43「言葉」【挿絵あり】
・意図の伝え方について
お寺で修行している知り合いの話。
当時、犬や猫の言葉がわかるという
ジョークグッズが流行していたが―――
どこまでの精度でわかるのか、雑談の中で
出てきたという。
「怒っている時とか怖がっている時とかなら、
声の抑揚も全く違うし……
そういうので判別しているんじゃないか?」
彼がありきたりの説明を話していると、
師が会話に入ってきた。
「まあそう複雑な事でなければ―――
伝えたい事なんて単語で済むんじゃ
ねぇか?」
すると師は、先日あった事だが、と話し始めた。
ある若い夫婦の赤ちゃんが突然泣き出し、
お腹も減ってないし、熱も出ていないのに……
と、途方にくれた。
救急車を呼ぼうとしたところ、飼っていた猫が
やたら鳴き始め―――
同時に、猫の言葉がわかるというグッズが
起動してメッセージを表示していた。
『せなか、せなか』
もしやと思い、赤ちゃんを抱き上げて
背中を確認したところ―――
どこから入ったのか蛾のような虫が
潰されていたという。
それを取り除いて拭くと、赤ちゃんはそれまで通り
スヤスヤと寝息を立て始めた。
「猫が、人間の言葉や状況をわかってて、
それを伝えようとしたんですかね」
すると彼らの師匠はうーん、と首をひねり、
「どうだろうな。
人間の方がわかろうとして、何とか情報を
わかる形にしただけかも知れんし」
言葉も意味も解釈も―――
わかろうとしなければどうにもならんからな、
そう師は付け加えたという。
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『百怪』は日曜日の午前1時更新です。
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