戦いの狼煙
草原から村に帰るまで10近くかかった。
まだ正午までは時間がある。
「遅かったな」
おっさんがわざわざ門の所で待っていた。
「ごめんごめん♪ ちょっと新しい技の研究をしててさ」
おっさんは納得のいったような顔をした。
「そういう事なら仕方がない。早く入ってくれ、魔族が来るまで1時間もないからな」
「りょーかい!」
おっさんと肩を並べながら門を通り抜ける。
昨日は見なかった村人も今日はちらほら見える。
平和そうな村だ。後1時間もしない内に魔族に襲われると思うとゾッとする。
「とりあえずお前は村長の家で飯を食ってこい。食わないとやってられないからな」
あぁ……おっさんの優しさを感じる。
でも、野菜ばっかりはちょっとねぇ。
「……ありがたく食わせてもらうよ」
やっぱり人の善意は断れないねー。
「食い終わったらさっきの門の所へ来てくれ」
「分かった。なるべく早く食べるよ」
そう言って村長の家へ走っていった。
村長の家で食事を済ませ、門に着いたのが40分後だった。
ちなみにやっぱり野菜ばっかりでした。
少し時間が掛かったので、申し訳なさそうにおっさんの元へいく。
「ごめん、遅れたわ」
「気にするな。まだ魔族は来ていない」
本当に気にした素振りを見せない。
おっさんが、門の外の、森林を睨み付けている。
「俺以外の4人は既に各方角の配置に着いている。モンスターは何処から来るか分からん。十分に注意しろ」
襲撃のため、村人は避難させられている。そんな二人だけの空間に緊張が走る。
「あぁ、気を付けるよ」
二人の空間に沈黙が漂う。
二人ともが森林を見つめている。
ドドドドドッ!
「なんだ?」
地響きのようなものが聞こえる。
「来たぞ! モンスターだ!」
おっさんの声に反応し、森林の見る。
すると、砂ぼこりを舞わせながら大量のゴブリンが走って来ていた。
「前より数が増えている。それにオークもちらほら混じっている」
おっさんが顔をしかめながら言っている。
「それは大丈夫なのか?」
「分からん。しかし、やるしかないだろう」
おっさんの言葉に俺も覚悟を決める。
「よし! やってやろうじゃないかッ!」
砂ぼこりが、戦いの始まりを告げる狼煙のようにゆらゆらと舞い上がっていった。
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