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「LGBT」というレッテルを貼られて。  作者: 千石杏香
同性婚を誰が望んでいるのか?
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4.渋谷区が作ったパートナーシップの正体。

二〇一五年、「結婚と同じ効果を持つ」というパートナーシップを渋谷区が作る。その三か月後、隣接する世田谷区も同じものを作った。以降、日本の様々な自治体でパートナーシップが作られてゆく。


しかし、地方自治体が「結婚」など作れるのだろうか?


先に述べた通り、日本国が定めた税金を地方が控除できるわけがない。家族関係やそれに伴う権利は日本国政府が管理している。アメリカのような連邦国家ならいざ知らず、地方自治体は結婚など作れない。出来ることと言えば、国の作った結婚に多少の権利を上書きするくらいだ。


では、渋谷区の作ったパートナーシップは何なのか。


実を言えば、パートナーシップ()()()()には基本的に何の効果もない。あるのは、パートナーを伴って区営の住宅に入居する権利くらいである。


それどころか、パートナーシップを得るためには八万円の手数料がかかる。なぜなら、公正証書を同時に作るからだ――パートナーシップなどなくとも、今まで誰もが利用できた方法である。


つまり、基本的に何の効力もない紙切れに、何とか多くの効力を持たせるべく公正証書を作るのだ。


しかも、渋谷区以外の自治体のパートナーシップには公正証書すらない。ゆえに無料だが、自治体の権限が及ぶ多少の事例を除けば何もできない。


事実、法的効果を生まないことを公にしている自治体も多い。


京都市のホームページにはこう書いてある。


「パートナーシップの宣誓をしたお二人の間に法律上の効果(婚姻や親族関係の形成、相続、税金の控除等)を生じさせるものではありませんが、京都市として、この制度の導入により、市民や事業者の皆様の間に、性の多様性や性的少数者の方々に関する理解と共感の取組が広まることにより、お二人が、生活の中で抱えておられる困りごとや生きづらさが解消され、社会参加の促進につながるよう取り組むものです。」

https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000272204.html


大阪市のホームページはこうだ。


「パートナーシップ宣誓証明制度は、婚姻と同等の法律上の効果があることを証明するものではありませんが、お二人が互いを人生のパートナーとして日常生活において相互に協力しあい、社会においていきいきと輝き活躍されることを期待して、パートナーシップ関係であることを宣誓されたことを、大阪市として公に証明するものです。」

https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000439064.html


一方、多少の権限があることを公にしている自治体もある。例えば長岡京市は、パートナーシップ宣誓をすることにより次の権限が得られるとホームページに書いている。


・市営住宅等への入居申込

・家賃補助制度の申込

・個人情報開示請求

・犯罪被害者遺族見舞金の受取り

・災害見舞金の受取り

https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000011204.html


しかし、このような権限を京都市も大阪市もなぜ与えなかったのだろう――長岡京市と言えば、京都市とも大阪市とも目と鼻の先なのだが。


ゆえに、知人の京都市会議員に質問状を送った。


やがて返事が来る。


「長岡京市と比べ、京都市の取り組みが遅れているとのご指摘ですが、『法律』による限界を『条例』で突破することはできないため、そのギリギリの線で各自治体がそれぞれの『解釈』で取り組むことからその『違い』が生まれるのだと考えます。」


「ちなみに、京都市の場合には、当事者の方々とも意見交換を行いながら『宣誓制度』が設計されており、現在この制度によってできることは『京都市立病院における病状説明や手術の同意』『里親の認定』『市営住宅や特定優良賃貸住宅・高齢者向け優良賃貸住宅の入居申し込み』『京都市犯罪被害者等生活資金の給付申請』となっています(京都市には家賃補助制度自体がないために制度創設を求めていますが、もし実現するとなればパートナーシップ宣誓制度を利用されている世帯も対象となるように求めたいと思います)。また、2021年度からは『市職員の同性パートナーを対象とした新たな休暇制度』が創設されました。」


ということは、長岡京市と似たようなことができたということである。しかし、それは法律上の効果とは違うので、「法的効果はありません」と書かれていたにすぎない。


それゆえに、「地方パートナーシップ」のことを「紙切れ」「結婚ごっこ」と揶揄する当事者も多い(事実、「紙切れ」である)。繰り言になるが、同性婚の代わりを果たすのは「国制パートナーシップ」だ。


今や、「国制パートナーシップ」の導入を国会で議論すべき時に来ているのではないか。


しかし不可解なのは、そのような活動をLGBT活動家たちが全くしないところだ。「同性婚を!」と口では叫びつつ、「地方パートナーシップ」をチマチマと作らせるばかりである。

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