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あなたと生きた世界  作者: 仙夏
日和

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16

【主な登場人物一覧】

蘭寮   寮長:神楽凜(8) 副寮長:蒼井茜(7)

向日葵寮 寮長:阿久津陽向(8) 副寮長:日向悠人(7)

葵寮   寮長:優木澪(8) 副寮長:緑川颯(7)

菫寮   寮長:橘立夏(8) 副寮長:一条優(7)

蓮寮   寮長:水瀬莉(8) 副寮長:水瀬藍(8)

楓寮   寮長:星宮柊(8) 副寮長:黒川伊織(7)

蓬寮   寮長:桜庭海(8) 副寮長:一ノ瀬南海(7)


学園の生徒の学年は、1年生から8年生までで、上記の( )の中の数字がそれぞれの学年です。

次の日から自分の苦手なものが何か、寮長の弱点は何か、考えなくてはいけない問題が山積みのまま学園生活を過ごした。

夕食後は校庭でほとんどの七年生が弓術と射撃の練習をしていた。

今日の弓術の練習は寮長、射撃の練習は阿久津先輩が監督官だった。

特に寮長は弓術の授業で先生を務めているほどの実力の持ち主。

寮長は人気で近づける余地も無くて、僕は射撃の練習をしていた。

今夜は全然集中できない…全く的に当たらなかった。

陽向 「一条。ここまで的に当たらないのは珍しい。何かあったか?」

優 「阿久津先輩。いえ、何でもないです。」

阿久津先輩は急に僕の額を触った。

陽向 「少し熱がある。最近、夜遅くまで無理してるんじゃないか?今夜は休め。」

優 「しかし…寮対抗戦まで二週間もありません。」

陽向 「出られなくなったら不戦敗だぞ。その方が辛いだろ。」

優 「…」

陽向 「ったく…なぁ、立夏と今夜の監督官、代わってくれないか?」

阿久津先輩は走っていた最上級生と伴走しながら話をして戻ってきて、少しして寮長がこちらに来た。

立夏 「陽向。私に用か?今夜の監督官を代わるよう言われたが。」

陽向 「あぁ、一条が熱を出しているから寝かせてやってくれ。」

立夏 「熱を?」

寮長は僕の顔に手を添えた。

立夏 「本当だな。しかし、寮対抗戦まであまり時間がない。あいつも練習したいのではないか?」

陽向 「私が体術を特別に教えることで手を打った。久しぶりに甘えさせてやれ。」

立夏 「ふっ、分かった。助かるよ。」

陽向 「おう。」

立夏 「一条。部屋に戻るぞ。」

寮長に支えられて部屋に戻り、部屋のベッドに寝かされた。

寮長は蓬寮で保健委員会の一ノ瀬南海を連れてきた。

南海 「優。」

優 「南海…寮長もすみません。」

立夏 「私のことは気にするな。一ノ瀬、頼む。」

南海 「はい。」

南海は僕の体調を見て、薬を飲ませ寝かせてくれた。

南海 「少々、無理しすぎですかね。」

立夏 「そうか…最近部屋に戻れていなかったし見てやれてなかったな…」

南海 「橘先輩も最近ゆっくりと眠れていないでしょう?これを機会にあなたも無理しすぎずに休んでくださいね。」

立夏 「澪、そっくりだな。」

南海 「副寮長は寮長に似ますし、副委員長は委員長に似るものです。」

立夏 「ふふ。頼もしい。」

南海 「では私はこれで。おやすみなさい。」

立夏 「あぁ、ありがとう。」

南海が出て行くと寮長は僕の隣に座った。

立夏 「最近、考えごとをしていることが多いようだが悩みごとか?」

優 「は、はい。副寮長戦のことを考えていまして。」

立夏 「あぁ、初めての競技だし、お題が奇抜だし。」

優 「自分が一番恐れているもの…寮長なら何を想像しますか?」

立夏 「恐れてるものね…正直に言えば、皆が消えてしまうことかな。」

優 「なるほど…私は自分が一番恐れているものが何なのか分からなくて。獣ももちろん怖いですし、前世の苛めっ子のこともまだ心のどこかで恐れているのかもしれません。その中でも一番は何なのか分からなくて…」

立夏 「…一条が恐れているものが何か、それは一条にしか分からないものだから、それを見つけてあげることはできないが、一条が今すべきことは自分の恐れているものが何かを探すことではなく、敵が何であろうと戦えるよう自分の力を伸ばすことではないか?本番は自分自身しか頼れない。自分の力だけを頼りに戦うしかない。」

