#26
その頃、ルイーゼは身長に合った公衆電話に寄り、オルガント家に電話をかける。
彼女は迎えを依頼し、機嫌よく帰宅した。
出来損ないとしていた妹のリルが闇オークションで売られたことによって気分がよくなっている。
「これで、お父様とお母様の愛情はすべてわたくしのものですわ!」
ルイーゼは部屋のドアノブに手をかけた瞬間だった。
「ルイーゼ、帰ってきたのか」
「ええ」
「おい、リルは!? リルはどこへいった!?」
「お兄様!?」
ゼウスはすでに帰宅しており、素っ気ない態度で部屋から出てくる。
彼が出てきたことに驚いたが、外は暗くなっているため、帰宅していても当然の時刻だった。
「出かける時は一緒だったのに、帰ってきたのは貴様だけ……やっぱりリルを変なことに巻き込ませてきやがったか……」
「お兄様?」
「父様、母様に知られたらどうするんだ? どう責任を取るんだ?」
「…………」
「迎えにきてくれた執事にも不審がられたらどうするんだ?」
「…………」
「黙っていたら分からないだろう!?」
「…………」
その時、ずっと黙り込んだままの彼女はようやく気がついた。
父であるフィンや母であるイリアはもちろん、迎えにきたルイーゼの専属執事にリルがいないことに気づかれてしまったのではないかと――
「ゼウス、ルイーゼ」
「ちょっといいかしら?」
「お父様」
「母様」
フィンとイリアが深刻そうな表情をして二人を呼び止める。
その場にはリルの姿は見当たらない。
「ルイーゼ。リルはどうした?」
「……」
「ずっと一緒じゃなかったの?」
「…………」
「父様、母様。僕も訊いたのですが、ルイーゼはずっと黙ったままなのです」
「はぁ……ゼウスでも駄目だったか」
両親の問いかけにも答えず、黙ったままの彼女。
ゼウスは二人に状況を報告した時、「奥様!」と声がかかり、全員その声に反応する。
「奥様。お話中に失礼いたします」
「あら、カイン。どうしましたの?」
「少々よろしいでしょうか?」
「ええ。少し席を外しますので、あなたは子供たちを……」
「わかった」
イリアは専属執事であるカインと共に席を外した。
◇◆◇
「奥様、すみません。ルイーゼお嬢様の専属執事からご報告があったのですが……」
「はい」
彼が申し訳なさそうに口を開く。
「……ルイーゼお嬢様がお車にご乗車された時にはリルお嬢様は一緒ではなかったとのことでして……」
「……なっ……!」
彼女は両手で顔を覆い膝から崩れ落ちた。
「……その時もルイーゼお嬢様は何も答えなかったと仰っていました……」
イリアはカインの言葉を最後まで聞き、そっと涙を溢した。
2026/02/03 本投稿




