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51「お披露目」【挿絵あり】
知り合いのお寺に来た、大学生から聞いた話。
冬のある時、彼は一羽のハトを拾った。
道端にうずくまっており、どこかケガでもしたのでは、
と動物病院へ運んだ。
「別にどこも何ともありません。
ただ、いきなり寒くなったので
びっくりしたのでしょう」
診てくれた獣医さんはそう言ったという。
当日は急激に寒くなった日で、その年一番の
冷え込みだった。
しかし、そんな理由で動けなくなっていいのかと、
半ば呆れながらハトを自宅へ連れ帰る事にした。
「まあ1週間もすると元気になったし、
それで放してやったんですが」
それからしばらく後、彼が自室で寝ていると
ベランダから男女の声が聞こえてきた。
“ここだよ”
“でもどうして?”
“一応僕がお世話になった人だし”
“変な人ねえ”
等と話している。
「でも、僕の部屋というか住んでいた場所は
マンション、それも10階で」
ただ、会話の内容からすると、こちらに害を
加えるような悪意は感じない。
彼は恐る恐るカーテンを開けると、そこにはつがいと
思われる2羽のハトがいた。
「2匹で僕の顔を見ていたんですが、
すぐに同時に飛んでいってしまいました」
ちなみに、彼自身には恋人はおらず、
あれはお披露目だったのか自慢だったのか、
未だに判断に迷うそうである。





