疎外
それから、二人の女が渡仲と同い年という事が判明した。
尚更、アウェーだ。
自分だけ五歳も上なのは恥ずかし過ぎる。
僕が完全に浮いている。
彼女が全然できなくて必死な奴みたいになってるじゃないか。
苦痛だ。
「そうそうそう、二人共、俺とタメだったよね」
知ってたのかよ。知ってなら言えよ。
予め二人の年齢を把握していたら、参加を断る理由として充分だった筈だ。
帰りたい。
「二人は看護師なんだっけ?」
二人の女は、お好み焼きとシーザーサラダをそれぞれ小皿に取り分けながら、渡仲の問に〝そうでぇーす〟と、答える。
「やべぇ、白衣の天使じゃんっ! そそられるねぇ! こんな可愛い娘達に診てもらったらたまんねぇよっ! なっ!」
嫌なパスが来た。
とりあえず、笑っておく。
「何科か当ていい?」
「うん、当ててみて」
「当てたら何してくれる?」
そう言われた二人の女は顔を見合わせる。
「じゃあ、ほっぺにチューして」
そう言われた二人の女は、「いいよ」と頷いた。
こんな下品なご褒美の提案に承諾する彼女達も、やはり相当な陽キャだ。
肌の露出度はチャラさに比例しているらしい。
「じゃあ、麻酔科っ!」
「ブーッ!」
何故、真っ先に麻酔科が出たのだろう。
「泌尿器科っ!」
「ブーッ!」
「放射線科っ!」
「ブーッ!」
何故、大穴ばかりを狙うのだろう。
「他に何あったっけ」
もうキスをされる権利はない筈だが、渡仲は箸で切ったお好み焼きを口に入れ、〝んー〟と考える。
「ちょっ、分からん」
「正解は……」
「あっ、ちょっと待ってっ! 外科っ!」
「あっ、惜しい」
「惜しい? えっ、分からんわ。マジでギブ」
「正解は、内科でしたぁ!」
二人の女は、声を揃える。
「うわ、内科かぁ! 畜生っ……」
外科が出て内科が出ない事があるのか。
「ところで、お兄さん二人はどんな娘がタイプなの?」
「そりゃ、目の前にいる二人の姫ちゃんに決まってっしょ」
渡仲の即答に二人の女は大笑いする。
「お兄さんは?」
僕にパスが来た。
面倒だ。
少し考え、「家庭的な人、かな」と、答えておく。
「湘南乃風かよ、おいっ! 美味しいパスタ作ったろかっ!」
渡仲がそう言うと、二人の女は手を叩いて笑った。
それから、陽キャ三人がお酒を数杯おかわりしながらトークを繰り広げ、そのまま〝たけのこニョッキ〟とやらが始まり、当然、僕も加わる羽目になった。
苦痛だ。帰りたい。
合コンの空気と陽キャの雰囲気が嫌いである事を差し引いても、このゲームの面白さが分かりかねる。
尚更、苦痛になってきた。尚更、帰りたくなった。
だが、三人が陽キャ過ぎて咳き込む隙間がない。
苦痛だ。帰りたい。




