14 夢
実は俺、今まで夢というものをみたのが片手で数える程度しかない。
だから、夢をよく見る人は見ない人の二倍長い人生を味わっているんだと思って羨ましかった。
これはそんな夢についての話だ。
最後に夢を見たのは、大きな地震が起きる二週間前くらいだったと思う。
俺の夢は少し普通の人が見る夢と変わっていて、その夢が断片的に同じシーンが繰り返されるのだ。
要は、ビデオ再生していた画像が突然巻き戻しされ、また再生。
そしてそのまま進んでいったら、またどこかで突然巻き戻って──……というふうに、なかなかサクサク進まない。
ちょっと大事なシーンだから二回繰り返しました。────というわけでもないようで、どうでもいいシーンで繰り返しが起こっている様だった。
その最後に見た夢もそんな感じ、当時一時間以上掛けて通勤していたのだが、なぜかパンデミック?か何かが起きて電車が止まる。
仕方なく徒歩で会社に向かうことになるのだが、途中で同じ会社の先輩に会って一緒に行くことになったのだ。
「ついてなかったよな〜。一体何が起きたんだろう。」
「さぁ……。まだ詳しい情報はないですね。」他愛ない会話をしながら、先輩は携帯を見た。
「バスなら動いていそうだ。2番乗り場に行ってみよう。」
そう言って、先輩と一緒に2番乗り場に向かい、なんとかそれに乗り込むと、昼過ぎには会社に着く。
そしてその夢は続きがあったのかもしれないが、とにかくこの時は巻き戻しが多いわ、ノイズ??みたいな線がちょくちょく画面に見えるわで、正直これ以外の内容はよく覚えてない。
だから職場の人達とランチを一緒にした時、話題の一つとして軽く話したくらいで、それからすっかり忘れていた。
そしてその二週間後、大きな地震が起き、その日は、車通勤の人に途中まで送ってもらいなんとな帰れたが、問題は朝。
電車は動かないわ、道路は混雑するわでどうしようもない。
しかし、会社の仕事は普通にあるらしく、「とにかく人の手が足らないから、なんとか来てくれ。」とのこと。
最悪だ……と思いながら、途中まで自転車で行き、バスが動いてそうな駅近くに行くと、必死に情報とにらめっこ。
そんな中で、ポンッと俺の方を叩いたのは、夢の中で一緒に行動した先輩だった。
「おはよう。電車は当分だめだってよ。」
「おはようございます。電車は見落としが立ってないらしいので今日は無理でしょうね。今回は仕方がない。」
不測の事態にどうしようもなく、電車は多分今頃は対応に追われているはずだから文句も言えない。
ハァ……とため息をついた瞬間、先輩が俺に向かって言った。
「バスなら動いていそうだ。2番乗り場に行ってみよう。」
これを聞いた俺、『あれ??』って思ったんだよ。
何処かで聞いたようなって……。
それでバスを待っている間、必死で思い出して、夢の中で先輩に言われたら言葉だった事を思い出した。
予知夢とは違うと思うが、ちょっと似てるな……。
そう思っていると、バスを並んで待っていた先輩が「そういえば……。」といわんばかりにこちらを振り返って言った。
「前、お前が見た夢とおんなじような状況になったよな。
パンデミックじゃないけど。」
そこでふと思い出したのは、今まで数回見た夢についてだ。
この繰り返しの夢、どこかしらその後に起こる現実に類似する部分があって……でも、本当にどうでもいいことばかりだったから、今の今まで忘れていたのだ。
覚えている限り、100円を帰り道で拾ってポッケナイナイした事や、部活の遠征地に行った際、同じコンビニがほぼ隣に建っていた事などなど、繰り返しの夢は一部分が現実でも同じ事が起こっている。
これが何なのかは、いまだに分かっていない。
しかし、最近見た怖い話で少しだけ妙な共通点を見つけて震えた。
昔流行ったらしい『異世界に行く方法』
これってある一定の行動を、エレベーター内で行ったり来たりしながら繰り返す事でその不思議な世界に行けるのだそうだ。
俺にはどうも、この『繰り返し』という行為自体が、何かの人知を超えた超常現象のヒントな気がしてならない。
それか、『繰り返し?ダメダメ!常に新しい何かを探し努力し続けろ!それが人生だ!』……的な、スポ根魂全開な神様がいるのかも。
じゃあ、とりあえず強制的に夢の中でループしないで〜!とお願いたのが良かったのか、それ以来繰り返しの夢は見ていない。




