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あなたと生きた世界  作者: 仙夏
日和

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【主な登場人物一覧】

蘭寮   寮長:神楽凜(8) 副寮長:蒼井茜(7)

向日葵寮 寮長:阿久津陽向(8) 副寮長:日向悠人(7)

葵寮   寮長:優木澪(8) 副寮長:緑川颯(7)

菫寮   寮長:橘立夏(8) 副寮長:一条優(7)

蓮寮   寮長:水瀬莉(8) 副寮長:水瀬藍(8)

楓寮   寮長:星宮柊(8) 副寮長:黒川伊織(7)

蓬寮   寮長:桜庭海(8) 副寮長:一ノ瀬南海(7)


学園の生徒の学年は、1年生から8年生までで、上記の( )の中の数字がそれぞれの学年です。

少し待っていると町で過ごしていた上級生がちらほらと集まり始め、皆で学園に戻った。

学園に到着すると、何十羽という鳥の大群が僕らの間をすり抜けた。

茜 「あれ、学園で飼育している鳥だぞ。」

優 「どうなってるんだ…」

学園を手分けして見回ると、学園中がめちゃくちゃになっていた。

医務室では薬棚が割れ、薬が充満し保健委員会が大騒ぎしていて、図書室では本棚が雪崩を起こし本が散らばっていて、図書委員会が対応に追われていた。

大講堂では、毎年新入生に読み聞かせを行う絵本が大きくなりすぎて天井を突き破り、風呂場では水が止まらず学園長先生や副学園長先生も含めて水浸しになりながら大騒ぎになっていた。

寮長だけが見つからず、校庭に走ると突然爆発音が聞こえ、空には花火が打ち上がった。

あの花火はホリデーウィーク最終日に火薬委員会が獣除けも兼ねて打ち上げる花火。

嫌な予感は的中し、火薬倉庫が燃え盛っていて火薬委員会が離れて火薬倉庫を見つめていた。

晴樹 「あっ、副寮長!」

そちらを見ると、同じ寮、そして同じ火薬委員会の飛翔がいた。

優 「飛翔、怪我はないか?」

晴樹 「はい。上級生が爆発前に避難させてくれました。でも、どうして急に…」

優 「…寮長がどこにいるか知っているか?」

晴樹 「寮長なら、学園が壊れ始めたのを見て、森も危険じゃないかと森に行った生徒を連れ戻しに行きましたよ。」

優 「森か。分かった。」

上級生に消火を頼んで、門に向かうとちょうど寮長と森に行っていた上級生が戻ってきた。

優 「寮長。」

立夏 「一条。迎えに行けなくてすまない。」

優 「それよりどうなっているんですか?」

立夏 「…分からない。」

寮長は上級生を見た。

立夏 「生物小屋の生物捕獲を手伝ってくれ。」

上級生 「了解。」

上級生が行くと寮長は手を前に出して呪文を唱え、門を閉じた。

立夏 「学園が急に壊れ始めた。森も嫌に静かだった。学園を始め、この世界がおかしくなっている。」

優 「いつからですか?」

立夏 「ホリデーウィークが始まってすぐに学園中で問題が発生して、だんだんと酷くなった。とりあえず、生物を小屋に返すぞ。」

優 「分かりました。」

夜になり、何とか学園全体が落ち着きを取り戻し、各寮の寮長と副寮長を残して皆を寮に返し、寮長たちと大講堂に集まった。

凜 「学園長先生たちが学園内と学園外の見守りをしてくれている。副学園長先生によれば、町やルーゼルクも異常が発生している。学園だけではなく、この世界全体がおかしくなっている。」

陽向 「しかし、どうして突然変わってしまったんだ…」

立夏 「…ノクスストーン。伝説程度だと聞いたが、ノクスストーンという石が町の外れにあるそうだ。その石は、この世界全体の均衡を保っている。石が動くと徐々にその均衡が崩れてしまう。ずっと昔、そのような話を聞いたことがある。」

