暗殺者を私の護衛にしましたわ!何故って、私が悪役令嬢として破滅すると決まってこの男に殺されるんですもの!味方につけときますわ!
ということで、ネルとネイを屋敷に連れて帰ってお風呂に入れて、清潔なお洋服を与えて食事を提供しましたわ!
そしてお父様におねだりして正式に二人を私の専属護衛見習いとして雇っていただきましたわ!
これで私の身の安全は保証されましたわ。ネルは将来的に凄腕の暗殺者になるはずだった男。私が恩を売っておけば、少しは安心できるというもの。うふふ、これで悪役令嬢としての演技が終わった後も盤石ですわ!
「お嬢様、身寄りのない俺たち兄妹を助けてくださり本当にありがとうございました」
「いいんですのよ。その代わり私の剣となり盾となりなさい」
「もちろんです!」
ネイの可愛いお返事に思わず頬が緩む。可愛いネイがこういうのだから、当然ネルはわざわざ反抗したりしないだろう。
「うふふ、ネイ。信頼していますわ」
「はーい!」
「ネルもね」
「はい、お嬢様」
こうして私は身の安全を確保し、安心してぐっすりと眠れましたわ。
俺はネル。スラム街で心を殺して生きてきた。スリや強盗など罪を犯しながら生きてきた俺。しかしある時、俺より幼い子供がスラム街に流れてきた。名前はネイ。境遇も名前も似ている俺たちは、自然と寄り添い合うようになった。
ネイを養うため、もっとお金が必要になり危ない賭けをした。しかしあえなく失敗。スラム街の最奥で俺は数日間怪我をしたまま放置された。
ネイは無事だろうか、このまま俺は死ぬのかと思って涙を必死に堪えていた時だった。奇跡は起きた。
「…ぐぅっ」
「ネルお兄ちゃん!」
ネイが走りよってきた。
「ネイ…?なんでこんな奥まで…」
「私が連れてきたんですの」
知らない貴族の女の子。俺は警戒する。
「ネイ、人を簡単に信じるなって言っただろ」
「でも、パンとお茶くれたんだもん。お兄ちゃんが帰ってこないから、お腹が空いて死にそうだったんだよ」
「…悪かった」
一応、礼を言えないほど腐ってはいない。
「ネイを助けてくれて感謝する」
「ええ。とりあえず、怪我を手当てしますわね」
「は?要らねーよ」
「いいえ、必要ですわ。今日から貴方達には私の屋敷で働いてもらいますもの」
「え?」
屋敷で働く?誰が?俺たちが?
「朝昼晩の食事付き、昼寝付き、業務内容は私の専属護衛。この条件でどうかしら?お給金ももちろんお支払いしますわ。金額は帰ってから私のお父様と交渉なさって?」
「…いいのかよ?俺なんかを信用する気か?こちとらスラム街育ちの底辺だぞ?」
「だって、ネイがこんなにも懐く方ですもの。信用に足りますわ」
俺は頭をかいて、それからお嬢様に頭を下げた。
「妹ともども、よろしくお願いします。お嬢様」
「ええ。では、スラム街の視察も十分にできましたし帰りましょうか」
「お前たち、この兄妹をお前たちの馬に乗せてやってくれ」
「はい、殿下」
こうして俺たちはお嬢様に助けられた。お嬢様に屋敷に連れて帰ってもらうと、早速お風呂に入れてもらった。ノミやダニ、垢で凄いことになったけどおかげでさっぱりした。
「お風呂気持ちよかったね、ネルお兄ちゃん!」
「最高だったな、ネイ」
そして使用人のお嬢さん、リゼットというらしい同じくお嬢様に拾われた過去を持つその人に髪を切って整えてもらった。
「私も同じくお嬢様に拾われた立場として、貴方方を歓迎いたします!お嬢様のために、共に励みましょう!」
「ああ、よろしくな」
「よろしくお願いします!」
清潔な洋服も与えてもらった。
「ボロじゃないお洋服、肌触りが気持ちいいね!」
「ああ、お嬢様に感謝しないとな」
「うん!」
その後食事を提供された。久々の食事はひどく美味しかった。
「ネルお兄ちゃん、ご飯ってこんなに美味しいんだね」
「ああ。これからは毎日これが食べられるぞ」
「やったー!」
そしてお嬢様はご当主様におねだりしてくださり、正式に俺たち兄妹二人はお嬢様の専属護衛見習いとして雇っていただけることになった。
「お嬢様、身寄りのない俺たち兄妹を助けてくださり本当にありがとうございました」
「いいんですのよ。その代わり私の剣となり盾となりなさい」
「もちろんです!」
ネイの返事に、頬を緩めるお嬢様。本当に心が清らかな人なんだな。
「うふふ、ネイ。信頼していますわ」
「はーい!」
「ネルもね」
「はい、お嬢様」
そして俺たちは使用人用の相部屋を提供してもらい、二人で安心して眠りについた。久しぶりに熟睡できた。お嬢様には感謝してもしたりない。




