30「集まる」【挿絵あり】
・環境について。
お寺で修行している知り合いの話。
近場にある料理店が、また変わったという
話で、彼は同僚と語り合っていた。
何でもそこは、以前は立ち食いそばの店だった
ようだが―――
彼が知っているだけでも、カレー、整骨院、
お菓子の安売り店、リサイクルショップと……
ここ5、6年で店舗がころころ変わっていた
らしい。
「何かあるんですかね、あそこ」
「まあ確かに入れ替わり立ち替わりは
激しいけど、このご時世だし」
するとそこへちょうど師匠が通りかかった。
何気ない日常会話のつもりで、彼らが
その店の事を話すと、
「あー、あそこか……」
と、何か事情を知ってそうな答えが返ってきた。
聞くと、師匠もその店舗を持つ不動産から、
一度相談を受けていたという。
やはりいわく付きなのだろうか、弟子たちが
興味津々でたずねると、
「そもそも、条件というものがある。
例えば、寺や墓場の跡地だったとしたら、
住みたいと思うか?」
そこにいた彼らが、否定まではしないが
微妙な顔をすると、
「長い間、信仰で清められた土地だ。
また先祖代々を供養する目的の地だから、
地盤も安定しているところが選ばれている」
なるほど、と全員がうなずく。
「また震災、津波に遭った土地も、
ある意味『清められた』場所になる。
これ以上は無い力で『祓われた』場所
だからな」
そういうものなのか、と聞いていると、
じゃあ一番、商売繁盛になるところは、
と彼が聞くと、
「たくさん人が死んだ場所だ。
特に戦場や戦での激戦地は、別の意味で
『人を呼ぶ』」
そういう場所は特に人の出入りが激しく、
商売をするだけであれば、最高の立地条件
なのだそうだ。
「それで、件の店は……」
と誰からともなくたずねると、
「言えねぇよ」
師の答えに、まあ個人情報でもあるし、
そもそも他人の因縁や業は話せないだろうと
みんなが納得していると、
「最近は、守秘義務とかうるさくてな……」
そこで皆、世知辛い現実に引き戻されたという。





