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ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
73/85

封筒

 「ハッピバァ~スデェ~イトゥ~ユ~」

歌いながらショートケーキを持って厨房から出て来た店員に、釣井は感激する。


 「ハッピバァ~スデェ~イディ~アッ、ス~ちゃ~ん! ハッピバァ~スデェ~イトゥ~ユ~!」

歌い終えた店員と参田が盛大に拍手する中、釣井は〝28〟の形のキャンドルに付いた火を吹き消した。


 「おめでとうっ!」

店員と参田は改めて拍手する。


 「はい、スーちゃん。プレゼント」

 「ありがとうっ!」

店員は腰に巻いたエプロンのポケットから、星柄の包装紙で封筒の形にラッピングされたものを取り出し、釣井に渡した。


 「現金?」

渡仲の言葉に大笑いした店員は、「まぁ、それが一番間違いないし、手取り早いよなっ!」と返す。


 「あっ! 嬉しいっ!」

包装紙を開けた釣井はその中身に感激した。

カフェのギフト券らしい。


 「アタシ、このお店、大好きなのっ!」

釣井は手にしたギフト券を眺めながらはしゃぐ。


 「あら、良かったぁ」

 「すごい嬉しいっ! ありがとう、ゲンちゃんっ!」

 「いえいえ」

 「じゃあ、私も」

参田はカバンに手を入れる。


 「はい、スーちゃん。お誕生日おめでとうっ!」

参田が取り出したのは、茶封筒だった。


 「ありがとう、先生」

 「中、見てみてよ」

 「まさか、今度こそ現金?」

渡仲は釣井が茶封筒を開けるのを興味津々で見届ける。

すると、大笑いし始めた釣井が中身を抜き取ると、それは店員が彼女に渡したものと同じ店のギフト券だった。


 「おじさん二人、被ったのかよっ!」

 「参ちゃんも?」

渡仲と店員も大笑いする。


 「いやぁ、ごめん、スーちゃんっ! まさか、ゲンちゃんも同じものだと思わなくて」

 「いいのいいの、アタシこのお店、大好きだからっ! あと、二人被ったのが面白いしっ! ホント、息ぴったりだねっ!」

釣井は笑いながら言う。


 「でも、袋のお洒落さは俺の勝ちだなっ!」

店員は大笑いする。


 「ホントだよなっ! 茶封筒はないよなっ! 味気なさ過ぎるだろっ! デザイン性ゼロじゃんっ!」

 「そうかな? あっはっは」

渡仲にも笑われた参田は照れた様に返す。


 「あっ、すみません、何も用意してなくて」

 知らなかった故に仕方ないが、マナーに則って詫びておく。


 「いいのいいの、気にしないで」

 「近い内、渡します」

 「そんなそんな」

マナーに則ってそう返したらしいが、あまり強く引き止めている様には見えない。


 「じゃあ、俺と汰駆郎は愛情をプレゼントって事で」

 「買う気ないじゃん。あんたは何か買ってよ。あんたの愛情はいらないわ」

店員は大笑いすると、「いやぁ、スーちゃんが二十八歳かぁ」と、呟く。


 「何だか、感慨深いね。小さい頃から知ってるからね」

参田は微笑みながら返す。


 「でも、若いよねぇ」

 「うん、戻りたいよねぇ」

それから全員でケーキを食べ終え、お開きとなった。


 「じゃあね、ゲンちゃんっ!」

 「またいつでもおいでねっ!」

 「うんっ! ありがとねっ!」

 「おうっ! 気を付けてっ!」

釣井は店員とハイタッチと交わし、店を出る。

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