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心を見透かす少女

 ハクさんは数分で戻ってきた。

 その手には国語辞典ほどある石板が握られていた。


「それで能力の序列を知ることが出来るんですか?」


 石板を指差しながら尋ねる。

 すると、ハクさんは頷き、カウンターの上に石板を置いた。


「この石板に手をおき、能力を使用しようとすると、精霊の名前と序列などが分かります」


 へぇ、それだけで能力の序列が分かるんだ。

 いったいこの道具はどうやって作っているんだろう?


 俺の興味が、どうやって作っているのかを知りたくなった。


「へぇ……これってどうやって作っているんですか?」


 直球で聞いてみた。


 すると、


「この道具は精霊具と言います。詳細は控えますが、名前の通り精霊の、能力の力を籠めて作ることが出来ます」


 ということは、この道具にも嘘発見器にも元の能力者がいるのか。

 というか、だったらこの精霊具を量産すれば誰でも元の能力者と同じように能力を使えるってことだよな。……元の能力者の立場がないな。


「そんなことはありませんよ。精霊具に籠められる能力も一部なので、元の能力者の方が格段に能力が強いですから。……それに、能力を籠める人の実力もいりますから」


 へぇ……って、あれ? 俺さっきの声に出してたっけ?


「いいえ、出してないですよ」


 ハクさんが淡々と答える。


 え?

 じゃあ何で会話できてんの?


「それはですね、私があなたの言っていた、嘘発見器の元となった能力者で、本来は心を見透かすことが出来るほどの能力だからですよ」


 えぇ~!?

 マジでッ!?

 嘘発見器でもスゴいと思ったのに心を見透かすってもはやチートレベルじゃん!  

 ってことは最初から筒抜け?


「はい、バッチリ聞こえてます」


 ハクさんが無表情なのに、少しどや顔に見える。


 だからエレナさんは足早にギルドから出ていったのか……。


 考えているとセイヤの前で、少しだけ顔を暗くしたハクさんがいる。

 そんな変化にも気付かずに、


 あぁ~!

 恥ずかしい!

 なにかわいいとか言ってんだよ俺!

 スゲー恥ずかしいわ!


 そんな恥ずかしい心の声を聞き、ハクさんは口を半開きにし、ポカンとしていた。

 今回はその様子に気付くことができた。


「ん? どうしたんですかハクさん?」


 心配で声をかける。


 ハクさんは、顔を引き締め聞いてきた。


「私が怖くないんですか?」


 怖い?

 なんで?


「何でって、勝手に人に心を覗かれるのは誰だって嫌じゃないですか!」


 ハクさんが怒ったように言ってきた。


 あぁ、なるほど。そう言うことね。


「ハクさんの言いたい事は分かりました。でも、僕は怖くないですよ」


「どうしてそんなことが言えるんですかッ!」


 どうしてって?

 それはハクさんが優しいからですよ。


「私が……優しい?」


「はい。この短い時間でも分かりました。ハクさんは優しいです。そんなハクさんは、無闇に人の心を覗いたりしないと僕は思います。それなのに、心の声が聞こえているということは、その能力が永続的に、能力者の意思とは関係なく発動しているからでしょう?」


 ハクさんに問いかける。


「……どうして分かったの」


 俺の地元にそういったことで悩んでいる人を何人か見たことがありますから(ラノベで)。


「それに、そういう能力を持った人は周りからも除け者になるでしょう。それなのに、ハクさんは優しい。いろんな苦労をしてきただろうけど優しい。これはスゴいことだと僕は思います。だから、そんな優しいハクさんを僕は怖がったりしない」


 俺の持論はめちゃくちゃかもしれない。間違っているかもしれない。

 でも、俺はハクさんを拒絶したりはしない。

 それだけは自信を持って断言できる。


 その言葉を聞いたハクさんが涙を流し始めた。


「そ、そんなことを言ってくれる人は今まで一人もいませんでした」


 まぁ、僕はこっちの人とは価値観が違いますからね。


「僕はこれからハクさんの前では嘘はつきません。裏切ったりもしません。だから安心して心を読んでください」


 ちょっと大袈裟なことを言った気がするが、俺はこの約束を守るつもりだ。

 俺も、人に裏切られる辛さは知っているからな。


「うわぁぁぁん!」


 その言葉を切っ掛けに、ハクさんが本格的に泣き始めた。


 その声に気付き、周りの人達もこっちを見始めた。


 でも俺は、ハクさんが泣くのを止めようとはしなかった。

 思う存分泣けばいい。そうしてこれまでの辛い思い出とは別れよう。

 これからは、ハクさんが悩まなくてもいいように、俺が友達でいるから。


 だから、これからは泣かないように、ここで全部出しつくそう。

 そうすれば、後は笑うだけだから。


 その言葉に、ハクさんは泣きながらも満面の笑みを見せてくれた。


 やっぱり笑った方が可愛いな。


 そうして、ハクさんは笑いながらも泣き続けた。

 

 泣き止むまではあまり時間がかからなかった。

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