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あなたと生きた世界  作者: 仙夏
黄昏

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【主な登場人物一覧】

蘭寮   寮長:神楽凜(8) 副寮長:蒼井茜(7)

向日葵寮 寮長:阿久津陽向(8) 副寮長:日向悠人(7)

葵寮   寮長:優木澪(8) 副寮長:緑川颯(7)

菫寮   寮長:橘立夏(8) 副寮長:一条優(7)

蓮寮   寮長:水瀬莉(8) 副寮長:水瀬藍(8)

楓寮   寮長:星宮柊(8) 副寮長:黒川伊織(7)

蓬寮   寮長:桜庭海(8) 副寮長:一ノ瀬南海(7)


学園の生徒の学年は、1年生から8年生までで、上記の( )の中の数字がそれぞれの学年です。

あれから一か月が経った頃、夕食の席では、上級生が暗い雰囲気の中、寮長がステージに上がった。

立夏 「寮対抗戦が終わり次に何が来るのか、上級生は良く分かっていると思うが、授業の成果を問う中間試験を行う。試験開始日はちょうど一か月後とする。試験の結果は代表寮選抜の得点も左右し、評価によっては寮の順位を上下させることも可能だ。今年は、課題で授業を合格とするかどうか判断する授業を除き、全ての授業で試験を行う。試験の詳細については各授業で明日以降に発表があると思うが、私が持っている授業についてはここで発表する。剣術、弓術、火薬学の全てで下級生は座学にて教えた内容の全範囲を筆記試験で、上級生は座学及び実技で教えた内容の全範囲を筆記試験及び実技試験で評価させてもらう。評価が低い場合は、苦手分野について補習を行う。また、試験三週間前からは授業終了後から夕食開始前までの時間帯と夕食終了後から消灯時間前までは教室にて質問会を行う。もし、質問がある場合には教室に来てくれれば最上級生か私たちが待機している。以上だ。」

