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あなたと生きた世界  作者: 仙夏
黄昏

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【主な登場人物一覧】

蘭寮   寮長:神楽凜(8) 副寮長:蒼井茜(7)

向日葵寮 寮長:阿久津陽向(8) 副寮長:日向悠人(7)

葵寮   寮長:優木澪(8) 副寮長:緑川颯(7)

菫寮   寮長:橘立夏(8) 副寮長:一条優(7)

蓮寮   寮長:水瀬莉(8) 副寮長:水瀬藍(8)

楓寮   寮長:星宮柊(8) 副寮長:黒川伊織(7)

蓬寮   寮長:桜庭海(8) 副寮長:一ノ瀬南海(7)


学園の生徒の学年は、1年生から8年生までで、上記の( )の中の数字がそれぞれの学年です。

そして、中間試験当日。

各授業を担当する寮長が監督の元、朝一から試験が始まった。

午前中は筆記試験で、午後は実技試験。

筆記試験を終えた後、昼食を食べに大講堂に行くと実技試験を終えた上級生は教科書を見たりイメージトレーニングをしたりしながら食事をしていた。

午後の実技試験を終えると、夜は寮長たちの学園長先生による試験が行われ、それから二日の休みを挟んで結果発表が行われる。

ただ、その休み中に寮長たちに課されるのは膨大な数の採点祭り。

僕ら副寮長も下級生の筆記試験の採点を行う。

寮長たちが普段会議をしている寮長室で年に二回、今回の中間試験と学年末の学年末試験の際に寮長と副寮長が集まり、長時間缶詰状態になる。

僕ら副寮長も最初の頃は集中して採点するものの途中から集中が切れ始める。

陽向 「何度やっても、この採点地獄だけは疲れる。」

澪 「そうだね。集中力を使うし、何より目が疲れる。」

凜 「今日終わらせられれば明日は休める。」

海 「にしても、この量…」

南海 「寮長、生物の絵を描かせる問題なんて出さないでくださいよ。採点が難しすぎます。」

海 「ただ生物の名前書くだけじゃ、つまんないだろ。」

南海 「これじゃあ、美術のテストですよ。」

海 「南海、絵描くの得意じゃん。」

南海 「自分で書くのと採点するのとでは訳が違いますよ。」

凜 「茜、そこの計算間違ってる。」

茜 「うわ、本当だ…すみません。」

凜 「薬草学の方は計算問題が多かったな。苦労を掛ける。」

茜 「いえ、絵の採点よりずっとましです。」

陽向 「あー、疲れた。私も絵を描かせる問題出せば良かったな。」

悠人 「体術の試験のどこで絵を描かせるんですか。」

陽向 「そこは悠人の力量で。」

悠人 「勘弁してください。自分の試験勉強で精一杯でしたよ。」

颯 「寮長。お茶淹れましょうか。」

澪 「そうだね。僕も手伝うよ。颯はココア?」

颯 「はい。寮長もですよね?」

澪 「うん、僕もココアにしようかな。」

柊 「獣の特徴を思いつく限り述べよという問題のところ、大丈夫そうか?」

伊織 「はい。今のところ、寮長の模範解答を上回るものは出ていませんよ。」

柊 「新しいものが出てきたら伊織の感覚で採点して構わない。それだけの知識は教えている。」

伊織 「ふふ、はい。」

藍 「莉、この世界の不思議について自由に記述しなさいってところ、学園の七不思議について知りたいって書いてあるよ。」

莉 「最近、その手の話が多いな。俺もそんなに知らないし、参ってるよ。藍は、何か知っているか?」

藍 「さぁ、莉と知識の量は変わらないかな。そういう不思議系、信じてないし。」

莉 「藍は目で見たものしか信じないもんな。」

優 「…」

僕は、ほかの寮の会話を聞きながら、これまでずっと気になっていたことを考えていた。

立夏 「疲れた…一条、気になるところあるか?」

優 「あっ、あの…寮長は私のことをどうして苗字で呼ぶんでしょうか?」

立夏 「えっ?」

ほかの寮長や副寮長も僕を見ているのが分かり、僕は下を向いた。

優 「す、すみません。ずっと気になっていたもので…」

立夏 「…」

澪 「…一条は立夏に下の名前で呼んでほしいの?」

