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 雪原エリアでは、はらはらと雪が舞っていた。

 空は薄暗い雲で覆われ、太陽が完全に隠れている。

 そして、ツバキの言っていた通り一面が銀世界だ。針葉樹がまばらに生えていて、その上に積もった雪が音を立てて落下して行く。

 雪質はそこまで水分を含んでおらず、スキーに向いているパウダースノーだ。故に、普通に進んでしまうと雪に足を取られてしまう。

 ある程度水分を含んでいれば無理矢理固めてその上を歩く方法が取れるのだが、こうもさらさら雪だと固める事が出来ない。

 なので、必死に雪を掻き分けるか、かんじきっぽいものを装備して行動しなければ移動に制限が掛かるだろう。

 尤も、俺達の場合はそうでもないがな。

「ふぁー」

 先頭を行くファフィーが火を吹き、前方の雪を溶かして道を確保出来るからだ。

 ファフィーは最初から宙に浮いているので雪の影響を受ける事無く、そして炎属性の攻撃が使えるので雪を解かすのに適任なのだ。

「それにしても、綺麗ですね」

 ファフィーの後ろを行くサクラが辺りを見渡してそう呟く。鼻の頭が赤くなっているのは寒い外気に晒されたからだろう。一応耐氷性能のあるペンダントを人数分作成して装備してあるのでスリップダメージはないが、それでも寒い事に変わりはない。

 なので、俺達は防寒具をきちんと着用している。

 何時もの装備の上にサクラはフード付きのファーコートに毛糸の手袋を装備している。アケビは口元を覆うようにマフラーを巻き、ダウンジャケットを着用している。そして、俺は何時も装備しているジャケットの上にロングコートを羽織っている。

「こう真っ新な銀世界を見ると、ダイブしたくなる」

 列の真ん中を行くアケビがうずうずとしながらそんな事を口にする。

 子供か、お前は。もしくは犬か。

「あ、その気持ち分かりますっ」

 と、前を行くサクラが手をぐっと前に持って来てアケビに同調する。

 サクラ、お前もか。

「こう、スタンプみたいで楽しいですよね」

「うん。ちょっとずつ姿勢変えて変な一場面作ったりとか」

「やりましたやりました」

「で、全身ずぶ濡れになってお母さんに叱られるまでがデフォ」

 きゃっきゃっと話が弾んでいるな。これがガールズトークか? 内容はガールズというよりもボーイズ寄りだけどな。

「雪、ねぇ」

 俺は一面の銀世界に注意を向ける。

 このエリアでは雪の中から突然モンスターが襲い掛かって来るらしいので、十二分に注意しなければならない。

 今の所まだ雪原エリアに入ったばかりだから遭遇はしてないけど、そろそろ出て来ても可笑しくはないな。

 あ、いや。セーフティエリアを出ていなんだったら遭遇はしないか。だが、こうも道が分からないとどのタイミングでセーフティエリアを出たのかってのが分からないな。

 暫く進むと、モンスターに遭遇するよりも早く視界が悪くなっていく。降る雪の量が増え、それによって視界が遮られてしまう。これは、ちょっとばかし戦いづらい状況だな。

「ふぁーっ」

 先頭を行くファフィーの身体にも段々と雪が積もっていく。時折身震いしたりサクラが軽く撫でるようにして雪を落としていくけど……進む毎に雪の量が多くなっていくから焼け石に水状態だな。

