4連続模擬戦(6)
セイヤはリュカの杖を奪えう事にした。
普通は奪うどころか近付く事さえ困難だ。
そう、普通は困難なのだ。
だが、セイヤは普通じゃない。
神様からもらった体と、この世界の常識を超える考えを持っている。
セイヤは普通じゃないのだ。
だから、
「おりゃあ!!」
何の考えも無しに突っ込んで行くのだ。
正直ごり押しである。
「わ! わ! 『ファイヤーボール』」
しかし、そんなごり押しがリュカに効くはずもなく、呆気なくファイヤーボールで追い返されてしまった。
「はぁ、やっぱりダメかぁ」
セイヤもバカではない。
ごり押しでどうにか出来るとは最初から思ってはいなかった。
考えている最中も『ファイヤーボール』は絶え間なく放たれている。
だが、まだ距離がある分考え事をしていても避けられる。
それでも他に作戦なんて無いんだよな。
……やっぱり正面突破あるのみ!
「そうと決まれば少し準備をしないとな」
セイヤはそう言って能力を発動させた。
発動させたのは……『影盾』だった。
またシールドか? って思っただろう。
でも今回はこのシールドをちょっと弄くる。
すると強度が増すんだ。
どうやるかって?
こうやるんだよ。
「『影盾』よ縮め」
セイヤの前にあった壁がドンドン縮んでいく。
そして終にはバスケットボールほどに縮んだ。
そのシールドの色はどす黒く、今までの影とは全く違っていた。
そしてさらに、
「『霊影盾』」
セイヤの手にあったシールドが手から離れ、セイヤのすぐ近くに浮かんでいた。
その姿はまるで幽霊がいるようだった。
これで準備は整った。
後は突っ込むだけだ。
「よし!」
そのかけ声と同時にセイヤは駆け出した。
もうスピードでリュカへと近付いていく。
しかし、リュカもそれを許さない。
「あわわ……『ファイヤーボール』『ファイヤーボール』『ファイヤーボール』『ファイヤーボール』……」
今度は噛まずにずっと『ファイヤーボール』を撃ち続けている。
ドンドン火の玉が迫ってくる。
怯えるな俺! 俺の能力を信じるんだ!
そして、遂にシールドとファイヤーボールがぶつかり合う。
ドガンッ! ドガンッ! ドガンッ! ドガンッ! ドガガガンッ!……
無数の『ファイヤーボール』が着弾し、セイヤの辺り一帯を黒い煙が覆うのだった。
模擬戦を見ていたサリカにロイやレイは心配そうに煙を見つめている。
リュカに限ってはオドオドしていた。
「ど、どうしよう……早く助けないと!」
「その必要はないよ!」
煙の中からセイヤが飛び出してきた。
セイヤの体は煙で少し黒ずんでいたが無傷だった。
その代わりシールドがボロボロと崩れ落ちていた。
危なかった。
あと一発でも多かったらダメージを受けていたな。
「え?」
リュカはセイヤが出てきたことで動きが止まっていた。
その隙にセイヤはリュカへと近付いた。
突然の事にリュカは反応出来なかった。
この隙にセイヤは杖を奪わずにリュカの体を持ち上げた。
「え?」
リュカは攻撃されると思っていたから目を瞑っていたが、何故か体を持ち上げられた。
もしかして放り投げられるのではとまた目を瞑った。
セイヤはそんなリュカに気を止めず。
歩いていく。
そして、
「よいしょっと」
リュカを下ろすのだった。
「え?」
投げられずに下ろされた事にリュカは驚いた。
何故下ろしたんだろう?
そんな困っているリュカにセイヤは満面の笑みで、
「これで俺の勝ちだな」
そう言うのだった。
セイヤがリュカを下ろした場所はステージの下の場外だった。
セイヤの言葉でようやく自分が負けた事を理解したリュカは顔を赤くしながら頷いた。
「う、うん」
何故顔を赤くしたのかはセイヤには分からなかった。
でもこれで3連勝だ。
後は……レイだけだ。
一番強いだろうな。
楽しみだよ。
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私の為に攻撃をせずに場外まで抱えていってくれたんだ。
う、嬉しいな。
そ、それにあの笑顔……エヘヘ♪
可愛かったな♪
ど、ドキドキしちゃったよ。
また見たいなぁ。
こうしてリュカは一人で顔を赤くするのだった。
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