柊 「そんな話、聞いたことないが?」

立夏 「学園の七不思議を研究していた先輩がいて、その人が言っていた。代々、菫寮で語り継がれている噂話のようで定かではないけど…」

莉 「でも、それしか今のところ浮かばないな。それに懸けてみよう。」

澪 「うん。学園長先生にその石がどこにあるか見てもらってくるよ。」

学園長先生に調べてもらったところ、その石は菫寮の中にあるとのことで、菫寮全員を起こして石の捜索が始まった。

皆で隅々まで探していると、下級生が寮長に話し掛けているのが見え、少しすると急に寮長が声を上げた。

立夏 「あった。これだ。」

寮長の手の中には、青く光る宝石のように美しい石があった。

寮長たちがその石を戻しに町に出かけ、学園長先生にも世界を見てもらって世界も落ち着いてきたことを確認してもらい、僕らも部屋に戻った。

部屋で寮長が髪をとかしていて、僕を見ながら椅子に座った。

優 「あの石、本当はどこにあったんですか?」

立夏 「部屋の隙間に落ちていた。」

優 「本当は、下級生が持って来てしまったのではないですか?」

立夏 「…見つかったんだから良いじゃないか。」

優 「…あなたは優しすぎます。世界が壊れかけたんですよ?」

立夏 「下級生が非難されてしまったら可哀そうだろ。」

優 「町から物を持ち帰るのは、労働と引き換えに得た商品だけです。それ以外のものを持ち帰ってはいけないと何度も注意しました。そのルールを破って非難されるのは問題ですか?」

立夏 「寮長としては問題だと思う。避難から守るのもリーダーの役割だ。」

優 「…そうですか。それと、あの石の話、菫寮で代々伝わっている話だと仰っていましたね。」

立夏 「最近は聞かなくなっていた。私も一年生のときに聞いたのが最後だ。」

優 「…私は知りませんでした。寮長がいらっしゃらなかったら世界は壊れていましたよ。」

立夏 「本当にあるとは思わなかったな。」

優 「…あなたが昨年卒業していたら学園もこの世界も終わってましたよ。私が寮長になっていたら、私の代で私のせいで私が世界を終わらせていたところでした。」

立夏 「…一条は、自分の知識の無さを私のせいにしているのか?」

優 「っ…昨年、あなたは卒業してもおかしくなかった。私が寮長になっていた可能性が高いんです。しかも、代表寮の寮長に。」

立夏 「…だから?」

優 「あなたはいつもそうです。私とあなたはただの先生と生徒の関係ではない。寮長と副寮長です。あなたを支えるのが私の役目。ほかの副寮長たちよりも特別に何かを教えてくれても良いはずです。」

立夏 「…自分の無知を私のせいにしないでくれ。一条にはまだ寮長になる度量はない。そんなに責任を感じる必要はない。」

優 「…私はあなたの役に立ちたくて、ホリデーウィークを潰してまで鍛錬してきました。あなたには褒めてもらえると思ってたのに…」

立夏 「鍛錬は褒めてもらうためにすることではない。」

優 「…」

僕は苛立ちを抑えきれずに部屋を飛び出し、副寮長の秘密基地に向かった。

秘密基地に入ると水瀬莉先輩が外を眺めていた。

優 「はぁ…ここは本当、秘密じゃない…」

莉 「今の寮長は、皆副寮長上がりだぞ。俺らもここを使ってた。で、どうした?規則大好きな一条がこの時間に外にいるとは、らしくないじゃないか。」

優 「あなたこそ。藍先輩といないのは珍しいです。」

莉 「いくら双子でも四六時中一緒にいるわけじゃない。一人になりたいときもある。」

優 「では同じ回答でお願いします。」

莉 「…苛立ってるな。本当、らしくない。話聞いてやろうか?」

優 「…水瀬先輩は、藍先輩に特別教えていることはありますか?」

莉 「藍に?まぁ、ずっと一緒にいるし、学びたいことは自分で見て覚えるだろ。聞きたければ聞いてくるだろうし。」

優 「そう、ですか…」

莉 「立夏から何か教えてもらいたいのか?」

優 「…寮長は、私のことをほかの副寮長やほかの生徒と同じように扱うんです。私が寮長になったとしても学校を守れる気がしません…」

莉 「あぁ、今回のことで不安になったか。立夏がいなかったら今回は危なかったな。」

優 「笑いごとじゃないですよ…」

莉 「…まぁ、本当に世界が壊れていたら笑いごとじゃないな。でも、まだ副寮長である一条が責任を感じることはない。」

優 「…寮長が卒業されていたら私が寮長になっていたかもしれません。」

莉 「そんときは俺らがいるよ。一人でできないことを解決するために仲間がいる。」

優 「…でも、寮長以外にあの石のことを知っていた人はいなかったんですよ?」

莉 「そんときは、古文書引っ張り出したり生徒全員に事情を聞いたり手を尽くす。」

優 「…」

莉 「…立夏が卒業できなかったこと、一条はよく気にしてるよな。卒業できるかどうかは、俺ら、神様の気まぐれだと思ってるから。うまくいかなかったときは神様の気まぐれだと考えると気が楽になる。」

優 「…そう考えた割には卒業できなかったとき、皆さん落ち込んでいらっしゃいましたけど。」

莉 「辛辣だな。まぁ、すぐには受け入れられないこともある。今の一条みたいに。でも、神様の気まぐれのおかげで今回は大事に至らなかった。俺らには全てを決める権限も全てを助けられる力もない。俺らにどうしようもできないことは神様の気まぐれだと考えてみろよ。楽になるかもしれないぞ。」

