僕の覚悟
セラフィン・シメオン・ジョフロワ第二王子。それが僕。文武両道な天才である兄上に鍛えられ、第二王子として日々頑張っている。そんな僕は、とある少女に恋している。
ミシュリーヌ・マチルド・プロスペール公爵令嬢。…兄上の婚約者だ。道ならぬ恋だ。そもそもミシュが俺の想いに気付いているとも、俺に好意を寄せているとも思わない。
けれども、それでも諦めがつかなくて、側に居れば居るほど惹かれていく。
コロコロ変わる表情が好きだ。嬉しい時のニヤケ面を見るとからかいたくなる。怒っている時のふくれっ面を見るとあの柔らかい頬をモチモチしたくなる。悲しんでいる時の落ち込んだ顔を見ると肩を抱いてやりたくなる。楽しい時の満面の笑みを見ると頭を撫でたくなる。
僕は第二王子で。ミシュは兄上の婚約者で。絶対に報われることのない想いだけれど、想いの強さはきっとミシュを溺愛する兄上にも負けないという自負がある。けれどだからこそ、ミシュの幸せを考えるなら僕は黙って身を引くべきなのだ。わかっていて、それが出来ない僕はきっと愚かなのだろう。
寵妃の子である第二王子という立場は正直すごく微妙だ。王位継承権はあるが、王妃の子で第一王子であり、本人も天才と謳われる兄上には遠く及ばない。だからこそ、多少の我儘は通っていた。
本来なら幼い内に決めておくべきだった婚約者を、自分で選びたいと我儘を言った。それは父上と母上、王妃様にも許されて、今の今までフリーのまま、ずっとミシュのことだけを想ってきた。
けれど、そろそろ時間切れだ。父上と母上、王妃様からもいい加減婚約者を選ぶように注意を受けた。そして、そんな時に事件は起こった。ミシュが兄上の気持ちに全く気づいていないことが発覚したのだ。
けれど兄上の真剣な告白で、二人はついに両思いになった。
それを見せつけられた俺は、最後にこの恋にけじめをつけたいと思う。ミシュにとっては迷惑かもしれないが…ミシュに、告白をしようと思う。その前に兄上に一言言っておく。
「兄上」
「セラフィン。どうしたの?突然部屋に訪ねてくるなんて。とりあえず上がって」
優しく僕を部屋に招こうとする兄上に、遠慮する。
「いや、直ぐに帰りますので。一言伝えておきたいことがあるだけです」
「なにかな?」
「ミシュに告白します。止めないでください」
「…!そうか…とうとう覚悟を決めたんだね」
「はい」
兄上は僕の気持ちにも、とっくに気付いていたらしい。
「なら、一世一代の大勝負なんだ。派手に玉砕しておいで」
「…はい」
「…じゃあ、僕はこれで」
「ありがとう、兄上」
「可愛い弟の我儘くらい、なんてことないよ」
ミシュは手紙で呼び出してある。
さあ、派手に玉砕してこよう。




