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「LGBT」というレッテルを貼られて。  作者: 千石杏香
同性婚を誰が望んでいるのか?
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6.一生で五百人とセックスするゲイ。

はっきり言って、ゲイには貞操観念がない。


七〇年代には、こんな調査が行なわれたことがある――心理学者のアラン゠ポール゠ベルと社会学者のマーティン゠S゠ワインバーグが、ゲイの性交経験人数についてサンフランシスコでアンケートを取ったのだ。すると、75%が百以上、25%が千以上と答えた。


ノーウェスタン大学教授であり、心理学者・行動遺伝学者であるジョン゠マイケル゠ベイリーは、ゲイの平均性交人数は五百程度であろうと推定した。


男性当事者にとって驚くことではないはずだ。いや、たとえ異性愛男性であっても、何となく推測がついたのではないか。


女性の中には、「男性は定期的に夢精する」と思っている人もいるらしい。しかし、夢精の経験がない男性も多い(現に私もない)。精液というものは、生理のように一定期間を置いて自然排出されるものではない。存在するのは、自分の力で出したいという強い欲求だ。


そのような人たちが集まると――どうなるか。


はっきり言って、男性同士で身体の関係を持つことは驚くほど簡単だ。ゲイ向け出会い掲示板に書き込むと、一時間もしないうちに何件も返信が来る。出会うことも全く難しくない。


私は使ったことはないが、ゲイ向け出会い系アプリの中には、夜伽(よとぎ)の相手を探している者が地図上に表示されるものまであるという。


他にも「ハッテン場」の存在がある――特定の場所には、セックスの相手を求めて夜な夜なゲイが集まっているのだ。「ウホッいい男」「やらないか」のノリはフィクションとも言い切れない。


ハッテン行為が公衆に迷惑をかけることもある。例えば、特定の公衆浴場がハッテン場として利用され、トラブルにつながることも珍しくない。


ゲイ向け雑誌の元編集長・富田格氏によるノンフィクション「ハッテン銭湯と呼ばれて~ゲイのハッテン被害に悩む銭湯店主の本音」には、そんな公衆浴場の経営者たちへのインタビューが行われている。そこには、一般客がいる中でハッテンするゲイや、浴槽を精液で汚すゲイ、一般客との間でトラブルになって警察まで呼んだ出来事などが述べられていた。


「ハッテン銭湯と呼ばれて~ゲイのハッテン被害に悩む銭湯店主の本音」

https://note.com/itaru1964/n/n17f1d15bb415


こんなわけだから、「モラルのないLGBTのお客様お断り」「ホモ行為禁止」などと貼り紙をしている銭湯もある。これに頭を悩ますのがレズビアンたちだ――レズビアンにはハッテン文化などなく、「LGBT」で一緒にされる言われもないのだから。


しかし不可解なことがある――この件に言及すると、「偏見だ」と怒る活動家がいるのだ。じゃあ、特定の場所にゲイが集まってセックスしているあれは何? と言うと、「男同士では利用を断られるラブホテルがあるからだ」「異性愛者でも青姦する者もいる」とズレた反論をされる。


挙句、「ゲイに貞操観念がないという偏見を今でも信じてる奴がいるなんて」とも言われた。え、そんな偏見があっただなんて、初めて知ったんだけど――と思ったが。というか、偏見じゃなくて事実だし。日本中のゲイたちが何をやっているのか()()()()()()()()()()


「そういう人ばかりではない」という主張も苦しい。


カミングアウトして以来、安定的な関係を続けているゲイカップルとツイッター上で()()()知り合った。しかし、そんな彼らもまた、自分が過去に行っていたハッテンについて語ることは躊躇がなかったのである。


同性婚を得るために欧米のゲイたちが()ず行ったことは乱交文化の是正だ。つまり、ゲイであっても一対一の関係を持続させるべきだと説いたのである。ただし、冒頭の研究を見る限り、そのような意識がどれほど定着したかは怪しい。ハッテンをやめろとゲイに言うことは、マスターベーションをやめろと男子中学生に言うようなものである。


どうあれ、そのような運動が起きている気這(けは)いさえ日本にはない。


しかし、あくまでもこれはゲイの話である。


レズビアンにハッテン文化はない。しかし、同性愛者の片割れである彼女たちがいながら、なぜパートナーシップの利用率はその分だけでも多くならないのだろう?

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