「ぷぎゅー!」

「おっ」

 漸くモンスターのお出ましだ。雪でよく見えないが、鳴き声からしてホッピー系統のモンスターだろう。

 確か、ここに出るホッピーはユキホッピーと言うんだったか? ホッピーの毛が真っ白になり、耳がよりもこもことしているシルエットらしいが、雪の所為でよく見えない。

 反応出来た俺とアケビは即座に武器を構え、向かって来たホッピーに向かって攻撃を繰り出す。

「そい」

「ふっ」

「ぷぎゅっ⁉」

 俺達の方へと真っ直ぐやって来たホッピーはそのまま突き出した短剣と包丁に突き刺さり、光となって消えて行った。


『ユキホッピーを一体倒した。

 経験値を41手に入れた。 』


 うむ。倒したのはユキホッピーで間違いなかったようだ。

 ドロップはなかったが、まぁ、いいか。

「びっくりしました……」

 唯一反応が出来なかったサクラはほぅっと息を吐いて心臓を宥めるかのように胸に手を当てる。

「真っ白い毛だから保護色になってる。無音で近寄られたらちょっと気付きにくい」

 アケビは手に短剣を持ったまま、辺りに注意を向ける。

「だな。まぁ、雪を掻き分ける音とかするから、それを聞き逃さないようにしておけばいいか?」

「そうですね。でも、空を飛んでくるモンスターも確か出現する筈です」

 俺の言葉にサクラは雪の降る中空に視線を向ける。

 えっと……確かスノームササニャーとか言うモンスターが突如飛来してくる可能性があるんだったな。

 容姿は真っ白い毛並みのふわふわ猫にモモンガやムササビのような皮膜がついてるとか。

 と言うか、こう寒いのに普通に猫が飛来して来るのか? 猫は寒いの苦手じゃなかったか? 猫は炬燵で丸くなるって歌でも言ってるし。

「にゃー」

 とか何とか思ってたらスノームササニャーが鳴き声を上げながらこちらに向かって滑空してきた。鳴き声出さなきゃばれなかったのに……。まぁ、こっちとしては直ぐに気付けるから有り難いけどさ。

「にゃー」

「にゃー」

「にゃー」

「「「「にゃー」」」」

 一匹だけだと思ったらまさかの四匹来襲。しかも別々の方角から俺達を包囲するように飛んで来たぞ。

「水よ、我が言葉により形を成し、彼の敵を打ち抜け。【ウォーターシュート】」

「そいや」

「っと」

「ふぁーっ」

 それぞれのスノームササニャーをサクラが【ウォーターシュート】で、アケビが【スラッシュ&】で倒し、俺はフライパンで地面にたたき落としてから頭を踏んづける。ファフィーはそのまま火をスノームササニャーに吹きつけて倒した。


『スノームササニャーを四体倒した。

 経験値を324手に入れた。

 スノームササニャーの尻尾×3を手に入れた。』


 お、今度はドロップアイテムも手に入ったな。

「にゃー」

「にゃー」

「にゃー」

「「「にゃー」」」

 っと、今度は後ろから三匹連なってきたな。

「「ぷぎゅー!」」

 更に、前方からユキホッピーが二匹襲い掛かってくる。

 隊列的に、直ぐにスノームササニャーの相手が出来るのは俺か。

 あっちはアケビにサクラ、ファフィーに任せてこっちは俺だけでどうにかしよう。

 丁度一回確かめたい事があった訳だしな。

 俺は迫り来るスノームササニャーを見据え。武器を構えずにある決まった文言を口にする。

「来い、カゲミ」

 すると、俺の首に掛けてあった【影人の真球】が光を放ち、俺の隣りにカゲミが現れる。

 カゲミの姿は拠点の時に魅せるマネキン姿じゃなく、やや灰色がかった俺の姿をしている。

 どうやら、喚び出すと召喚者の姿を模すようだ。

 今現在、俺は【テイマー】ではなく【サモナー】にチェンジしている。流石に降りしきる雪の中にルーネとビーアを連れて来るのは酷だと思ったからな。それに、今の所召喚獣の皆にPvP以外で活躍の場を与えてなかったってのも理由の一つだ。

 なので、現在ルーネとビーア、ついでにモールンは拠点でお留守番中だ。

「で、俺はあれを相手すればいいんだな?」

 拠点での無口振りが嘘のように、カゲミは俺に言葉で尋ねてくる。

「あぁ」

「了解っと」

 俺が頷き返すと、カゲミは口角を上げて腰に提げていたフライパンと包丁を手に取る。

「じゃあ、さくっと倒しますかね」

 カゲミはそのままフライパンで襲い掛かってくるスノームササニャーを強くはたき落とし、包丁で脳天を串刺しにし、最後は蹴り上げて三匹とも瞬殺して行った。

「いっちょ上がりっと」

 フライパンと包丁を腰に戻し、カゲミは軽く首を回す。


『スノームササニャーを三体倒した。

 ユキホッピーを二体倒した。

 経験値を325手に入れた。

 ユキホッピーの尻尾×1を手に入れた。

 スノームササニャーの尻尾×1を手に入れた。』


 カゲミがスノームササニャーを倒して直ぐに、サクラ達もユキホッピーを倒し終えたようだ。


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