表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
36/85

猛者

十三時になった。

立ち上げたパソコンで、子供のデータを見ていく。

昆虫が好きな少年。

おしゃれが好きな少女。

格闘ゲームが好きな少年。

KーPOPアイドルが好きな少女。

嗜好だけが記された、ぱっとしないプロフィールばかりが続く。


 一時間。二時間。

退屈な画面が続くだけの退屈な時間が流れていく。

プロフィールを次々と見ていき、思わずその流れのまま矢印をクリックした時、前のページに記された一行が脳内に残った気がした。

ページを戻すと、確かにこの九歳の少年は空手の国際大会で優勝したらしかった。


 「おっ、来たねぇ」

釣井が隣で画面を覗く。


 「時々ね、いるのよ、こういう猛者がっ!」

釣井がそう言うと、「えっ、何何ぃーっ!」と、渡仲が興奮した様子で立ち上がり、近付いて来た。


 「ええっ! すげぇ! 世界一じゃんっ! お前、ついてんなっ!」

まるで僕の偉業かの様に強く肩を数回叩かれる。


 「この子には、星三つあげちゃってっ!」

そう言った釣井も、画面をまじまじと眺めると、僕の肩に手を添えた。


 それからは、星を付けられるデータに遭遇しないまま、終業時間になった。

渡仲がまたそそくさと帰った後、自転車にまたがる参田に別れを告げ、釣井と二人で歩く。


 「ね、今日こそ吞みに行こっ! アタシが奢るからさっ! 昨日のお礼とお詫びも兼ねてっ!」

そう言われ、吞みに行く事になった。


 「あら、スーちゃん、久し振りー!」

釣井の案内で〝吞み処ゲンちゃん〟という名前らしい店に入ると、七十代と思しき男が厨房から威勢のいい声を出した。

壁のあちこちに飾られた野球のユニフォーム。

客を見下ろす様に野球中継を映すテレビ。

それに熱狂するサラリーマン達。

随分と男臭い店が好みらしい。


 「もしかして、寿々寧ちゃん、彼氏かい?」

〝ゲンちゃん〟と思しきその男が、火と煙に覆われた網戸の上の焼き鳥をひっくり返しながら訊くと、釣井は「んーん、同僚」と答える。


 「えっ、嘘っ! やっと新入社員が来たの?」

 「そうっ! 遂に後輩が出来たのっ!」

 「へぇー! そっか、そっかぁ! ずっと三人だけだったもんねぇ」

この男はうちの会社の事を知っているらしい。


 「って事は、彼もあれ、出来るのかい?」

 「うん、出来るよ。今ね、修行中なの」

 「そっかぁ、選ばれし細胞を持ってんだねぇっ! あの、何だっけ、名前。何細胞だっけ」

 「〝テレポー細胞〟でしょ」

 「ああ、そうだった! 〝テレポー細胞〟ね」

 「自分が付けたんじゃん」

 「まあ、何はともあれ、良かったっ! 素晴らしいっ!」

男が求めてきた握手に、思わず応じる」


 「あの機械ね、この人が作ったんだよ」

釣井の言葉に驚いた。

男は絵に描いた様なドヤ顔で頷く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