表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/193

another 04

 暗く、光の射さない場所だった。

 現在は完成された【十晶石の幻塊】の光によって照らし出されている。

「はっ、はっ、はっ」

 胸を手で抑え、膝を床について荒い呼吸をする者がいる。

「はっ、はっ、はっ、違、うっ」

 頭を振り、先程の光景を否定する。

「あれは、違うっ。あいつ、じゃないっ」

 シェイプシフターが変化した存在だという事までは分かっていないが、あの冷たい目を向けてきたのが本人ではないと一番分かっている。

 しかし、そうだとしても同じ姿であのような目を向けられれば、動揺をしてしまう。

「分かってるっ、分かってるんだっ」

 床に何度も拳を打ち付け、痛みによって理性を取り戻していく。

「……そうだよ、あいつは、俺の見てる中で……」

 荒い呼吸は収まり、辛い記憶を呼び覚ましていく。

「……だから、俺は……私は……」

 落ち着きを取り戻していき、口調も素から無理矢理変えたものへと変わっていく。

「私は、君を取り戻す為に、長い年月を費やした」

 ゆっくりと立ち上がり、光り輝く【十晶石の幻塊】へと視線を向ける。

「その為の準備も、もう整った」

 一歩一歩踏み締め、少し遠くに転がっている球体を拾う。

 拾った球体は二つ。

 一つは、中に黒い靄で満たされた水晶玉。

 もう一つは、【十晶石の幻塊】と同じような十色の輝きを内包している珠。

「……さぁ」

 二つの球体を持ち、それを同時に【十晶石の幻塊】へと投げる。それらは跳ね返る事無く、中へと入り込む。そして、ゆっくりと【十晶石の幻塊】の中心部へと上昇していく。

「……もう直ぐ、私と君の願いが叶うよ」

 ほくそ笑みながら、【十晶石の幻塊】を見続ける。

「だから、もう少しだけ待っていてくれ…………フラト」

 中央に移動した十色の輝きを内包した珠は、制止を試みるように明滅するも【十晶石の幻塊】の光に遮られ、誰の眼にも届く事はない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