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ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
52/85

同類

時刻は十八時五十五分だった。あと五分。

渡仲はもう店内にいるのだろうか。


 〝神風〟の文字に向かって、思わず息を吐く。

合コンか……。

僕はこれから、合コンするのか……。

合コンをしなくてはならないのか……。

憂鬱だ……。憂鬱過ぎる……。

俯き、今度はアスファルトに向かって息を吐く。


 何故、こんな目に遭わなくてはならないのだろうか。

中止にならないだろうか。


 聞き覚えのある、男の話し声が遠くからゆっくりと近付く。

女の笑い声が覆い被さるそれの方を見ると、その光景に、目を疑った。


 袖を捲った黒いスーツジャケットとダメージジーンズを身に着け、茶色の大きなサングラスを掛けた渡仲が、両サイドを歩く女の肩を掴みながら近付く。

陽キャやチャラ男を絵に描いた様なその光景を、思わず凝視する。

彼が何やら自慢話をしているのが、その得意気な表情から見て取れる。

 

 「おー! 汰駆郎っ! 来てたのかぁ!」

この男、マジか……。


 「ここ来る時、この娘達ナンパしてさぁ、で、よく見たら二人、これから合コンする娘達だったわけ」

どんだけ陽キャなんだよ。

どんだけチャラ男なんだよ。

合コンの会場に向かう道すがらナンパをしようとする精神に、呆れた気持ちと驚愕で言葉が出ない。


 「ちぃちゃんと、まやっち」

もう紹介する立場になっている。

しかも、もうあだ名で呼んでいる。


 「ちはるでぇーす」

左側の女が、にこっと笑いながら目元で横にしたピースを見せた。

パーマをあてているらしい茶髪の隙間から覗く、金色のやたらと大きなリングピアスが揺れている。


 「まやでぇーす」

ポニーテールに束ねた金髪の女も同じポーズをして名乗る。


 「あっ、こいつがもう一人の男の、汰駆郎」

渡仲が僕を指してそう言った。


 「あっ、どうも……」

僕が会釈すると、「よろしくお願いしまーす」と、二人の女は返した。


 「じゃあ、行きましょうか」

 「いえーい!」

二人の女は挙げた両方の拳を振る動作をしてはしゃぐ。


 淡いピンクのTシャツと、白いホットパンツ姿の、ちはると名乗った女。

白いTシャツの上に羽織って裾を結んだチェック柄のワイシャツと、デニム生地のミニスカート姿の、まやと名乗った女。

下着と然程変わらない様な肌の露出度と、そのテンションから、彼女達が渡仲と同様の部類だと分かり、余計憂鬱になった。


 店に入る三人に、仕方なくついていく。

既に空気が出来上がっている。

既に輪が出来上がっている。

今から合コンを始める意味が分からない。

三人だけでいいじゃないか。

完全に僕はいらないじゃないか。

憂鬱だ。憂鬱過ぎる。


 僕は、店の出入り口という、地獄の門を通った。

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