92「正体」
・不明な存在について
お寺で修行している知り合いの話。
一時、『くねくね』という怪談が流行った事が
あった。
有名な都市伝説であり、名作怪談の定番の
一つでもある。
ある田舎で幼い兄弟が家の中にいたが、ふと兄が
窓から田んぼの中で、くねくねと踊っている人を
見つけた。
弟もそれを見つけるがよく見えずわからない。
兄にたずねると、『わからない方がいい』と
答え―――
その後、兄は精神を病んでしまい正体はわからず
じまいとなる……そんな物語だ。
「正体がわかってしまったから、そいつに
祟られてしまったのか」
「見ている時間が長かったから、兄だけ
やられてしまったのか」
そう知人と同僚たちとで意見を交わしていたが、
「妖の類だったら、『見た方がおかしくなる』
というのは妙なんだよなあ」
そんな事を言いながら、彼らの師が話に
入って来た。
「と言いますと?」
知人が聞き返すと、
「本来、妖や化け物ってのは―――
正体を見破られたら終わりなんだ。
だから兄が『わからない方がいい』と
言った……
つまり正体がわかったと言っているのに、
兄の方がおかしくなってしまった、というのは
ちょっと解せないんだよな」
昔話の定番であれば―――
おかしくなる・やられるのは見破られた妖の方で
あって、
正体がわかった兄の方がやられてしまった、
というのは妖怪話の横紙破りなのだという。
「確かに、見ただけでヤバい妖もいないわけじゃ
ないんだが……
『じっと見つめさせる』『長い間集中させる』
必要があったりと、すぐにどうこうなるって
わけでも無い。
そういう意味じゃ、その『くねくね』とやらは
ちゃんと手順を踏んでいるとも言えるが」
遠目でくねくねと動く何か、というのは
『なんだありゃ』と好奇心をくすぐるし、
その正体を見極めるため、観察する事も
考えられる。
「頭を狂わせる事が目的で、やっているって
事ですか?」
「ただそれだと効率が悪過ぎる気もする。
人間を狂わせようってんなら、一人一人
やるっていうのは気が長いし―――
仲間を増やそうというのも考えられるけど、
それもやっぱり効率がなあ」
そこで師匠は一息ついて、
「あとは、『そういう役割』を背負わされている
場合だな。
そこの土地の神様か何かが『踊り狂う』役目の
眷属か何かが必要で……
で、それは一体だけでいいんだが常に必要、
って理由なら、次々とバトンタッチさせて
いるとも考えられる」
兄はそれを理解し、同時に弟はそこから
遠ざけようとしたのなら―――
『わからない方がいい』と言う事で、弟に
バトンタッチさせないようにした……
「とするなら、いろいろつじつまは合うんじゃ
ないか?」
弟子たちはう~んとうなっていたが、その中の
一人が、
「でもどうして、『そういう役割』が必要
なんでしょうか」
「さてなあ。
それに神様の考えなんて、それこそ理不尽で
わからんものだろうよ」
そう投げやりに言う師匠に、今度は誰も
質問を続けなかった。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
『百怪』は日曜日の午前1時更新です。
深夜のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。
(;・∀・)カクヨムでも書いています。
こちらもよろしくお願いします。
【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330649291247894
【指】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330662111746914
【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【毎日更新中!】
https://kakuyomu.jp/works/16817330666162544958





