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ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
78/85

食事

シャワーを浴び、ソファーに腰を落とす。

母が、乳癌。

まさか、そんな事が起こるとは。


息を吐く。

初期段階である故、心配は不要である事は理解している筈だが、頭にこびりつく〝乳癌〟という単語が、今までにない緊張を覚えさせる。


LINEが来た。

釣井かららしい。

一本の動画と〝ファイト!〟と書かれたうさぎのスタンプだ。


動画を再生する。

日本語を話している様に聞こえる猫を集めたそれらしく、完全にそうとしか聞こえないものや、テロップでの強引な誘導を疑わざるを得ない怪しいものまで、クオリティーは様々だった。


テレビを点け、放火のニュースが取り上げられている中、番組表を開く。

その画面を眺めていると、再びLINEの着信音が鳴った。

さっきのはまた誤送信だったのかと思ったが、今度は渡仲からだった。


画像らしい。

見てみると、赤い水着姿の女が海辺でポーズを取る、六枚のそれだった。

これは一体、どういうメッセージなのだろうかと考えていると、すぐに〝この娘かわいくね? 俺が今推してるグラドル!〟と表示された。

二人がそれぞれの方法で僕を励まそうとしてくれているのだろうか。


ただ、どう返せばいいのだろう。

〝可愛いですね〟だと可愛いと思ってると思われるのが恥ずかしいし、〝ありがとうございます〟だとありがたいと思ってると思われるのが癪だ。

結果、既読スルーという選択を取る事にした。


アナウンサー達がお辞儀をし、番組がクイズのそれに切り替わった時、今度は母からLINEが来た。

また病院の食事を撮った画像だった。

相変わらず質素だなと思ったと同時に、このルーティーンは一体何なのだろうかと疑問が湧く。


それから、〝夜ごはんはこんな感じです〟というメッセージが追加されると、LINEによる母の食リポが始まった。


みそ汁は味が薄いです。これぞ病院食って感じ。

煮物は野菜があんまり煮えてなくて、どれも素材そのものの味です。でも、しいたけで巻き返しました。

何だか学校の給食を思い出しました。

母さんが病院のご飯作ってあげたくなりました。


数分毎に報告が届く。

今時の女子高生の様にスマホ片手に食事をしているのだろうか。

〝実況はいいから、食事に専念して下さい〟と返す。

すると更に数分後、返信が来た。

〝お父さんにも同じ事言われた〟というメッセージに、涙を流して笑う絵文字が添えられている。

父にも同様に食リポを行っていたらしい。


その時、インターホンが鳴った。

玄関に向かい、魚眼レンズを覗くと、僕はその光景に驚いた。

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