優 「…私には学園を守る力はないですよね。」

莉 「今はないかもな。でもある必要がない。今は俺らの役目だ。一条の役目は、立夏がその役目を果たせるように支えること。自分の役目と考える必要はない。それにもし、一条が学校を守れるくらいの力がほしいなら、自分から学ばなきゃ。人から教えてもらえることなんて高が知れてる。その人の価値を真につくるものは、自分から学んだこと、自分から挑戦したこと、自分からやってみたこと。俺はそう思うよ。」

優 「自分から…ですか。」

莉 「立夏も一条が学園を守れるくらいの力を付けたいと思ってるなんて分かってないと思う。自分から伝えないと何も伝わらないぞ。」

優 「…分かりました。」

莉 「それと立夏に何を言われたのかは知らないけどさ、大目に見てやって。ホリデーウィーク、この騒ぎのせいでほとんど寝れなかった。あいつなんて特に眠れてないと思う。」

優 「えっ、そうだったんですか?」

莉 「あぁ。さっき走ったから夜風に当たって落ち着いたら寝ようと思って、ここにいたんだ。一条が落ち着いたら俺も戻るよ。」

優 「す、すみません。お休みになる邪魔をしてしまって…」

莉 「生徒の話し相手になるのも俺らの仕事。特に責任感の強い副寮長なら尚更ね。」

優 「…ありがとうございます。」

莉 「何かほかに気になることはある?」

優 「…一つだけ。もし仮に、皆が探しているものを下級生が間違って持って来てしまって、それを水瀬先輩だけに話したら、水瀬先輩はどうされますか?」

莉 「あぁ、今日の立夏の話ね。」

優 「…仮の話です。」

莉 「ふっ、そうね、俺らは同じことをするかな。立夏と。」

優 「だから、仮の話と…」

莉 「俺らは気づいてたよ。下級生が震えながら立夏の元に行ってたのが見えてた。自分から名乗り出る勇気は出なくても自分の寮長を頼り話してくれた。俺らはそれがうれしいし、きっと自分が間違ったことをしてしまったことに気づいてちゃんと反省しているから責めようとは思わない。それが俺らのやり方だよ。」

優 「それが正しいんでしょうか?」

莉 「まぁ、俺らや立夏はそれが正しいと思うだけ。一条が違うと思うんなら、一条は自分が正しいと思うやり方でやれば良いと思うよ。」

優 「…」

莉 「そういうもんだから。一条がリーダーとしてふさわしいと皆が思えば、皆は付いて来てくれる。そうじゃなきゃ反乱が起きる。俺らは見たことないけど、寮長や副寮長が途中で変わることも昔はあったみたい。」

優 「…そうなんですか…」

莉 「リーダーにふさわしいかどうかって難しいけど、素質ももちろんあると思うし、どういう組織でリーダーをするかにもよると思う。でも、一条みたいな誠実なリーダーも俺は好きだよ。」

優 「…しかし、今の寮長たちとは違う選択をしてしまうところでした。」

莉 「それはそれでいい。ただ、ここは特殊な場所だから。ここに居場所がないと感じてしまうとほかに行くところが無いだろ?俺らはずっとそう思ってきた。だから、こういう選択なのかもしれない。何度も言うけど、一条が正しいと思うことをすれば良いよ。俺は、それも間違いじゃないと思う。ここまで一条をずっと見てきてそう言える。でもな、一条。一つだけ言っておく。」

優 「…何でしょうか?」

莉 「間違ってもいい。間違えて誤った結果になってしまってもいい。俺らがフォローできるし、藍たちも力になる。だから、立夏と違うことを恐れるな。あいつは完璧だし能力も高くて副寮長として劣等感を感じることもあるかもしれない。でも、一条の方が優れている部分もきっとあるから。それを伸ばして、それを活かしていけば良いよ。」

優 「…はい。」

莉 「俺も分かるから。俺が副寮長のときの寮長も完璧リーダーだった。」

優 「そうでしたね。」

莉 「完璧であっても菫寮の寮長に代表寮を取られることもある。皮肉な話だけど。」

優 「ふふ。」

莉 「来年はどうなるかな。代表寮。」

優 「譲りませんよ。代表寮は、来年も菫寮です。」

莉 「おう、やる気だな。俺らも本気で行くよ。」

優 「本気上等。やりあいましょう。」

莉 「ふっ、立夏の負けず嫌いが似てきたな。元気も出てきたみたいだし、安心した。」

優 「はい。ありがとうございました。」

秘密基地を出て、僕は寮に戻った。

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