編入試験(1)
「ここが大闘技場じゃ!」
ニーナに連れてこられた場所はギリシャにあったコロッセウムのような場所だった。
学園にこんなにでかい建物があったんだな。
「どうじゃ、驚いたか!」
ニーナが満面の笑みで聞いてくる。
「あぁ、驚いたよ。驚いたけどなんで観客がいんだよ!」
そう、この大闘技場には大勢の観客がいた。
どいつもこいつも俺と似た制服を着てるってことはここの生徒だろう。
「あれ? 言ってなかったかのう?」
ニーナが首を横に傾げている。
「聞いてねーよ! というかなんでこんなに人がいるんだよ!」
「あぁ、それは我がスカウトした生徒を一目見たいと思ったからじゃろう」
やっぱりお前のせいじゃねーか!
それに人前であまり俺の能力を使いたくないんだけど。俺の能力はこの世界に無いものだからな。
が、今回はもう無理かもしれない。多分バレるだろう。仕方がない。
「はぁ、分かったよ。いいからさっさと編入試験を始めよう」
もう戦う前から疲れたよ。
「うむ、そうじゃな。では、お主は闘技場の中心で待っておれ」
そう言ってニーナは何処かへ走っていった。
俺もゆっくりと観客に見られながらコロッセウムの中心へ歩いていく。
は、恥ずかしい。
こんな大勢の人の前で戦うとか恥ずかしすぎるだろ。
『こほん、それではこれから編入試験を始めのじゃ』
突然スピーカーのように声が闘技場の中に響いた。
観客達が歓声をあげている。
ニーナの声か。
これも精霊具でやっているのか?
まるっきりスポーツの実況と解説みたいだな。
『ルールを説明するのじゃ。編入生が今から出てくるモンスターに一度でもダメージを与えたら勝ち。編入生が10分間逃げ切れても勝ちじゃ! なお、ここでは死ぬほどの攻撃でも気絶で済む結界が張ってある。思う存分戦うがよい!』
観客がおおいに盛り上がっている。
いや、ちょっと待って!
え? 俺モンスターと戦うとか聞いてないけど。
それに一度でもダメージとか10分間逃げるとかが俺の勝利条件なら相手はどんだけ強いモンスターなんだよ!
それに死ぬことのない結界ってもうヤバいモンスターじゃねーか!
『それではよいかのう。ではモンスター投入じゃ!』
俺の正面の方の入り口から何かが出てくる。
っておいあれって!
『そう、今回のモンスターは……ワイバーンじゃ!』
観客が歓声と悲鳴の混じった声をあげる。
おいおい、マジで冗談じゃないぞ。
村で見たワイバーンより一回りも二回りも大きいじゃねーか!
くそ、こうなったら10分間逃げ切ってやる。
『では、編入試験始めなのじゃ!』
こうして、俺とワイバーンとの戦いが始まるのだった。
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