能力の序列
ハクさんは、10分もせずに泣き止んだ。
そこにはもう、辛そうな表情はなかった。
「すみません……みっともないところを見せちゃって」
ハクさんが、顔を赤らめながら言ってきた。
照れてるんだな。
まったく、可愛いな。
「や、やめてください」
ますます顔が赤くなる。
ハクさんをからかうのは面白いな。
「からかわないでくださいよ」
少し怒ったようだ。
「すいません。つい、面白かったもので」
俺の謝罪の言葉に、ハクさんが頬をふくらませた。
「何やってるんてすか?」
頬っぺたを指で指しながら聞いた。
しかし、こんなハクさんでも、子供がやってるみたいに可愛いな。
……俺、さっきから可愛いしか言ってないような気がするな。
「むぅ。……敬語は使わないで」
え? 敬語?
「そう、心の声みたいに敬語はやめて。私達は友達なんだから」
友達か……それを言われちゃ断れないな。
「分かったよ。これからは敬語はやめるよ」
俺の言葉に大変嬉しそうな顔をする。
こんなことでこんなにも喜んでくれるのか。
「うん、それでよろしい。じゃあ忘れてたけど、序列を調べようか」
あ、すっかり忘れてたわ。
そう言えばそれが身分証には必要だったな。
「はい、今度は忘れないうちにここに手をおいて」
ハクさんが石板を差し出してくる。
俺はそれに従い、石板に右手をおく。
「そのまま能力を発動させようとして」
ハクさんの指示で影を動かそうとする。
すると、
「おぉ!」
石板に光る文字が浮かび上がってきた。
「ふふ♪ 驚いた?」
あぁ、これはスゴいな。
……ん? これって
「日本語じゃないか?」
目の前に浮かび上がった文字は確かに日本語だった。
どういうことだ?
「あぁそれはね、この道具に触れた能力者の最も馴染んでいる文字に自動変換されるからだよ」
へぇ、精霊具って便利だな。
これなら俺でも読むことができる。
石板に目を向ける。
■精霊 ■■■■■■■■ 序列■■
あれ?
文字化けしてる。
これじゃあ一切の情報が分からないんですけど……。
俺は困ってハクさんの方を見る。
ハクさんも驚いて止まっている。
「ハクさん、これはどういうことだろう」
「……分からない。こんなことは一度も起きたことがないから」
となると、俺の出身が問題なのかな。
それとも体の問題か。
まぁ、どちらにしろ
「無いものは仕方ないですね」
「そんな簡単に」
「俺には簡単な事だよ。身分証には序列外とでも書いといてよ」
そっちのほうがカッコいいしね。
「はぁ、あなたがそれでいいならいいです」
じゃあそれでお願い!
それからはあっという間で、すぐに身分証は完成した。
ハクさんが身分証を渡してきた。
「ありがとう。それじゃあエレナさんが帰ってくるまでもう少し話そうか」
俺の言葉にハクさんは嬉しそうに笑ってくれた。
それからエレナさんが帰ってくるまで楽しい会話は続くのだった。
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