5章 第20話
イリビィートの発言に返答するため、ミネルはユックリと口を開く。
「えっ……誰って。街に居た爺さんから、依頼されたのだけれど」
この不十分な説明に……イリビィートは多くのことを納得したような仕草を取りはじめ、冷静な態度で言う。
「そうなのね。その依頼主、なんとなく検討がついたわ」
「今の説明で、検討がつくモノなのか!?」
ミネルが、多少に驚いた感じで言い返すや否……イリビィートは、自信満々に頷いて声を発する。
「アク爺、からでしょ?」
「ごめん。それは、分からない……」
ミネルは、申し訳なさそうに眼を少し逸らしてボソリと告げた。
正解だろうが、不正解だろうが……ミネルには判断がつかない。
なぜなら、依頼主の名前を知らないから。
刹那……イリビィートは、不機嫌そうに頬を膨らましはじめた。
「なによ。じゃあ……名前も分からない人の、依頼を受けたって事なのかしら?」
「そ、そうなるな……」
ミネルは正直に答えた。
瞬間……イリビィートは、悪戯めいた笑みを途端に浮かべ、クスリと唇を動かす。
「飛んだお人好しなのね……」
「そう言うお前こそ……。見ず知らずの俺たちを、助けてくれたじゃないか」
「そうね……」
そんなこんな二人が会話を広げている最中、シュティレドが割り込むように声を発する。
「狐っ子を探さないと……」
この言葉を鼓膜に響かせたミネルは、急いでイリビィートとの会話を終わらせる。
その後、すぐにシュティレドへ口先を向けて言う。
「ごめんな。それじゃあ、早速だけれど……村を探索するとするか」
「早速と言っても……。此処に来て、地味に時間が経過している気がするけれど。まぁ、良いか」
シュティレドは不満あり気に呟きながら、身体を目前の荒廃した村へと向けた。
ミネルも同じように……イリビィートに背中を向けて、村へと足を進める。
「それじゃあ、また何処かでな」
ミネルが後方に向かって、別れの挨拶を告げた瞬間だった。
「カッコつけているところ悪いけれど……。その進行方向のままじゃ、下山はできないわよ?」
イリビィートが、馬鹿にしたような口調で言ってきた。
「……えっ?」
不意な発言にミネルは、思わず立ち止まり振り返る。
刹那、悪戯めいた笑みを浮かべるイリビィートと目が合う。
「…………」
「…………」
本日何度目かも分からぬ、沈黙が訪れる。
「下山をするのなら、進行方向は真逆の道をお勧めするわ」
沈黙を打ち破ったのは、イリビィートだった。
唐突に投げつけられた発言に、戸惑いながらも……ミネルはシッカリと滑舌を回して言い切る。
「す、すまないが……。まだ下山をする気は無いんだ」
こう発言した後にミネルは……どんな暴言が飛んでくるかと、緊張しながらグッと立ち構えた。
逆らった発言を徐々に後悔し始めた頃、イリビィートから言葉が返ってくる。
「そうなのね……」
「え?」
あまりにもアッサリとした返答に……ミネルから、拍子抜けした声が漏れ出した。
と……イリビィートが、続けて口を開き言う。
「それじゃあ。貴方たちが、下山するまで……依頼とやらのお手伝いをしてあげようかしら?」
「ふぇ?」
再びの予期せぬ発言に対して……ミネルの口から、混乱と驚愕の混ざった声が漏れ出した。
戸惑い固まるミネルを隣に……シュティレドとイリビィートは、荒廃した村へと足を踏み入れる。