優 「…敵を知る前に自分を磨けということですか。」

立夏 「敵が分かっている戦いなのであれば敵を知ることももちろん大切で、それが勝敗を分ける鍵になるかもしれない。でも、半月ほど悩んでも敵の正体が分からない現況ではそれが賢明だと思う。」

優 「…分かりました。残り二週間もありませんがその戦術で行きます。」

立夏 「あぁ。ほかには悩みはないか?」

優 「…えぇ。ありがとうございます。」

立夏 「では休め。今日くらいゆっくり眠りなさい。」

そう言って寮長は灯りを消して僕の頭を撫でた。

いつの間にか眠っていて目が覚めたときには朝になっていた。

立夏 「一条。おはよう。」

優 「お、おはようございます。朝早いですね。」

寮長は着替え終わっていて僕の額を触った。

立夏 「熱は下がったな。今日はどうする?休むか?」

優 「いえ、もう大丈夫です。」

立夏 「そうか。無理しすぎないようにな。」

寮長が朝練の監督に出かけると僕は起き上がってお風呂に向かった。

朝は元々人が少ないけど、今日は特に寮対抗戦前なのもあって大きな風呂に僕一人。

お湯に浸かって目を閉じた。

お風呂の香りはすごく落ち着くし、何かに悩むと僕はよくここに来る。

とりあえず、残り二週間は自分の不得意を埋めて自分の得意を伸ばそう。

それだけ決意し、僕は二週間を過ごした。


寮対抗戦一日目。

今日は、下級生の競技が行われ、僕らは競技の準備や運営をしながら下級生の応援をしていた。

一年生の障害物競争では、前まで、走るとすぐに音を上げていた飛翔晴樹が一位でゴールしたことを始め、どの学年も以前に比べて成長し強くなっていた。

菫寮も順調に勝ち星を上げ、一日目終了時点で菫寮は三位になった。


寮対抗戦二日目。

今日は上級生の競技が行われる。

五年生、六年生の競技が終わり、七年生の弓術・射撃トーナメント。

七年生が一列に並び、一斉にそれぞれの的に向かって弓を放ち、的に命中できた者だけが残ることができる。

だんだんとその的は小さくなり、人数も減っていった。

寮長が審判である手前、格好悪い結果は絶対に残したくない。

立夏 「十五投目。放て。」

四十投目にして、やっと決着した。

立夏 「そこまで。一位、蓬寮一ノ瀬南海。二位、蘭寮蒼井茜。三位、菫寮一条優。」

射撃だけは…火薬委員会副委員長の面目もある…

震える手で銃を構えると、僕の手の上に誰かの手が添えられた。

優 「っ…寮長…」

振り向くと寮長がいた。

立夏 「落ち着いて。大丈夫。」

僕は、何となく気が軽くなり手の震えも収まった。

立夏 「七年生。一度、戦いを忘れなさい。銃を置いて、深呼吸。」

七年生が指示に従うと皆、無駄に力が入っていたことに気が付いた。

思えば、森でやれば獣にすぐに気づかれてしまうような銃がカチャカチャとなる音がずっと響いていた。

立夏 「やっと殺気が無くなった。そんなに殺気を出していると獣に気づかれるぞ。敵は、隣に並んでいる仲間ではなない。自分自身との勝負だと思いなさい。一発一発、集中して。」

