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ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
32/85

鰻重

 「うっひょー! 久し振りのうなぎっ!」

手を合わせた参田の号令で鰻重の蓋を開けた釣井は感激している。


 「来間さん、一回目の修行、お疲れ様でした」

黒烏龍茶のペットボトルを、こくっと口に傾けて言った参田に、〝お疲れ様です〟と返す。


 「どうですか、師匠。一番弟子は」

釣井は山椒が入った袋を開けながら渡仲に訊いた。


 「なかなか伸びしろあんじゃない? まぁ、いくら伸びしろあっても俺の指導がないと意味ないけど、ちゃんと俺の指導について来てたよ。俺の指導のお陰でめきめきと上達してるよ。早くも頭角を現したって感じ? まぁ、俺の指導のお陰だな」

大して指導してないだろ。

釣井は「はいはい」とあしらいながら、鰻の上にかけた山椒を割り箸で引き伸ばす。


 「あはっ、それは良かった」

参田は割り箸を割る。

少し体が重い。テレポーテーションは疲労を伴う作業らしい。


 「うんめぇっ!」

渡仲は鰻重を掻き込む。


 「さぁさぁ、来間さんもどうぞ、召し上がって下さい。鰻は滋養強壮にいいですから」

参田に促され、蓋を開ける。


 「うーんっ! 美味しぇー!」

釣井は目を丸くさせながら鰻重を頬張る。


 「あっ、そうだ、さっき汰駆郎さ、コーンの真上にテレポーテーションしたわけっ! そしたらさ、そのまんま倒れて前のコーンに頭ぶつけそうになったわけっ! がっはっはっ!」

人が危うく怪我をしそうになった事を笑い話のトーンで話しやがって。

大体、そんなに笑える話じゃないだろ。


 「えっ、大丈夫なの、汰駆郎? 怪我はない?」

それが普通のリアクションだよなと思いながら、「大丈夫です」と返す。


 「良かったぁ」

参田と釣井は呟く。


 「コーンの間隔、空けてやんないと」

そう言った釣井に渡仲は「うん、それからはちゃんとコーンの位置変えた。一回、柵の上にもテレポーテーションしちゃったから柵からも離したし」と返す。

自分の意見みたいに言いやがって。


 「くれぐれも、安全第一でお願いしますね」

参田の言葉に渡仲は「ほーい」と返すと、引き続きうなぎを頬張る。


 「あっ、そうだ、フラフープあったじゃん」

渡仲がそう言うと、「ああっ!」と、参田と釣井は目を丸くさせる。


 「あったあったぁ! あんたがコーンの上に落ちてばっかりだからフラフープにしたんだったぁ。懐かしいっ!」

自分も同じミスしてたのかよ。そう思った時、「てか、あんた、汰駆郎君の事笑えないじゃん」と、釣井が代弁してくれると、渡仲は笑った。


 「どこだっけ」

 「あそこの物置じゃないか」

 「ああ、ちょっと見てくる」

事務室を出て数分後、十個程のフラフープを体に通した状態で戻ってきた釣井は、「あったよっ!」と、笑みを浮かべて言うと、それ等を回すが、一瞬で全て床に落ちた。

渡仲はその様を指して大笑いした。


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