛かりながら座り込み、副寮長の蒼井茜が目の前で座り込んで見守る中、神楽先輩は消えてしまい、地面に仰向けで倒れて葵寮副寮長の緑川颯に泣きながら手を繋がれていた葵寮寮長の優木先輩も光となって消えてしまった。

南海 「…皆…消えちゃう…」

優 「…」

寮長が居なくなってしまった現実を受け入れられないまま、僕は南海に支えてもらって立ち上がった。

他の皆は寮長が消えてしまったことをまだ知らない…この状況…寮長ならどうするのかな…

僕は、涙を拭きながら南海の支えを頼りに皆の真ん中に移動した。

残っていた最上級生も僕の動きを見て集まってくれた。

その中には大怪我の中、無事に生き残ってくれた蓮寮寮長水瀬莉先輩、蓮寮副寮長の水瀬藍先輩も居た。

優 「…学園に戻りましょう。」

莉 「…あぁ。」

学園に到着すると、学園長先生や副学園長先生、そして学園に残っていた上級生が待っていてくれた。

学園長先生からの報告で状況は全員把握しているのであろう様子で、全員何も言わずに怪我の手当を始めてくれた。

保健委員会副委員長の一ノ瀬南海は怪我人の手当に向かい、僕は残っていた最上級生数人とリゼリア室に向かった。

学園長先生のおかげで元に戻ったリゼリア室に入り、一番大きな鏡に向かった。

僕は、自分の首に掛けていたエリュシアのネックレスを手の平において、蝶に戻し、鏡の方に手を伸ばした。

エリュシアは鏡の方に飛んでいき、鏡の中へと飛び立った。

すると、急に全ての鏡が青く光り出し、光が止むと引きずって歩くほど痛みを感じていた足の痛みも引いて、だんだんと怪我も治っていった。

上級生 「…終わったんだな。」

優 「…そのようですね。」

上級生 「…何も救えなかった。向日葵寮も寮長の陽向や副寮長の悠人を含めて皆消えちゃったって…」

優 「…」

大講堂に行くと泣いていた下級生が僕らに気づき、こちらに走ってきて抱き着いた。

下級生を宥めながら僕もだんだんと涙がこぼれはじめ、その場で泣き崩れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