強引
土曜日の正午。
スライスチーズを入れたインスタントのカレーラーメンを、久し振りに啜る。
やはり、背徳は旨い。
それを実感しながらYouTubeを開いた画面に、LINEが届いた。
〝今日の7時、神風集合! 合コンすっぞー!〟という、渡仲からのメッセージ。
合コン……?
合コンに誘われたのか……?
いや、これはきっと、先日の釣井と同様のパターンに違いない。
〝送信先は間違ってないでしょうか〟と返信する。
すぐ既読になり、〝間違ってるわけねぇしー。会社の前の居酒屋だぞー。〟と返って来た。
彼は何故、僕を誘ったのだろう。
人数合わせだろうか。
何れにせよ、〝陽キャ〟と検索したら顔の画像が出てきそうな彼の反対側にいる様な僕は、完全に人選ミスだ。
合コンという未知の世界をイメージしてみると、苦手意識を再認識した。
よし、断ろう。
〝用事があるので行けません。〟と打つ。
いや、待てよ。
これだと今後も誘われ続けてしまうかもしれない。
彼の性格上、尚更その可能性が高いだろう。
文字を消し、〝すみません、そういうのは興味がないので、お断りします〟と、本当の理由を打ち、送信した。
それからすぐ既読になると、彼から電話が掛かってきた。
説得されるのか……。
面倒な事になりそうだ……。
渋々、電話に出る。
「いや、マジで行った方がいいってっ!」
渡仲は〝もしもし〟も言わず唐突に言った。
「写真見たけど、鬼かわだったぞっ!」
先日マッチングした女子大生を〝とんだハズレ〟という品も配慮もない表現で嘆き続けていたが、まだ懲りていないらしい。
「だから、大丈夫っ!」
そういう問題ではない。
「あと、未成年じゃないからっ!」
それは大事だが、そういう問題でもない。
「あと、全員、看護師だから大丈夫っ!」
何が大丈夫なんだ。
絶対にそれは関係ないだろ。
「じゃあ、今日七時に神風なっ!」
「えっ、いや、ちょっ———」
電話が切れた。
マジか……。
それなら用事があるか、体調不良という事にすれば良かった……。
僕は、合コンに行くのか……。
合コンに行かなくてはならないのか……。
落胆の息が出る。
とりあえず気を取り直して目の前のカレーラーメンを啜るが、ほぼ無味に感じた。
〝神風〟の前に着いた。
着いてしまった。
その文字に向かって、思わず息を吐く。
何故、僕はここに来てしまったのだろう。
何故、断れなかったのだろう。
何故、合コンに参加しなくてはならないのだろう。
憂鬱だ。
アスファルトに向かって息を吐く。