皆が落ち着いて銃を構えると、射撃の審判役である神楽先輩が審判台に立った。

凜 「では始めるぞ。放て。」

弓術に比べ、射撃はだいぶ長くまで戦いが続き、百発目を超えた辺りで決着が着いた。

凜 「そこまで。一位、菫寮一条優。」

優 「やった…」

振り向いて寮長を探すと、寮長は笑顔で頷いていた。

そして、寮長たちの学年である最上級生の競技、寮対抗旗章戦。

もちろん寮長がリーダーとなり寮対抗で旗の奪い合いを行う。

僕は七年生で集まり、寮長たちの様子を映す映像を見ながら見守っていた。

今回の競技は森で行われるため、緊急事態が起これば僕ら副寮長が先頭に立って七年生で救出に向かう。

僕ら七年生は緊急事態に備えて、いつでも動ける準備をして待機する。

今回、蓮寮の副寮長である水瀬藍先輩は最上級生に所属するため、藍先輩を除いて副寮長で集まって寮長たちの様子を見ていた。

茜 「人数的には、やはり向日葵寮と葵寮が有利か。」

南海 「そうだね。人数が少ない蓬寮は不利かも…」

伊織 「いや、そうでもなさそうだ。」

蓬寮は、生物委員会委員長である桜庭先輩を先頭に生物の使い手が多く、学園の生物が戦闘態勢に入っていた。

悠人 「それぞれの委員会の強みは発揮してくるよな。橘先輩のところも火薬で来るか。」

優 「いいや、こないだのホリデーウィークで火薬倉庫が爆発しちゃって火薬が足りてないんだ。だから、今回は火薬は使えないって言ってたよ。」

颯 「でも橘先輩だからね。ほかの策で来るだろうな。」

茜 「おっ、向日葵寮が蓮寮に向かってる。」

悠人 「蓮寮は寮長も副寮長も揃っているし手強そうだけど…」

伊織 「どうせは全ての寮の旗を取れないと勝てないからな。手強い相手にも構わず戦いを挑むところは阿久津先輩らしい。」

長時間の決戦の末、蘭寮が葵寮、向日葵寮が蓮寮、菫寮が楓寮の旗を取った。

菫寮は何か武器や罠を使うわけではなく、全員が刀のみで戦っていた。

茜 「菫寮、刀だけで行くみたいだな。橘先輩にしては珍しい。」

森で行われるこの競技はもちろん、獣に出くわす可能性もある。

僕がこの世界に来てから初めて獣を見たのは、以前、この競技が行われたときに映像に映る獣だった。

向日葵寮が蓬寮に向かい、蓬寮の守り担当の生徒と向日葵寮の攻め担当の生徒が戦っていると、獣が現れ、生徒を囲んだ。

それぞれの寮の生徒は戦いを止めて、協力して獣を倒し始め、獣が倒れた瞬間に戦いが再開した。

蓬寮の旗のある場所にはライオンが四匹、旗を守るように歩いていて、近くの木の上に桜庭先輩が座っていた。

陽向 「海。お前だけか?」

海 「うちは人数が少ないからな。」

陽向 「じゃあ、遠慮なくいただくぞ。」

でも、阿久津先輩以外の向日葵寮生は罠に掛かって足が縄に引っ掛かり簡単には動けなくなっていた。

海 「監視は俺だけ。でも罠が無いとは言ってない。」

桜庭先輩が手を前に出すとライオンが一斉に阿久津先輩の方に走り、阿久津先輩を倒して四匹で阿久津先輩の顔を舐めていた。

その間に蓬寮の攻め担当が向日葵寮の旗を取った。

海 「もう少し時間が無かったら危なかった。」

桜庭先輩は悪戯っ子のように笑いながらライオンの頭を撫でていた。

伊織 「やっぱり、一番恐ろしいよ。あの人。」

南海 「侮れないよね。」

茜 「これで、残りは、蘭寮、菫寮、蓬寮の三つだな。」

蘭寮は蓬寮を狙っていて、蘭寮の生徒が桜庭先輩を押さえている間に、神楽先輩が眠り薬でライオンを眠らせ、悠々と旗を取った。

残すは、蘭寮と菫寮の一騎打ち。

菫寮は蘭寮の陣地の方へ薬除けのためにマスクをしながら近づいていた。

蘭寮が武器を構えると菫寮の生徒は刀を構え、木の上に上った。

そして、突然煙幕が張られ、煙幕の中から煙を切るように刀を振って寮長が現れ蘭寮の旗を取った。

菫寮の応援席からは歓声が聞こえ、試合終了の花火が上がった。

しばらく待っていると、最上級生が帰ってきた。

しかし、菫寮と蘭寮だけはなかなか帰って来ず、ほかの寮長たちもそわそわしていた。

澪 「そろそろ帰ってきてもおかしくないと思うんだけど…」

陽向 「だな。蘭寮の陣地が一番学園から離れた場所にあったが、十分帰って来れる時間は経った。何かあったか…」

学園長先生たちも心配して部屋に戻って森の様子を見に行こうとすると、蘭寮と菫寮の生徒たちが帰ってきた。

凜 「澪!」

澪 「怪我人かい?」

神楽先輩の声の方を見ると、菫寮の生徒が寮長を抱き抱えていて、寮長は顔を歪めて腕を押さえていた。

凜 「獣と戦ったときに仲間を守ろうとして態勢を崩した。」

澪 「分かった。医務室に運んで。」

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