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ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
51/85

強引

土曜日の正午。

スライスチーズを入れたインスタントのカレーラーメンを、久し振りに啜る。

やはり、背徳は旨い。

それを実感しながらYouTubeを開いた画面に、LINEが届いた。


 〝今日の7時、神風集合! 合コンすっぞー!〟という、渡仲からのメッセージ。

合コン……?

合コンに誘われたのか……?

いや、これはきっと、先日の釣井と同様のパターンに違いない。

〝送信先は間違ってないでしょうか〟と返信する。

すぐ既読になり、〝間違ってるわけねぇしー。会社の前の居酒屋だぞー。〟と返って来た。

彼は何故、僕を誘ったのだろう。

人数合わせだろうか。

何れにせよ、〝陽キャ〟と検索したら顔の画像が出てきそうな彼の反対側にいる様な僕は、完全に人選ミスだ。


 合コンという未知の世界をイメージしてみると、苦手意識を再認識した。

よし、断ろう。

〝用事があるので行けません。〟と打つ。


 いや、待てよ。

これだと今後も誘われ続けてしまうかもしれない。

彼の性格上、尚更その可能性が高いだろう。

文字を消し、〝すみません、そういうのは興味がないので、お断りします〟と、本当の理由を打ち、送信した。


 それからすぐ既読になると、彼から電話が掛かってきた。

説得されるのか……。

面倒な事になりそうだ……。

渋々、電話に出る。


 「いや、マジで行った方がいいってっ!」

渡仲は〝もしもし〟も言わず唐突に言った。


 「写真見たけど、鬼かわだったぞっ!」

先日マッチングした女子大生を〝とんだハズレ〟という品も配慮もない表現で嘆き続けていたが、まだ懲りていないらしい。


 「だから、大丈夫っ!」

そういう問題ではない。


 「あと、未成年じゃないからっ!」

それは大事だが、そういう問題でもない。


 「あと、全員、看護師だから大丈夫っ!」

何が大丈夫なんだ。

絶対にそれは関係ないだろ。


 「じゃあ、今日七時に神風なっ!」

 「えっ、いや、ちょっ———」

電話が切れた。

マジか……。


 それなら用事があるか、体調不良という事にすれば良かった……。

僕は、合コンに行くのか……。

合コンに行かなくてはならないのか……。

落胆の息が出る。

とりあえず気を取り直して目の前のカレーラーメンを啜るが、ほぼ無味に感じた。


 〝神風〟の前に着いた。

着いてしまった。

その文字に向かって、思わず息を吐く。

何故、僕はここに来てしまったのだろう。

何故、断れなかったのだろう。

何故、合コンに参加しなくてはならないのだろう。

憂鬱だ。

アスファルトに向かって息を吐く。


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