#27
「……奥様……」
「……カイン……リルはきっと何処かで誰かと一緒に生きているのかしらね」
イリアは頬に涙の跡をつけつつ、寂しそうな表情しながら顔を上げる。
彼女の前に立ち、首を横に振るカイン。
「それは私には分かりかねませんが、何処かで元気に過ごしていてほしい気持ちでいっぱいでございます」
「そうよね。いつかリルと笑顔で再会できる日を楽しみにしましょう」
「はい。奥様、旦那様や子供たちがお待ちですよ」
「カイン、情報をありがとう」
「いいえ。また何か分かりましたらお伝えいたします」
「その時はお願いね」
彼女はフィンたちのところへ向かい、彼は執務に戻った。
◇◆◇
「ルイーゼ! 黙っていないで話しなさい!」
フィンはずっと黙ったままでいるルイーゼに怒りを募らせている。
彼女は「……リルは……」を何度も繰り返し呟き、彼はその都度「続けなさい」と促されていた。
「……リルは……オークションに出展し、売りました……」
「オークションに出しただと!?」
「……はい……」
「「…………」」
ようやく答えてくれたルイーゼの答えに絶句するフィンとゼウス。
彼女は家族に気づかれてしまったのだから仕方がないと腹を括ったのだ。
「俺やイリアが見ていない間にそんなことしていたのか……恥ずかしくなかったのか?」
「ええ」
「そんなにリルが可愛くなかったのか?」
「はい」
彼はルイーゼに問い、淡々と答えていき、彼女の表情はみるみる歪んでいった。
どうしてこの家の者たちはわたくしではなく、リルのことばかり心配しているのか?
そんなに彼女のことが大切なのか?
わたくしのことはどうでもよかったのか? と――
「ルイーゼ、何がおかしい?」
「お父様はリルが生まれたあと、わたくしのことは大切に思ってきましたか?」
「実の娘だから大切にしてきたつもりだが」
「ずっと?」
「ああ」
「わたくしはお父様やお母様はずっとリルのことばかり心配していらしたので、どうでもいいと思われたかと感じていましたわ!」
「ルイーゼ、落ち着け!」
「ゼウスお兄様だってそうじゃない! わたくしではなく、ずっとリルのことばかり!」
これまで静かに二人の会話をきいていたゼウスが落ち着かせようとするが、逆効果だった。
フィンが「いい加減にしろ!」と子供たちの言い争いにならぬうちに制止させた瞬間――
「我がオルガント家の名に恥じる行為だ! 分かっているのか!?」
フィンの手はルイーゼの頬を赤くするほどの力で叩いてきたのだ。
「ルイーゼ!」
「あなた、落ち着いてください!」
彼女がよろめき、ゼウスが支え、その瞬間にイリアが駆けつける。
「ルイーゼ。カインの話が終わったあと、あなたたちの話は聞かせていただいたわ。まずはリルが何処かで元気に過ごしていることを願いましょう?」
「イリア……」
「あなた、ルイーゼを追放するのはやめましょう。リルがこの家に笑顔で戻ってくるその日まで」
「そうだな……オリエンタルの治安のためにな」
「ええ」
その後、クロウと名乗る男性からリルを保護したとオルガント家に連絡が入ったとカインから告げられた。
2026/02/11 本投稿




