入国!
王都の壁がすぐそばに見える。
俺達は今、壁の真下に来ている。
壁を見上げる。……首が痛い。
進撃の○人の壁みたいなものだ。
俺が壁を見上げていると、
「では、入国の手続きをしてきますので待っていてください」
エレナさんが、入国の手続きをしに近くにいた兵に話しかけにいった。
さすがメイドさん。手続きが手慣れてますね。
あっという間に手続きを終えたエレナさんが戻ってきた。
「入っても大丈夫なので行きましょう」
「分かりました」
エレナさんの後に続くように、王都ロードラへ入国した。
「うわぁ」
そこには、出店や人でごった返していた。
「こっちです」
エレナさんが、足はやに歩き始めた。
俺は、エレナさんを見失わないように必死に後に続いた。
「何処に向かってるんですか?」
エレナさんの背中に投げかけた。
「ニーナ様のいる学園です」
エレナさんは、振り返りもせず答えた。
早速学園に行くのか。
いったいどんな所なのか……。
「後どれくらいで着くんですか?」
絶え間ない人並みにイラつきながら尋ねる。
「学園は街の中心付近にあるのでまだまだです」
エレナさんが、感情の籠らない声で呟いた。
マジですか……そこまでこの人並みはそのままですか。
「……はぁ」
先の事を考えるとため息が出る。
それに気付いたエレナさんが振り返った。
「ため息を吐かないでください。もう少し行けば貴族街なので人も少なくなるはずですから。というか、そんなことも知らないんですか」
エレナさんが少し笑っている気がする。
弟を見るような優しい顔だ。
それに、毒をはいてるけど、そこはかとなく優しさを感じられた。
このままどんどん優しくなってください。
それに、貴族街なんてあるのかよ。
きっとラノベみたいなのと同じだろうな。
どうせイヤな貴族とかもいるんだろうな……テンプレだな!
二人は暫く無言で歩き続けた。
「もうそろそろ貴族街です。いないとは思いますが、人に見つからないように気を付けてください。あなたの格好は目立ちますから」
何で人に見つからないようにしなければいけないのか知らないが、俺の格好が目立つのは同意する。だってボロボロの制服だぜ! 唯でさえあっちの世界の制服でこっちからしたら目立つのに、さらにボロボロって、ボロボロってめっちゃ目立つじゃん!
「ここから貴族街です。走っていきますよ」
「あ、はい!」
考え事をしていたらいつの間にか周りから人がいなくなっていた。
見つからないように早く行こう!
◆
貴族街に入ってからはあっという間だった。
誰にも見つかることなく移動することが出来た。
「もうすぐ学園です。驚かないでくださいね」
エレナさんがニヤけながら言ってくる。
ん? 驚く? どういうことだ。
何か驚くような物でもあるのか?
「着きましたよ」
エレナさんの声で下げていた顔を上げる。
「……!? なにこれ」
そこには、
「デカイ木?」
王都の壁が小さく見えるほど、とても大きな木が学園の中心に生えていた。
「そう。ここが、精霊樹が生える学園です!」
エレナさんが、得意気な顔で言った。
俺はそんな言葉が聞こえないくらい、精霊樹に目がいっていた。
ただただスゴい! その一言だ。
こんな所で生活するなんてワクワクするな!
それだけが俺の心を占めていたのだった。
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