3章 第1話
――ひとり入るだけでキツキツな小型鉄檻に入れられたまま、『馬車』・『船』・『巨鳥の背上』に揺られて、陸空海を移動すること約三日間……。
「おい、到着したぞ……」
「え? あ、はい……」
軍服男と一言交わした後……鉄檻に入った状態の俺は、数人の看守的な人たち囲まれ、巨鳥の背中上から地へと雑に降ろされた。
……さっきまで空の上で揺られて酔っているんだ。もっと丁寧に降ろしてくれないと吐くぞ……。
心中でグチグチ呟きながら項垂れていると……軍服男が鉄檻内で縮こまり体育座りしている俺に、見下すような視線を浴びさせて、
「おい、今から檻から出してやる……。だが、その前にコレで両手を固定させてもらう」
え? コレってなんだろう??
首を傾げていると、軍服男は胸ポケットから頑丈そうな鉄手錠を取り出し、檻の隙間から器用に俺の両手を固定した。
「コレで檻から出しても、抵抗しないだろう……」
「いや、そもそも抵抗する気なんて無いですよっ!? この島の周り見てくださいっ!? 海ですよ、荒れ狂った海で囲まれてるんですよっ!?」
俺が乱気に訴える中、軍服男は無言で鉄檻の扉鍵を開けて、
「もうこの小さい檻からは出て良いが、次はもっと広い檻に移ってもらう。俺に付いて来い……」
そう言うと、俺の腕を引っ張り歩きだす。
ちょっ、付いて来いとか言ってたじゃんっ!? なんか無理矢理に連行されている感が凄いんですけどっ!?
くそ……この状況は、あいつ……『村長』の所為だっ!! 村長が俺に罪を全て擦りつけたからこうなっているんだ!!
村長へ怒りを覚えていると、軍服男の腕を掴む手が急に緩くなり、
「おい、止まれ……」
え?
俺は言われるがままに脚の動きを停止させる。
すると、軍服男が根暗そうな笑みを浮かべ、
「今日から、此処がお前の居場所だっ!!」
何この笑顔、気色悪いっ!?
俺は軍服男の奇妙な笑みを避けるように視線を変えると、眼前に歪でキツイ印象の巨大な鉄建造物が建ち構えていることを確認した。
建物の冷徹さを感じた俺は、瞬間に身を竦め、喉に溜まった唾を飲み込む。
と、
入り口であろう分厚く巨大な鋼扉が、騒音を立てユックリと勝手に開き始めた。
「え……自動……??」
俺が物怖じして驚いていると、前隣に立つ軍服男がバカにした口調で、
「何を驚いているんだ? 普通だろう??」
「いや、普通なんですかっ!?」
なんだよ此処……技術発展し過ぎだろ。
俺が唖然と立ち尽くしていると、軍服男が小声で、
「まぁ……そんな事は気にしなくて良いから、サッサと建物内へ入るぞ……」
「あ、はっ、はい……」
俺が慌てながら返事を返すと、軍服男に再び腕を引っ張られて、薄暗い建物内へと連行された。
「――そういえば、お前の髪型。囚人らしく無いな……」
薄暗く長い道の中、俺の腕を引っ張り歩く軍服男に突然言われた。
俺はそんな発言に困りつつも小声で、
「え? あの、囚人らしい髪型って……? どんなものなんですか……??」
囚人といえば、坊主とかかなぁ?
怪訝に坊主などの髪型を想像していると、軍服男はハッキリと口を動かし、
「荒くれ者の囚人らしく、モヒカンなんてどうだ?」
…………モヒカン?
「い、イヤですぅッ!? モヒカンはイヤですぅッ!!!! てか、荒くれ者ってなんですかっ!?!?」
予想外すぎる言葉を耳にすると共に、即答した。
軍服男の真剣な眼差しを見る限り、本気で言っているのだと判断が出来る。
俺が懸命に断り続けていると、軍服男は途端に高笑いして、
「アッハハハハッ!!!! まぁ、髪型は今のままでも良いとしよう。それよりも、もう少しで目的地に到着するぞ」
え?
急いで軍服男の顔から進行方向へと視線を移すと、鉄格子扉の部屋が沢山並ぶ……石畳な大空間が見えた。
俺が呆然と鉄檻部屋を見つめながら脚を動かしていると、軍服男が突然ハッキリとした口調で、
「今お前が目にしている部屋は、囚人監禁部屋だっ!」
「しゅ、囚人監禁部屋……?」
「そうだ、囚人監禁部屋だ」
はぁ……監禁されちゃうのか。いや、待てよ……??
とても大切な事項が脳裡を横切ったので、俺は軍服男へ焦りながら口を動かし、
「あ、あのっ! そういえば、俺っていつまで此処で収監されるんですかっ!?」
すると、思いもよらない言葉が鼓膜に響く事となる。
「――命が朽ち果てるまで……。つまり、終身刑だ」
「え……?」
嘘だろ。此処まで無理矢理に連れて来られたから、セリカ達に別れの挨拶もしてないんだぞ……?? なんだよ、命が朽ち果てるまでって……。いや、一つの村全体を経済難にしたという重罪には、これぐらいが普通なのだろう。
って、実際……俺は無罪なんだっ!! こんな太陽の光が当たらない場所で死んでたまるかっ!!!!




