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あなたと生きた世界  作者: 仙夏
日和

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【主な登場人物一覧】

蘭寮   寮長:神楽凜(8) 副寮長:蒼井茜(7)

向日葵寮 寮長:阿久津陽向(8) 副寮長:日向悠人(7)

葵寮   寮長:優木澪(8) 副寮長:緑川颯(7)

菫寮   寮長:橘立夏(8) 副寮長:一条優(7)

蓮寮   寮長:水瀬莉(8) 副寮長:水瀬藍(8)

楓寮   寮長:星宮柊(8) 副寮長:黒川伊織(7)

蓬寮   寮長:桜庭海(8) 副寮長:一ノ瀬南海(7)


学園の生徒の学年は、1年生から8年生までで、上記の( )の中の数字がそれぞれの学年です。

寮に着き、静かに部屋の扉を開けると寮長はいなかった。

何となく嫌な予感がして、寮を出て寮長を探すと、鏡の部屋で寮長が倒れているのを見つけた。

優 「寮長!」

寮長の前には寮長の鏡があった。

優 「…」

僕は鏡を仕舞って寮長を抱き上げて寮に戻った。

部屋のベッドに寮長を寝かせ、少しすると寮長は目を開けた。

優 「…大丈夫ですか?」

立夏 「…平気。」

優 「水瀬莉先輩に聞きました。ホリデーウィーク、休めなかったようですね。明日は学園復旧のためにお休みですし、ゆっくりお休みになってください。それと…さっきはすみませんでした。」

立夏 「ううん、こちらこそごめん。」

優 「いえ。お疲れだったのにあんな話をしてしまってすみません。でも、私はこの学園を守りたいです。守れるようになりたいんです。そのために、いろいろなことを知りたいし力を付けたい。自分でも分かってはいましたが、学園を守る度量が無いとはっきり言われて、取り乱してしまいました。」

立夏 「…一条。誤解させていたら悪いんだが…」

寮長は起き上がり、僕は寮長の背中の後ろにクッションを置いた。

立夏 「学園を守る度量は今の一条には必要ないという意味だ。今は私が寮長なんだから、一条が責任を感じる必要はないことを言いたかった。」

優 「あぁ…そういうことでしたか。」

立夏 「一条の責任感が強いという性格を知りながら、言葉足らずな発言をしてしまい申し訳ない。それと…私から何か学びたいことがあるのなら言ってくれれば喜んで教える。」

優 「えっ、本当ですか?」

立夏 「あぁ。私は、代表寮の寮長という立場もあって全員を平等に扱う心づもりではあるが、何かを学びたいという気持ちを蔑ろにするつもりもない。学びたいことがあるのなら私で良ければ教える。」

優 「教えていただきたいです。」

立夏 「あぁ。」

優 「では、次は寮長の話を聞かせていただけますか。」

僕は寮長の足元に座った。

優 「最近、頻繁に鏡の部屋に行っています。何かありましたか?」

立夏 「…鏡の部屋では自分の前世を見ることができる。私の前世はとても短い時間だったから、鏡に映る前世もすごく短い。でも、最近、前世が少し長く見えるようになったんだ。」

