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ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
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質問

時刻は間もなく、十八時半になる。

恐る恐る、手前のレジを覗く。

男の店員。

そして、奥のレジを覗く。


 つちださんの姿があった。

良かった……。

転職してから終業時間と場所の関係上、この店に来るのはこの時間になってしまうが、彼女が十八時までのシフトではない事が分かり、安堵した。

これまで通り、会える。

これからも、つちださんに会える。


 「あっ、こんにちはぁ」

いつもの笑顔を向けてくれたつちださんに、アメリカンドッグを注文した。


 「いつも、お仕事の帰りに来て下さってるんですか?」

つちださんはアメリカンドッグを入れた袋の口をテープで塞ぎながら、僕に訊いた。

つちださんが、僕に質問をした。

つちださんが、僕に興味を持っている。


 「はい、仕事帰りです」

 「そうなんですねぇ。何だか、お会いするのお久し振りですね」

 「ちょっと、仕事の関係で」

 「あっ、そうだったんですねぇ」


 久し振りですね。つちださんに、久し振りですねと、言われた。

彼女の言葉を反芻しながら金を支払う。

職業を訊かれたら何て答えよう。

サンタクロースの会社に勤務している事を口外してはならないらしい上、そんなトリッキーな職業である事は言いたくない。

だが、彼女に嘘をつきたくない。

一般的な会社に勤務している場合、この流れで名刺や名札を見せて彼女に名前を知ってもらえるチャンスだが、それが出来ないもどかしさを覚える。


 サンタクロースの会社に勤務していると言っても信じられる訳がない。

間違いなく冗談だと思うだろう。

つちださんは笑うだろうか。

面白い人と思ってもらえるだろうか。

いや、笑ったとしてもそれは苦笑だろうし、友人でもない人間にサンタクロースをやっているなどと言われたら、面白くなくてもとりあえず笑うしかないだろう。

冗談と捉えられたとしてもリスクが高過ぎる。


 やはり、嘘をつくのが最も得策なのか。

関係のない企業よりも前の会社に今も勤務している設定の方が、更に何か質問されたとしてもボロが出にくい上、彼女に嘘をつく罪悪感が軽減されるだろう。

会社をやめた直後、名刺が呪いの札に見えた故、全て処分したが、持っておけば良かっただろうか。

そう思ったが、結局、職業は訊かれなかった。


 「ありがとうございました」

同じ言葉を返しながらアメリカンドッグを受け取り、店を出た。

つちださんと沢山話せた。

つちださんが沢山話し掛けてくれた。

思わず口角が上がったまま、封を開けたアメリカンドッグをかじりながら道路を歩く。

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