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27 1994/11/27 sun 自室:よし、ポジショニングオッケー。

 ベッドに寝転がり、一冊ずつ中身を丁寧に見ていく。


 パンツの色はほとんどが白。

 うーん、なんて違和感。

 なぜなら晴海のパンツの多くは水色やピンクのパステル基調だった。

 それは「白は汚れが目立つから」というシンプルな理由のため。

 他の子も似たようなものだとか。

 しかし男にすれば、女の下着は白であってほしいという願望がある。

 もちろん俺だってそうだ。


 しかもパンツの素材は光沢鮮やかなシルクが目立つ。

 清楚な勝負パンツとでも呼ぶべきか。

 いわゆるマンガやアニメでよく見る様なシワとツヤと素材感。


 でもそんなわけがあるか。

 シルクの、それも上質なパンツがいくらすると思ってるんだ。

 実際に晴海の高校時代のパンツはほとんどコットン素材だった。

 母に「どうして晴海にシルクのパンツを買ってあげないの?」と聞いたら「そんな高い物何枚も買えるか」と怒られた。

 「なんでそんな質問するの?」と聞かれたので、「女の子はこれが普通みたいだから」とマンガやゲーム情報誌のパンツイラストを見せた。

 それら俺の若かりし頃の宝物は、翌日学校に行ってる間に全部捨てられてしまった。


 だからといってコットンパンツだとただの布切れ。

 イマイチ絵になりにくいからシルクという設定になるのだろう。

 もしかしたらポリエステルやレーヨンなど他の化学繊維かもしれない。

 しかし男にすれば、女には「本物」をつけていてほしいという願望がある。

 化学繊維ではまがい物感が拭いきれないのだ。


 ああ、だからこその金持ち学校の設定か。

 お嬢様なら高い下着を日常的につけていても決して不思議ではないから。

 つきつめて言えば、エロゲーのヒロインはその全てがお嬢様ということになる。

 どんなに庶民っぽく見えようと、どんなに貧乏に見えようと、パンツをプレイヤーの前にさらけ出したヒロインは全員お嬢様なのだ。

 このように考えるとエロゲーのお嬢様ヒロインはおかしい。

 みんながお嬢様の中で、どうして一人だけお嬢様扱いされるのか。


 どうでもいい方向に考えがそれてしまったな。

 パンツ写真調査を再開しよう。


 全く色気のないスポーツショーツも結構多い。

 恐らく運動部の女の子達なのだろうけど、常に盗撮の危険に晒された出雲学園に限れば普通の子であっても賢明な選択だと思う。

 校訓たる「気品ある下着」とは決して言えないが、校則自体には違反していないし実用性の観点からも認めざるをえないのだろう。

 ゲーム的にもスポーツ萌えというニーズがあるから、これはこれで許せるし。


 萌え記号として有名な縞パンは一人しかいない。

 意外だな。

 どうしてここだけ現実と同じなんだ?


 現実で縞パンをはく子は少ない。

 晴海も縞パンは一枚も持ってなかった。

 理由を聞いてみたら「子供っぽいから好きじゃないし、ブラと組み合わせられないから選びづらい」と説明してくれたっけ。

 「アニキ、キモイ」と付け加えた上で。


 だけど男の欲望に忠実なエロゲーなら、もっと縞パンが多くていいはずなのだが。

 ああそうか。

 縞パンはただの萌え記号に非ず。

 それを穿くに見合う特別な女の子にのみ許された勲章なのだ。

 つまり、この縞パンはヒロインの誰かの物ということになる。


 誰だろう?

 全員とエッチしたわけだから、当然全員の下着を見てるはずなんだけど。

 スポーツショーツの二葉は違う。

 今日は黒パンツだった若杉先生も違う。

 ツインテールはいない。ニーソもいない。

 ロリキャラはいるけどパンツを見せない。

 うーん……あっ!

 思い出した! これがヒロインBのパンツだ!


 Bはいわゆる陵辱系のキャラ。

 ただ上級生の世界にはあまり似つかわしくないから、和らげるべく縞パンを採用したという話を開発者談話で読んだ。

 もっともここまで考えなければ思い出せないくらい印象に残ってない。

 それだけ開発者の思惑は空回りしてしまってるのだが。


 しかしようやく手掛かりを掴めた。

 一枚一枚丹念にパンツ写真を追っていった甲斐はあった。

 その子の特徴が頭に入っていれば、確かに顔とパンツが結びつく。

 被写体全てについて頭に入っているであろう一樹には敬意を表するしかない。


 ──あれ?


 不自然に一枚分だけ抜けたスペースがある。

 他はぎっしり詰まってるのになんだろう?

 ここも何かの手掛かりになるかもしれないな。

 付箋を貼り付けておこう。


 ふう、ようやく全部見終わった。


 肝心の万引き写真は出てこなかったが、一応の発見はあった。

 徒労に終わらず済んだのは幸いだ。


 ただ全部きっちり目を通したことで、新たな違和感に気づく。

 なぜ、二葉のアルバムだけが「ただの」盗撮写真なのか。


 一樹の撮影したパンツの写真は扇情的というだけじゃない。

 見る者の目を捕らえて離さない何かがある。

 しかし二葉の写真は単に隠し撮りしただけ。

 ただの下世話な覗き見にすぎず、芸術性は何ら感じられない。


 一樹にしてこんなことがありえるだろうか?

 ましてやその対象は最愛の妹。

 自らの持つ匠の技全てを駆使して盗撮しそうなものだが……。


 こんな発想が思い浮かぶ辺り、俺も一樹の肉体に毒されてきてるのかな?

 目の前にあるのは二葉の盗撮写真、それが全てじゃないか。

 もう寝よう。

 アルバムを机の引き出しに戻して、部屋の電気を消す。


                ※※※


 ……眠れない。

 下半身が火照って落ち着かない。

 なんとなくやるせない。


 当たり前だ。

 考えたら三日前から日課をこなしてないんだから、たまるものはたまる。

 そこに加えてコンビニでエロ本を立ち読みし、女子高生パンツの盗撮写真を大量に眺めたのだから。


 仕方ない、体を軽くしよう。

 隣の部屋に二葉がいる、しかも今頃は落ち込んでいると考えると罪悪感はある。

 しかし背に腹は変えられない。

 ああ男の生理が恨めしい。

 オカズは……昼間の若杉先生のパンツにしよう。

 あれが一番心が痛まない。


 うう、自分のであって他人の代物なのが気持ち悪い。

 小指の先端くらいでしかないから、あまり生々しく感じないのが救いだ。

 よし、ポジショニングオッケー。


 でやああああああああああああああ!


 ……はあはあ、あっという間だった。

 しかしまだうずいている。

 仕方ない、もう一回。


 でやああああああああああああああ!


 ……はあはあ、まだ立ち上がってくる。

 仕方ない、もう一回。


 でやああああああああああああああ!


 ……はあはあ、なんてムダに元気なんだ。

 仕方ない、もう一回。


 でやああああああああああああああ!


 ……はあはあ、この若さが恨めしくなる。

 仕方ない、もう一回。


 でやああああああああああああああ!


 ……はあはあ、ようやく落ち着いた。

 きっと今の俺は賢者の様な顔をしているはずだ。


 ああ、眠気が……おやすみなさ……い……。

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