防具を買う(4)
「待たせたな」
しばらく待っているとおやっさんが黒い布を折り畳んだような物を持ってやってきた。
「おやっさん、それが兄貴の要望に答えた物なんすか?」
ロイが布を指差しながら聞く。
よく聞いたロイ。
俺も気になってたんだよそれ。
「あぁ、ソイツの要望にかなう品だ」
おやっさんはそう言って、手に持っていた布をパサリと開いた。
「それは……」
「これはローブだ」
開かれたローブは、腕を通す袖があり、膝の裏辺りまでの長さがあった。
○の錬金術師の○ドワードが着ているやつみたいだ。色は真っ黒だけど。
「これなら確かに軽くて動きやすそうだが、丈夫なのか?」
こんな布が丈夫なのか?
「心配するな、コイツはランクAのモンスターの毛を使って作った物だ。丈夫さは保証するぜ」
ランクA……確かにそれなら丈夫だろう。
しかし、ランクAのモンスターの素材を使ったんなら値段もそれ相応だろうな。
「それなら大丈夫そうだが、高いんだろう?」
おやっさんは俺の言葉にニヤっと笑った。
「金貨50枚だ」
「き、金貨50枚っすか! そんな高いんすか!」
金貨50枚。
今の俺じゃあ到底払える金額ではない。
ハクさんから借りたお金も金貨10枚くらいだ。これでも十分大金だ。
「せっかく持ってきてもらったけどとても払えないよ」
今回は別の防具にするしかないか。
「まぁそうだろうな。そこで俺から提案がある」
「提案?」
「あぁ、条件をのんでくれたらコイツを半額で売ってやる。それでも足りなかった場合は俺が金を貸してやる」
……俺に都合が良すぎないか?
「都合が良すぎないか?」
「あぁ、実はこのローブちょっと使いづらいんだよ」
ローブが使いづらい?
「どういう事だ?」
「このローブを装備していると基本魔法が使えない」
魔法を使えない。
俺には全く影響がないな。
でもそれだけならまだ売れるだろ。
「それにコイツは闇系統の能力者にしか着れない」
闇系統……俺は何系統だ?
色からすると闇に近いとは思うんだが。
しかし、それでもまだ売れるだろ。
「極めつけが装備者の能力の影響を受け変化することだ」
能力の影響を受けて変化する?
「何か問題があるのか?」
「あぁ、他の系統なら問題ないんだが、闇系統の場合は装備者の負担になるような変化しかしないんだ。極希にそうじゃないものもあるが大半がそうだ」
うわぁ使えねー。
闇系統しか装備できないのに闇系統だと負担にしかならないってダメだろ。
これは売れないわ。
大体なんでこれが金貨50枚もするんだよ。
というか俺も着れないだろ。
「そんなの売れるわけないっすよ」
「だろうな。ちなみにお前何系統だ?」
俺の系統ねー。
「どうやって系統を調べるんですか?」
俺の言葉にロイとおやっさんがポカンとしている。
「お前自分の系統も知らないのか?」
「はい、分かりません」
ここは正直に言っておこう。
「いったいどういう風に育ったんだか……いいか系統を判断するのは能力の色だ」
能力の色?
「火なら赤、水なら青、土なら茶、風なら緑、光なら白、闇なら黒だ。他にも例外はあるが大抵このどれかの系統に当てはまる」
俺の能力の色は黒。
ということは、
「俺の系統は闇か」
都合が良いのか悪いのか……。
「ほぉ、丁度いいじゃないか。お前の能力は相手に影響をあたえるものか?」
影響をあたえる?
「どちらかというと自分の支援をしてくれるものです」
「なら大丈夫かもな。闇系統の大体は相手に影響をあたえるものだ。お前の能力ならローブに影響をあたえても大丈夫かもな。……どうする? 俺の提案を受けるか」
俺の能力はこの世界にあるものじゃない。
なら大丈夫か?
やってみる価値はあるかもな。
よし!
「その提案を受けよう」
こうしてローブを手に入れる条件を聞くのだった。
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