優木先輩が僕の前にココアを置きながら聞いた。

優 「…はい。ほかの寮もそうですし…」

凜 「だそうだ。立夏。」

立夏 「…分かった。次からはそうする。」

寮長は何となく冷たい感じがして、それ以上、この件について話すことは無く、また採点の時間が始まった。

夜中にやっと、採点が終わり、寮長たちが順位付けを行うため、僕らは寮長室を出た。

茜 「ふぁぁあ、じゃあ、お疲れさん。」

伊織 「あぁ、おやすみ。」

颯 「おやすみー。」

皆が行ってしまうと南海だけは僕を見て残っていた。

南海 「優、大丈夫?」

優 「…僕、何か変なこと言ったのかな…」

南海 「…理由は分からないけど、橘先輩は昔から寮長たち以外は苗字で呼んでいたらしいよ。寮長が言ってた。」

優 「そっか…たしかに同級生のことも苗字で呼んでる。」

南海 「うん。でも、優の気持ちも分かるよ。別に間違ったことを言ってるわけじゃないから、そんなに気にしないで。」

優 「…うん、ありがとう。」

部屋に戻って寮長を待っていると、気づけば寝てしまい、起きると明け方になっていて僕の上には毛布が掛かっていた。

部屋を見ると寮長は肘掛け椅子に横に座り、体育座りをしながら眠っていた。

優 「寮長。寮長。」

寮長の体を揺らして起こそうとすると、急に爆発音が聞こえた。

寮長を見ると何も音が聞こえていないかのように眠っていて僕は寮長に毛布を掛けて部屋を出た。

談話室に行くと上級生が集まっていて、寮生を掻き分けて進むとその中心で何かが燃えていた。

優 「何ごとですか。」

上級生 「お化け探知機、壊れちゃって。」

優 「は?な、何探知機って仰いました?」

上級生 「お化け。学園の七不思議を解明しようと思って。学園中を歩こうと思ったら談話室で急に爆発して壊れちゃった。」

優 「…早く消火してください。」

僕は火事で亡くなった前世を持つ生徒の様子を確認しながら上級生を見た。

上級生 「分かってんだけどさ…見てよ。」

上級生は燃えている機械を指差し、そちらを見ると炎の色が紫になったり青くなったりと色が変化していた。

上級生 「いるのかもな。この談話室に。もしかして、鳴海先輩とか?」

優 「…馬鹿なこと言ってないで早く片付けてください。ほかの皆も部屋に戻って。」

下級生が鳴海先輩の話をしながら部屋に戻ると、僕は上級生を見た。

優 「鳴海先輩の話は御法度です。下級生が気になりだしてしまっているじゃないですか。」

上級生 「気にするなって。俺らがもっとビッグニュース掴んで来てやるよ。」

優 「…本気で学園の七不思議を突き止めるんですか?」

上級生 「そう。ほかの寮でも調査しているチームと協力して謎を解明してくる。」

優 「せっかくのお休みなんですから休んだらどうですか?」

上級生 「休みができたら俺らがしたかったことナンバーワンなの。じゃあね。」

優 「騒がしくしないでくださいよ?」

上級生 「分かってるって。」

上級生が壊れた機械を持って談話室を出ると僕も部屋に戻った。

寮長をベッドに運んで寝かせ、僕もベッドで横になった。

目を覚ますともう夕方になっていて、僕は窓から外を見た。

すると扉が開いて寮長が入ってきた。

優 「寮長。もう起きてらっしゃったんですね。」

立夏 「あぁ。休めたか?」

優 「はい。」

寮長は僕の隣に座って外を見た。

立夏 「何を見ていた?」

優 「夕日です。前世でもこうして夕日を見ることが多くて。」

立夏 「…昨日は変な態度を取ってしまってすまなかったな。」

優 「…いえ、私が変なことを聞いてしまったので。」

立夏 「あの疑問は当然だと思う。ほかの寮は皆、下の名前で呼んでいた。」

優 「…ほかの寮長は昔からそうでしたが、寮長は昔から皆の名前を苗字で呼んでいました。気にするべきじゃなかったと反省しています。」

立夏 「…私が学園に入学したとき、先輩方にほかの生徒に甘えを見せるなと指導された。その分、先輩方や一緒に育った凜たちには存分に甘えて良いからって。その日から、後輩はもちろん、同級生にも極力甘えを見せないようにしてきた。」