優 「…しかし、前世が変わることはありえません。鏡に映る前世が変わるなんて聞いたこともない…」

立夏 「私もそう思っていた。でも、ここ数日見ていても、やはり変わっている。」

優 「ちなみに、どのように変わったんですか?」

立夏 「微かに赤ん坊が泣く声が聞こえて、最後に救急車の音が聞こえるようになった。」

優 「…不思議ですね。今度、一緒に見に行きましょうか。」

僕は寮長を寝かせて隣に横になり灯りを消した。

優 「倒れる寸前まで無理しすぎです。今日はゆっくり休んでください。」

寮長の呼吸から眠ったことを確認してから、僕も眠りについた。

次の日は寮長を寝かせたまま、朝から学園の修復や片付けが続いた。

今夜は、ホリデーパーティー。

今年は一日ずれてしまったけど、ホリデーウィークの最終日をごちそうを食べながら、学園全員でお祝いする。

ホリデーパーティーは、歴代の副寮長が一番嫌う日で男子校のようなアルセリア学園ならではの奇妙な伝統行事の一つ。

夜になり、寮長と副寮長以外の生徒と学園長先生が立食パーティーを始めていた。

僕らは大講堂の扉の前で寮長を待っていた。

藍 「この奇妙な伝統だけ、無くなってくんないかな。」

莉 「学園長先生が楽しみに待っている行事だぞ。」

海 「俺も去年までは嫌だったもんな、この行事。」

南海 「その気持ち、痛いほど分かります…」

すると、コツコツとヒールの音が聞こえた。

凜 「でも、楽しみもあるのがこの行事だ。」

澪 「だね。なかなか見れない。」

立夏 「お待たせ。」

柊 「今年はいつもと違うな。」

陽向 「私の寮の藤咲がホリデーウィーク中に働いて買ったものだそうだ。」

凜 「それは着ないわけにはいかないな。似合ってる。」

立夏 「…早く終わらせよう。一条。」

優 「はい。」

僕は、寮長の前で手を差し伸べ、寮長はその上に自分の手を置いた。

扉が開き、音楽が流れ始め、寮長のドレス姿に対する歓声と僕以外の副寮長が女装をして登場したことに対する笑い声が同時に上がった。

僕らが位置に着くと、司会の藤咲誠がマイクを持ってステージに上がった。

誠 「橘先輩のドレス姿、最高です。働いた甲斐がありました。では、大波乱のホリデーウィークでしたが、アルセリアらしく終わりにしましょう。寮長と副寮長によるダンスです。お願いします!」

菫寮以外は、副寮長が女性役としてドレスを着てダンスを踊る。

自分の寮の寮長が橘寮長で無かった場合、僕もこの伝統の餌食になっていたところだった。

藤咲の言うとおり、本当に波乱のホリデーウィークが終わり次の日からいつもどおりの授業の日々が始まった。

あの日から三日後、授業の合間に寮長と鏡の部屋に向かった。

寮長の鏡を出して一緒に鏡を覗くと、たしかに前に見た寮長の前世から進んでいるように見えた。

優 「…こんなことがありえるんでしょうか。赤ん坊の泣き声に救急車の音、たしかに前の前世では見えていなかったものですね。」

立夏 「あぁ。何度も赤ん坊の声を聞いたが、私の産声とは違うように聞こえた。」

優 「とすると、寮長ではなく別の誰かの泣き声ということですか。」

立夏 「学園長先生にも聞いたが、学園長先生が着任してからそのようなことは無かったと仰っていた。」

優 「そうですよね…」

立夏 「今、図書委員会委員長の柊にも調べてもらってる。前にそのような話を本で見たことがあるかもしれないと言っていた。」

優 「そうでしたか。その返答を待った方が良いかもしれませんね。」

立夏 「あぁ。そういや、一条。この前の私から何かを学びたいという話だが。」

優 「あっ、はい。」

立夏 「毒なんてどうだ?一条、毒性学が得意だし援護射撃として毒について詳しくなっておくのも良いと思うが。」

優 「毒ですか…しかし、寮長になった場合、援護射撃では寮長の面目が立たなくなってしまうのでは?」

立夏 「戦い方は人それぞれだと思うし、援護射撃する寮長がいても良いと思う。大勢を救う手立てとして学んでおくといつか役に立つかもしれないぞ。」

優 「寮長も獣との戦闘で毒をお使いになるんですか?」

立夏 「あぁ。退散する必要があるとき時間稼ぎに使うことも多い。」

優 「そうなんですね。では、お願いします。」

立夏 「あぁ。じゃあ、夜にでも少しずつやろうか。」

優 「はい。ちょうど来週から毒慣らしもあるので今年は毒について詳しくなってみます。」

立夏 「ふふ、そうだな。」


夜に少しずつ毒について寮長から教えてもらい、そして毒慣らしの日。

僕と同じ七年生が教室に集まり、毒性学担当の優木先輩が来た。

澪 「いよいよ、毒慣らしだね。前にも教えたとおり、毒を吐く獣もいるし、森には毒が発生している場所も多くある。毒慣らしは、毒を予め摂取して耐性を付けておく目的で行われる。毒を使うことで戦闘レベルも上がるけど、その分毒慣らしは皆、嫌になるほど苦しむ。今の寮長の中でも何人かはリタイアしてる。人には得意不得意があってリタイアすることは何も恥ずかしいことじゃない。無理だと感じたら遠慮なく僕に言ってね。じゃあ、今日の毒慣らしを行うよ。」

毒慣らしが行われる教室は、一人一人に個室が用意され、ベッドも用意されている。

食事や風呂、お手洗いを除き、個室で集中的に毒慣らしが行われ、一週間教室から出ずに自分自身だけと向き合い、優木先輩が経過を観察しながら行われる。

日が経つごとに徐々に人が減っていき、最終日は僕を含めて数人に絞られた。

澪 「ここまで残れる人は稀だよ。君たちは毒に対して強いみたいだね。特に一条、驚いたよ。昨日の毒は結構厳しいと思うんだけど、君だけは気を失わなかった。誇って良い立派な特技だよ。」

優 「あ、ありがとうございます。」

最後の毒慣らしを終えて夜中に部屋に戻ると寮長が本を読んでいた。

優 「寮長。こんな夜中まで夜更かしですか?」

立夏 「おかえり。一条を待っていただけだ。最終日まで残るとは素質があったみたいだな。」

優 「はい。優木先輩にも褒めていただきました。」

立夏 「そうか。やはり一条が極めるべきは毒で間違いなさそうだ。」

優 「えぇ。ご指導お願いいたします。」

立夏 「あぁ。」

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