防具を買う(5)
「ふっ、お前ならそう言うと思ったぜ」
おやっさんが俺の言葉にニヤりとする。
「兄貴、ホントにいいんすか?」
ロイが心配そうな顔で言ってくる。
「まぁ大丈夫だろう」
もし着れなくてもお金が無くなるだけだ。
ちょっとハクさんには申し訳ないけどちゃんと返せば問題ないだろ。
「そんな軽く……」
「ロイ、ソイツが決めたことだ。お前がとやかく言うことじゃねぇ」
「……」
ロイがおやっさんの言葉でショボンとしている。
おやっさんはそれを気にせず話を進める。
「んじゃあ条件を言うぞ」
遂に条件を言うのか。
めんどくさくないやつだといいな。
「俺にお前の力を見せてみろ。それが条件だ」
俺の力を?
え? それだけなの?
「力ってどうやって?」
「そうだなぁ……お前が模擬戦の時にやった凄い技を見せてくれればいい」
凄い技ってあの剣を使ったやつか?
それだけでローブが半額で買えるの?
「そんなんでいいんですか?」
「あぁ、十分だ。じゃあ早速やってもらおうか」
おやっさんが店の奥を指差しながら言ってきた。
「分かりましたけど、あれをやるには剣が二本必要なんですけど」
「木剣くらいならうちにもある。それでいいか」
木剣か……折れるかもしれないな。
「多分大丈夫です」
「そうか、持ってくるから先に中庭に行っといてくれ」
そう言っておやっさんは木剣を取りに行った。
俺は中庭に行く。
防具屋にも中庭ってあるんだな。
まぁ今回は丁度いいからよかったな。
中庭について暫くするとおやっさんが木剣を二本持ってやって来た。
「コイツで大丈夫か?」
少しボロいけど十分だろう。
「大丈夫です」
「へへ……なら見せてもらおうか」
「分かりました」
中庭の中心へ移動する。
おやっさんもロイも真剣な表情でこちらを見ている。
どうしてこうなったんだ?
俺はただ防具を買いに来ただけなのに。
……早く終わらせよ
と言っても投げられないとあれは出来ないんだけど……。
仕方ない、俺の能力で飛ぶか。
「じゃあやりますね」
そう言って無言で能力を発動させた。
編入試験の時に回避するために使ったやつだ。
俺は斜めに飛ばされた。
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そこからは模擬戦と同じだった。
無事に失敗せずにやることができた。
「凄いじゃねーか。これならあんな無茶な防具の条件も頷けるな」
おやっさんが笑いながら近づいて来た。
そして、俺にローブを投げてきた。
「ほれ、ソイツは今日からお前の物だ。足りない金は何時でもいいからな」
そう言っておやっさんは店へと戻って行くのだった。
「やったっすね兄貴!」
ロイも近づいて来た。
「あぁ、これでちゃんと装備が出来れば問題ないだろ」
まぁそれはまた次回だな。
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