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37「鶏肉」【挿絵あり】
40代のサラリーマンから聞いた話。
彼がいつも通り通勤のため道を歩いていると、
カラスが小さな野鳥を襲っている場面に
出くわした。
「コラッ!」
思わず声を上げて、カバンを振り回してその場へ
乱入し、2匹とも別々の方向へ逃げた。
野鳥を助ける事が出来たものの、考えてみれば
カラスは食事をしようとしていただけなのに……
と、気の毒な事をしたと思い直した。
「それで、弁当を開けて、ちょうど鶏肉と
ミートボールが入っていたので、それを」
その場に置いて立ち去ったという。
少し離れてから振り返ると、先ほどと同じか
どうかはわからないがカラスが1匹、それを
ついばんでいるのが見えた。
仕事が終わってその日の帰り。
そういえばここで今朝……と思い出しながら
歩いていると、“オイ”と声をかけられた。
見上げると、塀の上に腰かけるように、
6、7才くらいの少年が座っていた。
「今回は許してやる」
そう言うと、スーパーのレジ袋を投げてよこしてきた。
足元に落ちたそれは、何かがギッシリと詰まっている
ようだった。
何だこれは? と思って塀の上に視線を戻すと、
そこには1匹のカラスがいて、そのまま羽ばたいて
闇夜へと消えた。
「その子、普通の洋服を着ていたんですけどね」
レジ袋の中には、クルミが10個ほど入っていた。
少し肌寒くなってきた、秋口の頃だったという。