優 「…きっと寮長を守るための教えですね。」

立夏 「そうだと思う。幼かった私は同級生たちを苗字で呼ぶことによって一定の距離を取るように努力してきた。あいつらの距離の詰め方が絶妙すぎて、今では甘えていないとは言えないような関係になってしまっているが。」

優 「そうですね。寮長のことも名前で呼んでいますし。」

立夏 「…鳴海先輩が消えてしまってからだ。急に名前で呼んでくれるようになった。そして、泣きたくなったら泣いてもいいって何度も言ってくれた。」

優 「…」

立夏 「だから、あいつらの前では甘えてしまっても後輩の前では強くいられる。自分の中でその区切りになってるのが名前で呼ぶか苗字で呼ぶかだったんだが、あいつらのおかげで曖昧な境界線になってしまって…一条を一番頼っているのに苗字で呼んでしまっていた。」

優 「ふっ、そういうことですか。」

立夏 「照れくさくて昨日はそっけない態度になってしまってすまない。」

優 「良いですよ。それに苗字で呼んでいただいて大丈夫です。理由が知りたかっただけですので。同級生や後輩たちにも嫉妬されそうですし。でも…二人のときは時々呼んでくれますか?」

立夏 「…あぁ。ありがとう。」

優 「ふふ。甘えたくなったらいつでも呼んでください。そういえば、その距離の詰め方天才組がまた何かやってますよ。」

立夏 「学園の七不思議だろ?」

優 「ご存じでしたか。」

立夏 「さっきも聞かれたよ。私もほとんど知らないし、柊の方が詳しいと教えといた。」

優 「そうですね。この手の話は星宮先輩が精通しているかもしれません。」

立夏 「朝の騒動の話も聞いた。試験明けで浮かれているのは分かるが全く困ったものだ。」

優 「えぇ。まぁ、試験明けの休日は何かしらの騒ぎがあるのが恒例になりつつありますけどね。」

立夏 「はた迷惑な恒例だ。」

優 「ですね。」

夕食を食べに寮長と大講堂に行くと下級生に囲まれた。

下級生 「寮長。学園の七不思議って何ですか?」

下級生 「俺も知りたいです!」

ほかの寮の寮長や副寮長も同じ状況で、寮長は手を二回叩いた。

立夏 「先に夕食にしよう。席に着いて。」

ほかの寮の生徒たちも席に着いて夕食が始まっても学園の七不思議の話題は尽きなかった。

優 「寮長。どうするおつもりですか?」

立夏 「ここまで騒ぎが大きくなっていると思わなかった。参ったな…」

すると寮長の周りにほかの寮長が集まった。

凜 「ここまでの騒ぎ、どうする?」

陽向 「やるしかないんじゃないか?怪談話。」

澪 「えぇ、怖がらせるの?あれやると夜眠れない子が大量発生するんだよね…」

莉 「たしかに。やっと今日、休めたとは言え、きついよな。」

海 「てかさ、その前に学園の七不思議って全部知ってるか?俺、七個も知らない。」

凜 「柊は?この手の類は柊が一番得意だろ?」

柊 「俺も全部は分からない。それに、いくつかの噂話が混ざり合って、学園内でもいろいろな話が語り継がれてきた。だから、自分が知っている話も本当に正確なものかは分からない。」

莉 「立夏、どうする?」

立夏 「…私もいくつかは聞いたことがあるが柊の知識には敵わない。」

柊 「…とりあえず、この話、俺が預かる。俺が知ってるだけのことは話す。」

海 「せっかくだし、怪談話にしようぜ。試験結果発表前に一旦ヒヤヒヤさせて、これ以上は七不思議から離れるようにしよう。」

澪 「ふふ、まぁいっか。怪談話、楽しそうだし。」

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