32「開かずの間」【挿絵あり】
・立ち入り禁止の部屋について
お寺で修行している知り合いの話。
開かずの間、という言葉がある。
封印か監禁を思わせる、ネガティブな印象が
あるが―――
「人が入らないようにする、という意味では、
合っているんだが」
彼が同僚たちとその事について話し合っていると、
師がその話の輪に加わった。
神社などで、四方を釘で板囲いにしている
部屋を用意している場合があるというのだが、
「……?
それじゃ中に入れませんよね?」
「人は、な」
師匠の話によると、怪談とかでは定番だが―――
誰も入る事の出来ないその部屋の中から、
足音が聞こえたり、声がしたりするのだという。
「神か幽霊か知らんが、『そのため』の
部屋って事なんじゃねぇか。
だから生きている人間を入らないように
している、と」
もちろん、掃除や手入れを行う場合は、その囲いを
解いて行うらしいのだが、
「それは大丈夫なんですか?」
彼が聞くと、師が眉間を人差し指でかきながら、
「山に立ち入ってはいけない日とかあるように、
入っても大丈夫な日があったとは聞いている。
逆禁足日? みてーなものか」
その説明に全員が苦笑していたが、
「……それ以外の日に入ると、どうなるんで
しょうか」
そこで師は両目を閉じて、
「寺だか神社を解体する時、そういう部屋が
あったって話は聞いた事がある」
師の話によると、そこはすでに経済的な理由で
売られたそうなのだが、
隠居していた先代から解体する時も、
『その部屋は特定の日以外絶対に立ち入るな』
『壊す場合は周囲からていねいにやってくれ』
と言われていたという。
しかしそもそもが経済的理由で手放しているの
だから、解体にそこまで気も使えず、
事情を知らされていない業者が、計測機器を持って
その部屋に入ってしまったらしい。
「らしい、というのは?」
「その部屋に機械や道具だけ残っていたってさ。
山奥だったんで急に帰るとも思えないし、
行方不明って事でちょっとした騒ぎになった
ようだ」
それを聞いた先代が慌てて飛んできて、
当代をしかりつけ、その後は見張りつきで
解体作業が行われたとの事。
「え……
行方不明になった人ってそのままですか?」
「それが、解体が全て終わった日に見つかった
らしい。
『その部屋』があった地面に、いつの間にか
座っていたんだそうだ」
当人に事情を聞いたが何も覚えていないそうで、
行方不明になっていたのは三日ほどだが、健康に
異常はなかったという。
「一応、とがめただけで―――
それで返してくれたんですかね」
彼が何気なく問うと、
「それとも、もういる場所が無くなったんで……
とか?」
師匠の答えに、誰も返さなかったという。
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