第二十六話 禁じていた 漫才
映画の撮影クビになって、地元の小学校で、紳助さんと漫才をしているところです。
瀬戸内海の小さな島にある小学校で、そこの子供達と先生が見守る中、俺としまだ 紳助さんとで、漫才を披露することになった。紳助兄やんは、もう漫才はしないと決めていたので、緊張のせいか顔がヒクついてる。
「始める前からそんなんで、どうするんだ。テレビで放送する訳でもないし、ウケなくても スベっても大丈夫だから、気楽にいこう」と、俺。
「漫才久しぶりだから、凄い緊張する。しかも、涼はんと一緒ですし。ちゃんとしなくては」と、紳助さん。
「俺はさっき、自己紹介したから、紳助兄やんが、おもしろおかしく自己紹介して」
「おもしろおかしく自己紹介!」
「頑張って!」
「しまだ 紳助と言います」
「なんでやねん!」と、俺。
「フフッ」と、紳助さん。
「しょうもない自己紹介だなー。名前しか、伝えられてない。じゃあ、自己アピール。頑張って」
「芸能界では、だいぶ上の方にいます。お金も、持ってます」
「はっ、自慢。どうせ俺は、お金持ってねえよ」
「あっ じゃあ、涼はんさえよかったら、お金は俺が用意しますよ」
「マジか!気持ちは嬉しいけど、今渡されても、奪われるだけだ。お金は、欲しいけどね」
「奪われるか。涼はんさえよかったら、うちに来ませんか?部屋ぐらい、いくらでも用意出来ますよ」
「それだと、紳助兄やんに、迷惑がかかる。俺から全てを奪った奴らが、また奪いに来る。それに念能力者になるまでは、逃げたと見なされる訳には、いかないんだ」
「涼はん…」
「しょうがない。もともと、諦めてしまっている人生だ。最低最悪の人生。念能力者になるまでは、我慢 苦労 辛抱だね。なんでやねん!」
「なんでやねんの使い方が、違います。わざとだとは思いますが。涼はんが念能力者になるのを、待つしかないんですね。涼はんの力に、なりたかった!」
「なんでやねん!」
「フフッ」
「まあ 俺の側の人間達は、それぞれ這い上がっているから、そんなに被害を受けはしないだろう。もちろん紳助兄やんも、ちゃんと這い上がっているしね」
「そう言っていただけると、嬉しいです。ありがとうございます」
「うん。まぁ 全体的には、作戦通り。俺の側の人間達が、這い上がり、俺は落ちぶれてギリギリの生活で、低すぎてクソ大和田とその側の奴らが、俺がどこで何をしているかわからなくなる。あとは俺が、念能力者になるか 死ぬまで生きるかだね」
「作戦通りかもしれないけど、涼はん…」
「そんな悲しい顔するなよ。東京に戻って、孤児院を出て、いつか再び、紳助兄やんに会う時は、念能力者になって、本当の自分『ドン リュシフェル』になって、ちゃんと紳助兄やんの利益も、考えられる男になる!」
「そんなに、頑張らないようにして下さい。涼はんがこんな時に、俺は何も出来ないなんて!」
「なんくるないさー、心配ないさー」
「心配です!」
「うおっ、マジだ!こういう時は、コマネチ!」
「フフッ」
「おしっ、上手くいった!まぁ 紳助兄やんが、死ぬまでには、何とかしてみせるよ。俺は昔からずっと、早死にの家系だからね。多分、寿命は俺の方が短いだろうしね。仮に、紳助兄やんが先に死んだ場合は、俺を地獄に呼んで欲しい。俺は、長生きしたいなんて、思ってないし」
「かしこまりました。俺、地獄行きですか?」
「当たり前だー!と言っても、最後の審判を受けるだげだよ。その後は、天国へ行けるだろうね」
「俺、天国行けるとは、思ってなかった」
「もう一生食べていけるお金があるなら、あとは後輩芸人にチャンスをあげることと、しっかり生きるだけだね」
「かしこまりました」
「じゃあ、漫才終了です。どうも、ありがとうございました」
すると、子供達と先生から、それなりの拍手を頂いた。
「なっ、紳助兄やん、漫才は2人で考えやるものだし、悪くないだろ」と、俺。
「はい!楽しかったです。ためになりました」と、紳助さん。
こうして、久しぶりの漫才も、全部が全部という訳ではないが、ちゃんと出来た。このあと、まだ お昼前なのに学校から、出掛けることになる。さて、どうなることやら。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。