久しぶりに大講堂に静かな時間が流れ、一部の勉強が得意な生徒を除き、上級生につられて下級生も暗い雰囲気になっていた。

俊 「副寮長。」

そんな空気の中、向かい側に座っていた一年生の笹沼俊が小声で僕に話し掛けてきた。

俊 「何でこんな暗い雰囲気なんですか?」

優 「…アルセリアの中間試験の難易度はとてつもなく高い。あのときだけは寮長たちが鬼に見えるよ。」

俊 「えっ…」

優 「下級生の試験はそこまで怖くないと思うけど、上級生は一筋縄じゃ行かないのが中間試験だからね。皆、心して勉強するんだ。」

俊 「まじか…これで寮の順位が変わることもあるんですか?」

優 「全然ある。特に今年は寮同士の得点にあまり開きがないから、この中間試験でもどんどん変動すると思うよ。」

俊 「うっわ…俺、全然ノート取ってない…晴樹、ノート見せてくれ。」

晴樹 「うん。僕は試験だけは得意だからちょっと楽しみだよ。」

俊 「こういう人もいるんだな…副寮長もそっち側ですか?」

優 「いや…実技試験が怖いな。筆記は得意なんだけど実技で順位を落とされる。」

俊 「でも、寮対抗戦、射撃で一位でしたよね?」

優 「得意分野もあるけど、苦手分野も多いから…そこを埋められるように勉強頑張るよ。」

俊 「…じゃあ、俺も勉強します。」

そう言って笹沼は食器を片付けて大講堂を出て行った。

寮長が学園長先生と話して戻ってくると笹沼を見ていた。

立夏 「笹沼、食欲無いのか?」

上級生 「そりゃ、中間試験の話を聞けば食欲も無くなるわ。」

晴樹 「あっ、たぶんそうじゃないです。俊君、こないだから副寮長に憧れてて。」

優 「っ、ごほごほっ…ぼ、僕?」

晴樹 「はい。射撃とか副寮長戦とか目をキラキラさせながら見てました。副寮長みたいになりたいって言ってましたよ。」

優 「そ、そんなの初めて…」

立夏 「ふふ。」

すると、菫寮の最上級生が食器を片付けて戻ってきた。

上級生 「立夏。俺ら、涙のお別れパーティーするけど立夏も来る?」

立夏 「またか。」

晴樹 「何とお別れするんですか?」

上級生 「平和な日常。」

晴樹 「えっ。」

優 「試験の告知をされた日に恒例でやってるんだ。明日から勉強に励むための儀式みたいなものだよ。」

晴樹 「あっ、なるほど。」

上級生 「儀式という名のお菓子パーティーだ。飲み物もある。」

立夏 「こんなやつらには憧れるなよ?とびきり難しい問題出してやる。」

上級生 「勘弁してくれよ。ただでさえ、鬼のような問題なのに。じゃあ、談話室で待ってるから。飛翔、下級生でも来たい奴は来て良いからな。笹沼とか誘っておいで。」

晴樹 「は、はい。」

その夜は、どの寮の談話室でも涙のお別れパーティーが開かれ、寮長も呆れながらも参加していた。


次の日から中間試験の内容発表が各授業で行われた。

中間試験の三週間前から夜は、寮長や最上級生と交代で質問会の対応をして、質問会の担当じゃないときは薬草園で神楽先輩に薬草学について教えてもらっていた。

薬草園に行くと神楽先輩だけがいた。

凜 「一条。今日は一条だけみたいだな。」

優 「あー、明日にしますか?」

凜 「薬草学だけ特に点数の低い一条に特別授業をするか。」

優 「それはありがたいですが、薬草学の勉強に一人だけしか来ないなんて珍しいですね。」

凜 「今年は寮対抗戦の影響で、生物学が人気なんだ。寮長戦でも負けたとは言え、海の戦術に憧れを抱いた生徒は多い。」

優 「あぁ、たしかに生物小屋にたくさんの生徒が集まっていて大変なことになっていると聞きました。」

凜 「気持ちは分かるけどな。で、一条は質問があるのか?無ければ私が復習がてら授業する。」

優 「…せっかくなので、薬草学以外のことも聞いてよろしいでしょうか?」

凜 「何だ?」

優 「…嫌なことがあったとき、それは神様の気まぐれだと考えれば良いと前に水瀬莉先輩に聞いたことがあります。」

凜 「あぁ。あいつの口癖だな。」

優 「神楽先輩もそう考えますか?」

凜 「…私は、自分の実力不足だと考える。」

優 「…私も同じです。自分を責めます。」

凜 「私は、自分を責めるのではなく自分の成長材料として考える。自分に今何が足りてなくて何をすれば良いのか考える。」

優 「…」

凜 「…寮対抗戦、私に勝てなかったことを悔やんでいるのか?」

優 「…頭が混乱しました。自分の手が全てばれている気がして。それに、神楽先輩にはどんな攻撃を仕掛けても全て打ち返される気がしました。少しでも神楽先輩が知らないであろう攻撃をしなければいけないと考えて、夏休み中に水瀬藍先輩に学んだ技を使うために体術を使いました。」

凜 「それで体術だったか。たしかに藍が教えそうな内容だな。私も同じものを莉から学んだことがある。」

優 「やっぱり…」

凜 「一条。アルセリアは皆で協力して獣を倒す場所だ。身内に手の内を知られているからと言って落ち込む必要はない。」

優 「…」

凜 「にしても、私に負けた相談を私にするところ、一条らしいな。嫌いじゃない。」

優 「…神楽先輩は私と似ているところがあると思うので。」

凜 「おっ、来年、代表寮の寮長になるかもしれない一条に言われるとは、光栄だな。」

優 「嫌みに聞こえます。」

凜 「なぜ?一条もそのつもりでいるのだろう?」

優 「…できると思いますか?」

凜 「思う。副寮長戦の一条を見ていて、皆、そう思ったはずだ。自信を持て。たとえ、ボレットだったとしても立夏の首に切先を当てた。一条にも確実に実力が付いてきている。」

優 「…」

凜 「…もし、自分に自信が持てないなら鏡は一条ではない人を寮長に選ぶはずだ。寮長になるやつには相当な覚悟が必要。それが無ければ鏡は選ばない。無理に寮長をさせられることはない。」

優 「…寮長になることは嫌ではないです。でも、寮長戦でも勝てないくらいの実力で代表寮の寮長なんて私にできるのか不安になって…」

凜 「副寮長に簡単に負けるほど、私も軟ではない。というか、私たちの一人も倒せない。それくらい、我々も努力している。」

優 「…」

凜 「責任感が強いのは良いことだが、気落ちしている暇があるなら薬草学の勉強をするぞ。試験まで日がない。」

優 「そうですね、私も勉強や鍛錬していると気持ちが落ち着きます。」

凜 「…たしかに私に似ているな。では、責任感が人一倍強い一条に大事なことを教える。」

優 「何ですか?」

凜 「一条は、これからいろいろな困難にぶち当たる。そのときは自分の実力や仲間たちに頼って乗り越えれば良い。でももし、自分には手に負えないほど大きい壁にぶち当たったら、莉を見習って神様の気まぐれと考えるのも一つの手だ。」

優 「…神楽先輩もありますか?そう考えたこと。」

凜 「…何度もある。」

優 「…」

神楽先輩の集中講義を受けて夜中に寮に戻ると談話室で寮長が眠っていて、最上級生が本を読んでいた。

上級生 「一条、おかえり。」

優 「ただいま戻りました。寮長、眠ってしまいましたか。」

上級生 「少し体調悪そうだったから寝かせた。部屋に連れて行こうと思っていたんだ。頼んで良いか?」

優 「はい。」

寮長を抱き上げると最上級生は明かりを消した。

上級生 「一条。」

優 「はい。」

上級生 「副寮長戦も寮長戦の代理もすごく良かった。痺れたよ。」

優 「あ、ありがとうございます。」

上級生 「おう。じゃあ、おやすみ。」

優 「おやすみなさい。」

部屋に戻り寮長を寝かせ、先輩方の優しさに顔が緩みそうになるのを我慢しながら僕はまた勉強を始めた。

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