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ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
72/85

特別

 「おっ! 久し振り、参ちゃん」

先頭を歩き、店の引き戸を開けた参田は店員に、「久し振り、ゲンちゃん」と、手を振り返す。


 「ゲンちゃーんっ!」

 「スーちゃーんっ! 誕生日おめでとうっ!」

 「ありがとうっ!」

釣井と店員はハイタッチを交わす。


 「覚えてたんだね」

 「そりゃ、可愛い姪っ子ちゃんの誕生日だもん。覚えてるよ」


 「うぃっす、おっちゃん」

最後に入店した渡仲が店員に声を掛ける。


 「おっ、久し振りだな、唯武樹ぃ! 元気だったか、おいっ!」

 「おう、まぁな」

 「最後に顔出したのいつだっけ?」

 「おっちゃんが松葉杖の時だったよな」

 「ああっ!」と、釣井と店員は声を揃える。


 「おっ、スーちゃんの彼氏」

店員は僕を見て言った。


 「えっ、お前等、付き合ったの?」

渡仲が丸くした目で僕と釣井を交互に見る。


 「いや、違うからっ! ゲンちゃん、変な事言わないでよっ!」

釣井に言われた店員は「あら、違うのかい」と、笑って返す。


 テーブル席に案内されると、何となく事務室と同じ並びで座った四人それぞれの手元に、お通しらしい茄子の煮浸しと置かれた。


 「それでは、アタシのバースデーを祝してっ!」

「乾ぱぁーいっ!」という声とジョッキを合わせる釣井と参田に倣う。

そして店員も、ちゃっかり用意していたらしい自分のジョッキで加わる。


 「何で本人が仕切るんだよ。てか、何で店員も吞んでんだよ」

渡仲は言う。


 「今日はアタシの誕生日だから、いいもん……」

「ねー!」と、釣井と店員は顔と声を合わせる。


 「ビールが丁度一人分余っちゃったからしょうがないもん……」

店員の掛け声で二人はまた、「ねー!」のくだりを行う。


 「いや、それはおっちゃんのさじ加減だろ。おっちゃんがわざわざ自分用に注いだんだろ。〝余っちゃった〟って何だよ。何が〝丁度〟だよ」

渡仲にそう言われた店員は大笑いする。


 「いやぁ、良かったぁ、スーちゃんの誕生会の開催場所にまたここが選ばれてぇ」

 「そりゃ、やっぱりゲンちゃんの料理食べないと年取れないからね」

 「じゃあ来ない方がいいだろ」

 「分かってないなぁ、唯武樹ぃ。年は取りたくないけど誕生日は好きなの」

店員は更に大笑いする。


 「スーちゃんが二十八歳かぁ」

呟いた店員に釣井は「年齢までよく覚えてたね」と返す。


 「そりゃ覚えてるよ。何だか、あっという間だよね。あんな小さかった子が」

「そうだよねぇ」と、参田は返す。


通常より量が多いらしい料理。

数種類の食材がプラスされているらしい料理。

アレンジが加えられているらしい料理。

サービスで用意された、そもそもメニューにはないらしい料理。

店員は釣井の幼少期の話に時折加わりながら、特別仕様らしい料理をテーブルに置いていく。

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