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亡国の姫の傭兵譚  作者: 如月 燐夜
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〈成り上がり者〉


三日後、疲れの癒えたカリッサ小隊は本隊と合流すべくダーツ平原へと馬を走らせていた。


部隊は三十一名、全員が女性であり、男尊女卑の傾向が強い帝国としては珍しく、道行くものは珍しげに眺めているが、それなりの裁量権を持っている。



第二王女マチルダの政策の広告塔(プロパガンダ)としての意味合いが強く、相手にされないこともあるが、帝国白金十字章というここ十年は誰も得ることのできなかった勲章の力は留まることを知らない。


今もまた平原に簡易的に作られた関所にてその効力を発揮していた。


「白金十字章?!で、では貴方があの…!」


「えぇ、カリッサ・バナード騎士爵です。既に報告は行っている筈ですが…」


「た、直ちに確認して参ります…!少々お待ちを!」


「ゆっくりで構いませんよ?ですが、あまり遅いと貴方の首が飛んでしまうでしょうけど。」


「ひぃ…」


「「「あはははは!」」」


カリッサのジョークに部隊員達が笑い、担当の兵士は涙目だ。


それだけ白金十字章という勲章は力を持っている。


少し血生臭いジョークではあるが、そこは隊員全員が戦場を渡り歩いた経験もあり勿論命のやり取りを経験している。


この手のジョークが受けるのをカリッサは把握しており、手探りながらも小隊を纏めようと努力していた。


小隊員達もそんなカリッサの努力している姿を見て仕事に真面目に取り組み自然と隊の士気は上がっている。


旧帝国時刻で五分と掛からず上司を連れてきた兵士に案内され天幕を張る位置に到着する。


本隊とは少し離れた小川の近くで、女性のみの部隊である事を考慮した上での配置だろう。


その辺の気遣いを第二王女マチルダが厳命したことにより、道中多少なりと兵士の視線を感じて居たが、襲ってくる無法者は居ないだろう。


少しは安心して夜を過ごせれば良いのだが、とカリッサは嘆息した。


天幕の張りを小隊に任せカリッサは副官バーバラと副隊長のヨルザを連れ指揮官の天幕を訪れる。



「騎士カリッサ小隊、只今到着しました事を報告に上がりました。」


「あぁ、君が話しに聞く〈成り上がり者〉か…いや、失礼。君はこの二つ名をあまり好きそうではないようだな…僕はボッシュ・スチュワートソンだ、よろしく頼む。」


〈成り上がり者〉。戦場で功績を立てたカリッサに対してその功績を妬んだ貴族や傭兵に付けられた二つ名である。


最初は冗談で呼んでいた者達も次々に出世していくカリッサを妬み妨害を画策するも、第二王女マチルダやハートソン傭兵団という大物がカリッサの後ろ楯になり守ったお陰で特に実害もなくといった状態である。


指揮官のボッシュは四十過ぎのぱっとしない中年という印象を受けたカリッサだが、高位貴族であり一戦場の指揮官という立場だ、武将ではなく知将なのだろう。


ほがらかな笑みに戦場に似つかわしくない地味目の衣装に身を包んでいた。


敵を騙すならばまずは味方を…とは少し違うが彼が指揮官とは思わないだろう。


「(隊長、スチュワートソン閣下は現役の伯爵家当主です。)」


後ろから囁かれたバーバラの言葉にカリッサは目線で合図を送る。


ボッシュから差し出された手を見つめ笑顔を作ると握手に応えた。


「スチュワートソン伯爵、お会い出来て光栄です。帝国の繁栄の為、槍働きにて応えましょう。」


「あはは、固いねェ。大丈夫、僕はマチルダ殿下派閥だよ。君の事を殿下から頼まれてるんだ!これから何度も顔を会わせるだろうから僕の事はボッシュで良いよ。」


「しかし…」


「あはは、当の本人が良いって言ってるんだから気にすることはないよ。さて、任務の話と行こうか。」


「はい」


「バルナート王国の部隊は北西に陣取っている。我々は南東だな。被我の距離は凡そ二リーグ。その中央には丘がありそれをいち早く得れば優位に立ち回れる。君には先見隊としてこの丘の奪取と防衛を頼みたい。いやね、他の貴族連中もいるんだが、別派閥のものばかり。戦争に出て箔を付けたい嫡男や戦争のせの字も知らない突撃しか出来ない脳足りんばかりでね…ほとほと困っていたんだ。その時本国から伝令が来てね、君が此方に来ることを知らされたんだ。いや、本当に助かったよ!」


「は、はぁ…」


早口で捲し立てるボッシュにたじたじといったカリッサだが、苦労を重ねていただろう事を用意に想像出来る安堵した表情のボッシュを見て我に返る。


いくら頭が悪くてもそれが正式な命令なのだ、と理解すると姿勢を正し胸に拳を当て帝国式の敬礼を取った。


「畏まりました、その任務拝命致します!」


敬礼をするとカリッサはその部屋を退出し任務の準備へと取り掛かった。


取り敢えず隔日更新は此処までです。

続きが出来次第投稿していきます。

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